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ああ、認めて言ってしまった。わたしは恥ずかしさにしゃがみ込む。ドレスの裾が汚れるとか、もうどうでもいいや。これただの私服だから、近日中に着ないといけない用事があるわけでもないし。
ずっと、ゲームのシナリオと同じような行動ばかりするアインアルド王子に不安を覚えて、わたしも『ベルメ・ルビロス』と同じような扱いになるのだろうと気が付いて、必死にわたしと婚約破棄してくれるハーレムエンドに向かって、アインアルド王子やヒロインたちを誘導してきた。
ようやく、ハーレムエンドを迎えさせて、もう頑張らなくてよくて、そう思った矢先に現れた人。
この世界に転生して、初めて、『人間』だと思った人。
この世界が、『シックス・パレット』に非常に類似しただけの世界だとは分かっている。どれだけゲームと同じ設定で本編ストーリーと同じような時の流れを刻んだとしても、ゲームのようにセーブとロードができるわけじゃないし、決められた言葉以外も話すし、立ち絵がない人なんて存在しない。
皆が皆、生きている、等身大の人間だと分かっていても、どこか、『キャラクター』としか思えなかった。
でも、オクトール様は違う。
ゲームに出てこなかったから、というのもあるかもしれないけど――少し先のことすら、予想できないその当たり前さに、わたしは酷い安堵感を覚えていた。勿論、ゲームに出てこない人は、今までもたくさんいたけれど。
意識しない方が無理だ。
ただ素敵な人、というだけではなく、そもそもが、アインアルド王子とスタートラインが違うのだから。
ゲームのシナリオから解放された今になってようやく、わたしは『生まれ変わったのだ』と実感できたように思う。
「スカートが汚れてしまうよ」
「……分かってる」
オクトール様から差し伸べられた手を取って、わたしは立ち上がる。花束を片手で持って、スカートの裾をはたいていると、「それが素のベルメ?」と軽くオクトール様に笑われた。
……しまった。すっかりお嬢様を忘れていた。
わたしは扇の代わりに花束で口元を隠す。
「……がっかりしました?」
わたしがそう言うと、オクトール様は「そんなことない」とほほ笑む。
「初めて君の素の顔を見れたな」
楽しそうに笑うオクトール様。その笑顔に、きゅう、と心臓が締め付けられるような気持ちになる。
ああ、わたしに向かって笑うその表情が好きだ。
もし、彼と同じような――ゲームに出てこない、キャラクター視できない、同じような条件の人が出ても、彼を選びたくなってしまうだろうな、と、その笑顔を見て思ったのだった。
ずっと、ゲームのシナリオと同じような行動ばかりするアインアルド王子に不安を覚えて、わたしも『ベルメ・ルビロス』と同じような扱いになるのだろうと気が付いて、必死にわたしと婚約破棄してくれるハーレムエンドに向かって、アインアルド王子やヒロインたちを誘導してきた。
ようやく、ハーレムエンドを迎えさせて、もう頑張らなくてよくて、そう思った矢先に現れた人。
この世界に転生して、初めて、『人間』だと思った人。
この世界が、『シックス・パレット』に非常に類似しただけの世界だとは分かっている。どれだけゲームと同じ設定で本編ストーリーと同じような時の流れを刻んだとしても、ゲームのようにセーブとロードができるわけじゃないし、決められた言葉以外も話すし、立ち絵がない人なんて存在しない。
皆が皆、生きている、等身大の人間だと分かっていても、どこか、『キャラクター』としか思えなかった。
でも、オクトール様は違う。
ゲームに出てこなかったから、というのもあるかもしれないけど――少し先のことすら、予想できないその当たり前さに、わたしは酷い安堵感を覚えていた。勿論、ゲームに出てこない人は、今までもたくさんいたけれど。
意識しない方が無理だ。
ただ素敵な人、というだけではなく、そもそもが、アインアルド王子とスタートラインが違うのだから。
ゲームのシナリオから解放された今になってようやく、わたしは『生まれ変わったのだ』と実感できたように思う。
「スカートが汚れてしまうよ」
「……分かってる」
オクトール様から差し伸べられた手を取って、わたしは立ち上がる。花束を片手で持って、スカートの裾をはたいていると、「それが素のベルメ?」と軽くオクトール様に笑われた。
……しまった。すっかりお嬢様を忘れていた。
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「……がっかりしました?」
わたしがそう言うと、オクトール様は「そんなことない」とほほ笑む。
「初めて君の素の顔を見れたな」
楽しそうに笑うオクトール様。その笑顔に、きゅう、と心臓が締め付けられるような気持ちになる。
ああ、わたしに向かって笑うその表情が好きだ。
もし、彼と同じような――ゲームに出てこない、キャラクター視できない、同じような条件の人が出ても、彼を選びたくなってしまうだろうな、と、その笑顔を見て思ったのだった。
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