ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

文字の大きさ
上 下
88 / 111

88

しおりを挟む
 ナノハの表情は驚きに満ちていて、なにより、真っ青な顔をしていた。
 彼女には、わたしとオクトール様が飾りに使っている花のことが分かっているのだろう。シャハルク商会の孫だけあって、物を見る目は確からしい。
 わたしたちがこうして惜しげもなく、さも普通の飾りと同じように使っているのを見て、ただ、この婚約発表のパーティーにつけてきた、というわけではないことを、察しているのだろう。

「……ナノハ?」

 ナノハが固まって、顔色を悪くしているのにアインアルド王子が気が付いたようだ。キッとこちらを睨み「彼女に何をした」と低い声で問いただしてくる。この男はこの男なりに、ヒロインたちのことはしっかり大事にしているようだ。

「わたしたちは何もしていませんわ」

 微妙に嘘。実際、危害を加えるようなことは一つもしていないけれど、彼女の顔色が変わったのは間違いなくわたしたちの身についている花なので、何かした、といえば確かにしたのだが。

「――ベルメお嬢様、花をお持ち致しました」

「あら、ありがとう、グレーリア」

 着替えを済ませたのであろう、普段のメイド服とは違い、シンプルなドレスに身をまとったグレーリアが、花で一杯のかごを手に、わたしの近くへと寄ってくる。ちなみに、グレーリアの髪にも、一輪、この花が飾り付けられている。

 モルトベルグ王国の貴族の婚約発表のパーティーの場では、夫婦となる者たちの色と同じものを挨拶しながら配る。参加する者が少なければ宝石だったり、その領地の特産品だったりと贈るものに縛りはない。
 今回わたしたちが用意したのは、わたしたちの衣装の飾りでもある、わたしの髪と同じ色の赤い花と、オクトール様の髪色と同じ黒に近い紺の花。

 ただし、それはただの花ではなく、どちらも長い間国内で一度たりとも咲いたという報告がない、絶滅したはずの花である。
 わたしの花はかつての特産品。オクトール様の花は国旗にも描かれている花。

 ただ、どちらも国内で確認されなくなってから長いし、オクトール様の花は国旗に描かれているとはいえ、国旗にはかなり簡略化された記号のような花が描かれているので、その話を知った上で、実物を見たことがないと、国旗に描かれた花だとは分からないだろう。
 実際、わたしも、オクトール様がこの花を持ってきたときに教えて貰わなかったら絶対に気が付かなかったと思う。

 ――そして、ナノハを除いた、アインアルド王子たちも、わたしたちの配る花が何を意味しているのか、全く気が付いていないようだった。

「随分と可愛らしい花ですわね。お二人にお似合いですわ」

 一夫一妻であるわたしたちには花程度しか配れないのか、とでも言いたげにエルレナが薄く笑った。
 ……笑っていられるのも今のうちなんだから、存分に笑っていればいいわ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

皆さん、覚悟してくださいね?

柚木ゆず
恋愛
 わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。  さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。  ……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。  ※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

処理中です...