93 / 111
93
しおりを挟む
婚約発表パーティーが終わると少しは落ち着くかな、などと思っていたのだが、全然そんなことはなかった。
本当ならば婚約発表のパーティーって、貴族学院に入学する前か、在学中、遅くとも卒業後にすぐするものだ。でも、わたしは、その卒業後すぐに行われた、アインアルド王子とハルシアの婚約発表パーティーと同時に婚約破棄され、その後にオクトール様との婚約が決まり、そこから準備してパーティーを行ったので、かなり異例の遅さである。
こうなると、間髪入れずに結婚式の準備をしなくては間にあわない。本来ならば、結婚式は貴族学院卒業から一年以内に行われるはずなのに、すでに半年以上婚約発表のパーティー準備に時間を費やしてしまったので、今から急ピッチで始めないと、一年以内に収まらないのだ。
最初、わたしとしてはこれだけ婚約発表パーティーで忙しかったのだから少し休みたい、という気持ちが強かったし、オクトール様も今回開発した魔法道具関連の仕事で忙しくなるだろうしで、絶対遅らせた方がいい、と思いながらも、王族の妃になる人間が慣例を破るのはいけない、と周りから言われてしまった。
それを言うなら、オクトール様は何年前に貴族学院を卒業したと思ってるんだ、と言うようなことを親に言い返してしまったが、男と女では違う、と怒られてしまった。
そりゃあ確かに、この貴族世界は男は働くもので、女は家を守り子を産むもの、という感じなので、平民と違って共働き、みたいな生活にならない以上、行き遅れたら大変なのは分かるけども。
でもそれって差別じゃない? とのらりくらりかわそうと思っていたのだが――。
「絶対、わたし以外の女との結婚なんて、 認めませんわよ!」
わたしはオクトール様との勉強会で、彼の元へ届いた令嬢の姿絵をゴミ箱に入れた。
このクソ忙しい中で唯一会えるのは、細々と続いている勉強会くらいなので、わたしは時間の合間を縫ってオクトール様の元へとやってきていた。
結婚したら王城に住むことになるのは確かなので、いつでも会えるようになるのだが、だからと言って今会うのを我慢する理由にはならない。そりゃあ、本当に時間が全くなければ諦めるけれども。
憤慨するわたしに苦笑いしながら、オクトール様は「ベルメ、そこに捨てないで」とゴミ箱からお見合いの釣書がセットになった姿絵を拾い上げる。
「魔法塗料が使われているゴミはこっち」
そう言って、オクトール様はゴミ箱とは別の箱に入れた。
……魔法塗料が使われているのは気が付かなかった。魔法塗料は魔法道具の一種で、普通の画材よりも発色がよく、より綺麗に絵を書くことができたり、普通の火ではなかなか燃えなかったりする。魔法の火でないと燃えないのだ。
本当ならば婚約発表のパーティーって、貴族学院に入学する前か、在学中、遅くとも卒業後にすぐするものだ。でも、わたしは、その卒業後すぐに行われた、アインアルド王子とハルシアの婚約発表パーティーと同時に婚約破棄され、その後にオクトール様との婚約が決まり、そこから準備してパーティーを行ったので、かなり異例の遅さである。
こうなると、間髪入れずに結婚式の準備をしなくては間にあわない。本来ならば、結婚式は貴族学院卒業から一年以内に行われるはずなのに、すでに半年以上婚約発表のパーティー準備に時間を費やしてしまったので、今から急ピッチで始めないと、一年以内に収まらないのだ。
最初、わたしとしてはこれだけ婚約発表パーティーで忙しかったのだから少し休みたい、という気持ちが強かったし、オクトール様も今回開発した魔法道具関連の仕事で忙しくなるだろうしで、絶対遅らせた方がいい、と思いながらも、王族の妃になる人間が慣例を破るのはいけない、と周りから言われてしまった。
それを言うなら、オクトール様は何年前に貴族学院を卒業したと思ってるんだ、と言うようなことを親に言い返してしまったが、男と女では違う、と怒られてしまった。
そりゃあ確かに、この貴族世界は男は働くもので、女は家を守り子を産むもの、という感じなので、平民と違って共働き、みたいな生活にならない以上、行き遅れたら大変なのは分かるけども。
でもそれって差別じゃない? とのらりくらりかわそうと思っていたのだが――。
「絶対、わたし以外の女との結婚なんて、 認めませんわよ!」
わたしはオクトール様との勉強会で、彼の元へ届いた令嬢の姿絵をゴミ箱に入れた。
このクソ忙しい中で唯一会えるのは、細々と続いている勉強会くらいなので、わたしは時間の合間を縫ってオクトール様の元へとやってきていた。
結婚したら王城に住むことになるのは確かなので、いつでも会えるようになるのだが、だからと言って今会うのを我慢する理由にはならない。そりゃあ、本当に時間が全くなければ諦めるけれども。
憤慨するわたしに苦笑いしながら、オクトール様は「ベルメ、そこに捨てないで」とゴミ箱からお見合いの釣書がセットになった姿絵を拾い上げる。
「魔法塗料が使われているゴミはこっち」
そう言って、オクトール様はゴミ箱とは別の箱に入れた。
……魔法塗料が使われているのは気が付かなかった。魔法塗料は魔法道具の一種で、普通の画材よりも発色がよく、より綺麗に絵を書くことができたり、普通の火ではなかなか燃えなかったりする。魔法の火でないと燃えないのだ。
0
お気に入りに追加
387
あなたにおすすめの小説

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

皆さん、覚悟してくださいね?
柚木ゆず
恋愛
わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。
さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。
……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。
※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。

ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる