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わたしが渡した花もじっくりと見つめていた国王は、これが本物であると分かったのだろう。ふ、と笑うと、オクトール様に向かって、「お前が本気になるとはな」と言った。
「オクトール、お前は我が子の中でも一番王位に興味がない子だと思っていたが――お前を変えたのは、ベルメ嬢か?」
「ええ」
国王の問いに、またもオクトール様はためらいなく答えた。
「実に良い縁を恵んでくださったと兄上には感謝しています」
「そのようだ。アインアルドには合わないようだったが、オクトールには合う令嬢だったか」
オクトール様に合う。国王のその言葉は、選ばれなかった者同士お似合いだ、というアインアルド王子の言葉とは、全然違うように聞こえた。言葉だけ見れば似たようなものなのに。
「――この魔法道具が世に出回るのが楽しみだ」
今日は婚約発表のパーティ。この場では、王位がどうのとは、流石に言われない。ただ、このやりとりで、王からの覚えがよくなり、オクトール様が一気に次代の王の座へと近付いたことを、ここにいる誰もが察しただろう。
「本日、皆様へと花を配るためにパローグリオとディゴニルの花を優先的に育てましたが、もしこの魔法道具を商品として売ることが可能になれば、まずは品薄になっている薬草から増やしていこうと思います。――例えば、グナダール草など」
オクトール様の言葉に、再び会場が騒がしくなる。グナダール草が原料の薬を欲している貴族は少なくない。国内有数の指定難病の薬の主たる材料ではあるものの、それ以外にもグナダール草を必要とする病はいくつかあるのだ。
指定難病も、その他の病も、どれもこれもそこまで致死率が高いものではない。しかし、グナダール草を使った薬でないと完治しない。
代用の薬でもって、病が進行しないようにするしかない状況では、喉から手が出るほど欲しいものだろう。
「お、オクトール!」
――やはり、一番に声を上げたのは、アインアルド王子だった。
さっきまで余裕そうにこちらを見ていた、あの意地の悪い笑みはすっかり消えうせていた。
焦りと悔しさをその顔に滲ませ、歯を食いしばってこちらを睨みつけている。
ずっと見下してきたわたしたちに頭を下げるのが、悔しくて悔しくてたまらないのだろう。
――それでも、彼は、グナダール草が必要な病弱ヒロインであるプルプムを取った。
「オクトール、グナダール草を、量産できるのなら、俺に譲ってくれないか」
そう言うアインアルド王子が、爪が肌に食い込んでしまうのでは、と思うほど、強く拳を握りしめていたのが見えた。
「オクトール、お前は我が子の中でも一番王位に興味がない子だと思っていたが――お前を変えたのは、ベルメ嬢か?」
「ええ」
国王の問いに、またもオクトール様はためらいなく答えた。
「実に良い縁を恵んでくださったと兄上には感謝しています」
「そのようだ。アインアルドには合わないようだったが、オクトールには合う令嬢だったか」
オクトール様に合う。国王のその言葉は、選ばれなかった者同士お似合いだ、というアインアルド王子の言葉とは、全然違うように聞こえた。言葉だけ見れば似たようなものなのに。
「――この魔法道具が世に出回るのが楽しみだ」
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「本日、皆様へと花を配るためにパローグリオとディゴニルの花を優先的に育てましたが、もしこの魔法道具を商品として売ることが可能になれば、まずは品薄になっている薬草から増やしていこうと思います。――例えば、グナダール草など」
オクトール様の言葉に、再び会場が騒がしくなる。グナダール草が原料の薬を欲している貴族は少なくない。国内有数の指定難病の薬の主たる材料ではあるものの、それ以外にもグナダール草を必要とする病はいくつかあるのだ。
指定難病も、その他の病も、どれもこれもそこまで致死率が高いものではない。しかし、グナダール草を使った薬でないと完治しない。
代用の薬でもって、病が進行しないようにするしかない状況では、喉から手が出るほど欲しいものだろう。
「お、オクトール!」
――やはり、一番に声を上げたのは、アインアルド王子だった。
さっきまで余裕そうにこちらを見ていた、あの意地の悪い笑みはすっかり消えうせていた。
焦りと悔しさをその顔に滲ませ、歯を食いしばってこちらを睨みつけている。
ずっと見下してきたわたしたちに頭を下げるのが、悔しくて悔しくてたまらないのだろう。
――それでも、彼は、グナダール草が必要な病弱ヒロインであるプルプムを取った。
「オクトール、グナダール草を、量産できるのなら、俺に譲ってくれないか」
そう言うアインアルド王子が、爪が肌に食い込んでしまうのでは、と思うほど、強く拳を握りしめていたのが見えた。
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