腐女子 異界で悶絶する【改訂版】

カナ暦

　ついに三年が経ってしまった。

　といっても、太陽暦的な正確な三年かは怪しい。
　なにせこの国の暦はあやふやなのだ。最初の一年はどうやら二八五日しかなくて、翌年はなぜか四〇〇日そして、今年は三二五日となっている。

　なぜだろうっとカナは思っていた。
　
　あの森の夜空で見上げた二つの月は、このグレンビィア王国ではだいたい一年（この定義についてはあとで説明する）に一回しかみられないものらしかった。
　それに合わせて市井では祭りが開催され、しかも、徐々に知ったのだか、このお祭りはあの舞姫を祀るものらしい。

　ただ、この時期は魔力が一番強くなる時期でもあり、蒼黒の森からの魔物の侵入者などが多くなることから、王宮の周りでは一斉に警備も強化されることらしかった。


　周期について（１年の定義）

　この国での一年は、この二つの月と太陽が重なる日を区切りにしている。

　天文学の好きな忍が豆知識的に教えてくれていたけど、三つの周期が違うものが一つの線状に重なるのはかなりレアな現象で、詳しくは忘れちゃったけど、そのイベントはものすごいアトランダムになるっていっていた。
　つまり、一年の長さがバラバラなのだ。そのニつの月と太陽が重なる日から、次の重なる日までを一年としていたらしい。

　例えば、大袈裟であるが十五歳と十七歳の間の二年間と十八歳と十九歳の１年間が、二つの月と太陽のイレギュラーの重なりを元にしているために同じだったりするのだ。だから、人が年齢をいうことはあまり意味がないように思えた。

　しかも四季もあるのだか、それも適当で雪が降らなければ、冬は始まらなかった。
　そして、二つの月と太陽が重なる時が、偶然にも、私が転移してきた日だったらしい。

　て、適当過ぎるんじゃないっとカナは思った。

　そこで、カナは、太陽を中心にした太陽暦が必要だと感じる。これはちょうど転移する前に、学校でなぜ一日は三六五日になったかと授業でやったからだ。

 　歴史の先生、どうもありがとう。寝てなくてよかったよ。

　もともと古代エジプトで発見されたという一年三六五日。

　川の氾濫に悩む古代エジプト人が、それを予測するためにおおいぬ座のシリウスが夜明け前に南東の空に現れるときが、その川の氾濫と同じ時期であると確認したことからはじまった。

　その星が次に現れる日をかぞえたら、約３６５日だったらしい。（伝説です）
　だから、まず夜空で長い周期で現れる目星となる星探しから始まった。

　それにはもちろんフェリスの魔法が役にたった。夜空全体を魔法でスキャンし、その一日ごとのデータを魔法石と呼ばれる透明の球体（いわいる、なんちゃって魔女がもってそうな水晶の玉のようなもの）に送り、データを保存。

　それに同時に毎年起こっている王宮の記録の気象災害の年表をたどりながら、こちらにも洪水のような大規模の災害があるか探ってみた。

　そうすると、何件か必ず周期的に起こっている大きな洪水があった。それを元にその洪水が起こる時と星を観測し、だいたいの目星のなる星を発見することに成功した。それを日にちで計算してみたら、ここの惑星の一年は三六〇日であった。

　よかった。あんまり地球とちがったらどうしようかと思ったよ。

　計算苦手だし。

　その一年三六〇日の間で、一番日照時間が長いのを夏至、一番日照時間が短いのを冬至、同等である春分の日、秋分の日はいつなのかを日照時間から割り出せないかとケヴィンに相談する。

　もちろん、難しい魔法を使う時はフェリス殿下に相談したが、主にカナの専属家庭教師になりつつあるケヴィンがカナの相談役となった。ケヴィン自身のかなりの魔法師であるため、多少の問題 に対してはうまく処理してくれた。

　そうして三年目にようやく太陽暦が完成した。
　一ヶ月が三十日である。一年が三六〇日。ぴったりな数ではないか。閏年とかはまだ入れるかどうか様子を見るということになった。

　フェリスとケヴィンはこの暦を絶賛し、カナの名前を入れるべきと、カナ暦といわれることになった。

　なんだか……恥ずかしい。

　カナという音はこちらの言葉では古代語で光という意味らしく、どうやら私の名前というよりは光の暦として受け入れられたらしい。

　王室が年間の行事をこのカナ暦を使うことを公式に発表し、徐々に民間に取り入れられていくことになった。

　カレンダーなんて物もあるんだよと教えてあげ、まだ大量生産までには追いつかないが、月ごとのめくりカレンダーを作ることを提案。曜日の提案もしてみる。

　こちらには鎮魂日（精霊やすべての生き物の魂を静める日） というものがもともとあるので、その名前を日曜日の代わりとした。