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わたしとしては逃げ道を確保したつもりだが、逆に圧力のようになってしまっただろうか。わたしは内心で焦りながらも、どう言葉を重ねればいいか頭を働かせる。
しかし、わたしの考えとは裏腹に、こちらを見たセザル氏の表情は、何故かきらきらと輝いていた。……どことなく、舞踏会でわたしをお姫様抱っこしたオクトール様の話をするシャローネの表情を思い出す。
セザル氏とシャローネは親族で、血の繋がりがあるため、顔が似ているところがあってもおかしくはないのだが、そういう話ではないような……。
予想外に目を輝かせているセザル氏を見て、わたしは考えていた言葉を見失ってしまった。
「ベルメ様とオクトール殿下が良い仲であるという噂は本当だったのですね」
……こんなところにまでそんな噂が……。でも、セザル氏はいろんな商会が集まる港町を治めている子爵家の当主。シルヴィアの家でのことが噂話となって、どこかの商会経由で耳に入っていてもおかしくはないし、そもそも爵位と立場からしてオルゴンド家主催のパーティーに出席していた可能性もある。あのときはセザル氏のことを知らなかったから、実際にいたのかは分からないけれど。
セザル氏の言う、『良い仲』が、恋愛的な意味合いであることは、いちいち聞かなくても彼の表情を見れば分かる。確かに仲はいいし、信頼しあっている関係ではあると思うけれど、恋愛的に、と言われると微妙なところ。……そういうのは、一方が想っていても成立しないものだ。
でも、丁度いいし勘違いさせたままでいよう。
「そ、そのような噂があったのですね」
そうなんです、と肯定するつもりが、なんだか気恥ずかしくて、思っていたのとは違う言葉が口から飛び出た。
愛する婚約者のために欲しいのです、とでも言えばセザル氏を陥落できそうなのに。……オクトール様に愛していると言うのを想像するだけで、顔が熱くなる。
「分かりました。全ては無理ですが、複数所持しているものをいくつかお渡ししましょう」
さっきまでのしぶりっぷりが嘘のように、セザル氏があっさりと承諾した。わたしは思わず「えっ」と声を漏らしてしまう。
「よ、よろしいのですか……?」
思わず聞き返すと、セザル氏は力強くうなずいた。
この数分で何があったんだ。何が彼を買えたんだ、と混乱していると、セザル氏が、目を輝かせたまま、口を開いた。
「実は私、珍しい物をコレクションするのと同じくらい、歌劇や小説が好きでして。……特に、恋愛ものが」
セザル氏の声は、随分とはずんでいた。
しかし、わたしの考えとは裏腹に、こちらを見たセザル氏の表情は、何故かきらきらと輝いていた。……どことなく、舞踏会でわたしをお姫様抱っこしたオクトール様の話をするシャローネの表情を思い出す。
セザル氏とシャローネは親族で、血の繋がりがあるため、顔が似ているところがあってもおかしくはないのだが、そういう話ではないような……。
予想外に目を輝かせているセザル氏を見て、わたしは考えていた言葉を見失ってしまった。
「ベルメ様とオクトール殿下が良い仲であるという噂は本当だったのですね」
……こんなところにまでそんな噂が……。でも、セザル氏はいろんな商会が集まる港町を治めている子爵家の当主。シルヴィアの家でのことが噂話となって、どこかの商会経由で耳に入っていてもおかしくはないし、そもそも爵位と立場からしてオルゴンド家主催のパーティーに出席していた可能性もある。あのときはセザル氏のことを知らなかったから、実際にいたのかは分からないけれど。
セザル氏の言う、『良い仲』が、恋愛的な意味合いであることは、いちいち聞かなくても彼の表情を見れば分かる。確かに仲はいいし、信頼しあっている関係ではあると思うけれど、恋愛的に、と言われると微妙なところ。……そういうのは、一方が想っていても成立しないものだ。
でも、丁度いいし勘違いさせたままでいよう。
「そ、そのような噂があったのですね」
そうなんです、と肯定するつもりが、なんだか気恥ずかしくて、思っていたのとは違う言葉が口から飛び出た。
愛する婚約者のために欲しいのです、とでも言えばセザル氏を陥落できそうなのに。……オクトール様に愛していると言うのを想像するだけで、顔が熱くなる。
「分かりました。全ては無理ですが、複数所持しているものをいくつかお渡ししましょう」
さっきまでのしぶりっぷりが嘘のように、セザル氏があっさりと承諾した。わたしは思わず「えっ」と声を漏らしてしまう。
「よ、よろしいのですか……?」
思わず聞き返すと、セザル氏は力強くうなずいた。
この数分で何があったんだ。何が彼を買えたんだ、と混乱していると、セザル氏が、目を輝かせたまま、口を開いた。
「実は私、珍しい物をコレクションするのと同じくらい、歌劇や小説が好きでして。……特に、恋愛ものが」
セザル氏の声は、随分とはずんでいた。
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