ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

文字の大きさ
上 下
92 / 111

92

しおりを挟む
 わたしは、オクトール様に選ばれた。
 オクトール様は、わたしに選ばれた。
 そして、オクトール様が主体となって造り、わたしが協力をした魔法道具は――国王に選ばれた。

 どこからどう見ても、わたしたちが『選ばれなかった』と言われる筋合いは、もうない。
 そのことにアインアルド王子も気が付いたのだろう。ただ見下し、馬鹿にしていた二人が、もはや自分よりも優位な立場にいることに。
 『選ばれなかった者』という過去の発言を撤回すれば、その、アインアルド王子よりも王位継承権の争奪戦で優位な立場にオクトール様がいることを、アインアルド王子自ら認めたことの証明になってしまう。

 アインアルド王子のプライドを取るか。
 プルプムの命を取るか。

 全ては、今、アインアルド王子の発言にかかっている。

 そして――。

「――……っ、撤回……する。オクトールも、ベルメも、……え、選ばれなかった者では……っ、……なかった!」

 ――彼は、プルプムを取った。

 明らかに、無理やり言った、納得仕切っていない、認められないという表情ではあったものの、確かに彼は言った。
 わたしたちは、選ばれなかった者ではなかった、と。
 絶対に、アインアルド王子が言いたくなかったであろう言葉。認めたくなかった状況。
 悔しさを微塵も隠そうとせず、こちらを睨みながら、それでもなお、わたしたちが選ばれた者だと認める発言。

 すっっっきりした!

 ざまーみろ! オクトール様は凄いんだから!

 ここぞとばかりに勝ち誇った顔をしていると、それに気が付いたのかアインアルド王子にめちゃくちゃ睨まれた。でも全然怖くない。
 好きなだけ睨んでいればいい、と思っていると、オクトール様が「それともう一つ」と発言した。

「ま、まだあるのか!?」

 アインアルド王子が驚いたような声を上げる。これにはわたしもびっくりして、思わずオクトール様の方を見てしまった。
 でも、彼は冗談を言っているような様子は見られない。真剣そのものである。

「ベルメに、謝罪を」

 そう言って、オクトール様はわたしの肩を抱き、引き寄せた。

「……彼女は、『おさがり』なんかじゃない。魅力的な女性です。彼女を侮辱し、辱めたこと、全てに謝罪を、今、ここでしてください」

 驚きに、目を見開いてしまった。そんなこと、言ってくれるなんて、思っていなかったのだ。
 こればかりは納得いかないのか、「オクトール!」とアインアルド王子が声を荒げる。それでも、オクトール様が低い声で「兄上」と言うと、彼は黙ってしまった。

「……すまなかったな、ベルメ!」

 ほとんどやけくそな謝罪だった。
 でも、絶対に、オクトール様が条件に出さなければ、アインアルド王子は一生謝ることはなかっただろう。

 例え言わされただけの言葉であっても、十二分に価値がある。……いや、むしろ、下手に改心されて素直に謝る方が、こちらも許さないといけないような雰囲気になってしまうため、悔しそうな表情で言われた方のが、純粋に溜飲が下がるというものだ。

 わたしへの謝罪を聞いたオクトール様が、「それでは、量産体制が整い次第、兄上に話を持っていきます」と言うと、アインアルド王子はあからさまにホッとしたような表情を見せた。

 彼に、わたしたちが選ばれなかった者という認識を撤回させ、なおかつ、王位継承権争いでかなり優位に立ったのだ。

 ――わたしたちの、完全勝利!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

皆さん、覚悟してくださいね?

柚木ゆず
恋愛
 わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。  さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。  ……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。  ※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれた5人兄弟の真ん中に生まれたルクレツィア・オルランディ。彼女は、存在感と取り柄がないことが悩みの女の子だった。 そんなルクレツィアを必要ないと思っているのは母だけで、父と他の兄弟姉妹は全くそんなことを思っていないのを勘違いして、すれ違い続けることになるとは、誰も思いもしなかった。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...