ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

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「た、確かにオ、夫はきのこのスープをよく食べたとは言っていましたけど……」

 母親の手料理の話はオクトール様からあらかた聞いていたけど、唯一、王城でも出されたことがない料理がきのこのスープらしい。なんのきのこかは分からない、と言っていたが……。

「あらぁ、それなら絶対ムスモス茸のスープよぉ」

 確かに、そう言われたらそうなのかもしれない。この辺りに長く住んでいるというロネさんが言うのなら正しいんだろう。
 求めていたレシピを聞けそうなのに、わたしはロネさんの言葉がいまいち信じられないでいた。

「ムスモス茸のスープって……あのムスモスですか?」

 ムスモス茸。それは苔に埋もれるようにして成長するきのこだ。苔が重要らしく、ムスモス茸の周りに生える苔を取り払ってしまうと、途端に育たなくなり、そのまま腐るという変わったきのこ。
 毒がない、どころか、成長しきったものを乾燥させて薬に使うらしいので、食べたところで問題はないのだろうけど……あれをどうやって食べるというのか……。
 貴族学院の授業で一度だけ扱ったことがあるけれど、すごく土臭かった記憶しかない。あれが美味しいスープになるのか……?
 どうにも食材、というよりは薬の材料、という印象の方が強い。

「丁度今、材料あるから、作っちゃいましょ。ベルちゃん手際いいから、時間まで間に合うわよ」

 教えて貰えるというのなら是非教わりたいものだ。オクトール様のために、というのもあるけれど、純粋に、あのきのこをどうやって調理するのかが気になる。

「これがスープ用のムスモス茸」

 そう言ってロネさんが持ってきたのは、既に加工されて瓶詰されているものを持ってきた。見た目的に、オイル漬けだと思う。成程。こうすると乾燥以外でも保存できるんだ……。

「一口食べてごらんなさい」

 ロネさんはきのこをスプーンに取って渡してくれる。一口食べてみると、思っていた味とは全然違い、土っぽくなかった。エリンギ……が、一番近いだろうか。でも、オイル付けにも関わらず、結構歯ごたえがある。

「思っていたより全然美味しいです」

 素直にそう言うと、「元の見た目を知ってるのね」とロネさんは笑った。食材として扱っている彼女でも、収穫前のムスモス茸は美味しくなさそうに見えるようだ。

「それにしても、貴女の夫は愛されて育ったのねえ」

 しみじみ、とでも言わんばかりに、ロネさんがそんなことを呟いた。
 わたしはオクトール様の母親に会ったことがない。確かもう、鬼籍に入っているとわたしは聞いている。

「オイル漬けも作り方教えてあげるけど、作るの大変なのよぉ、これが! 一杯作ってもらったってことは、それだけ可愛がってもらってたってことよ。ウチもだけど、大抵の家庭は出来あいで買ってきちゃうから」

 確かに、作り方は分からないけれど、ムスモス茸をこのサイズの瓶詰めにするために苔を剥がしていく作業を考えるだけで大変そうだ。苔に埋もれて育つからか、収穫サイズになっても結構小さいのだ。
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