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流石のオクトール様でも、一発で新たな魔法道具を開発はできない。だから、二枚目の紙に書かれた植物の種たちは、すぐに必要じゃない。再現ができたと確信できたのちに欲しいものだ。
だから、今すぐ譲ってもらわなくても大丈夫ではあるのだが――最終的には絶対に譲ってほしい。
わたしが冗談で言っているわけじゃないことが伝わったのか、セザル氏は溜息を吐いた。
「こちらとしても、可能な限り対応はしたいと思っています。ですが、一枚目はともかく、二枚目は……」
予想通りの反応。
「せめて、どれか一つだけでも譲っていただけませんか」
オクトール様もわたしも、最初から全て売って貰えるとは思っていない。ひとつだけでも手に入れば、ほとんど絶滅したと言っても過言ではない貴重な植物が量産できるのだと証明することができる。
無理難題を吹っ掛けて、その後本題を提示して交渉をしやすくする。有名な方法ではあるけれど……あまり彼には響いていないようだ。それほどまでに大切なコレクションなのだろう。
実家の名前を出すのは最終手段にしたい。確かに侯爵家であれば子爵家から何かを取り上げることくらいできるが、わたしはそれに見合うだけの責任を取れる立場にいない。使えるものは使うつもりでいるが、できることなら使いたくない手段だ。
それに、最終目的のためには穏便に済ませたい。無理やり取り上げたもので成功したところで、後々問題になりそうだから。
わたしが一切引く様子を見せないと、セザル氏は「どうして必要なのですか」と問うてきた。
「貴女に貴重品のコレクションの趣味はないでしょう? 見たところ、一枚目の方は多少珍しくとも普通の素材の範囲のようですし」
「それは……」
わたしは少し言い淀む。王位を取るために伝説の魔女が使っていた旧魔女の魔法の再現を魔法道具でするために必要なんです、なんて全部話せるわけがない。今の段階で他所に情報が漏れたらいろんなところから足を引っ張られるに違いない。
邪魔をさせられるだけならまだマシだが、魔法道具をあれだけ開発してきたオクトール様が『王位を取るための魔法道具』を作ろうとしているのだ。そんなもの、絶対にできると皆が思うだろう。最悪、暗殺騒動になってもおかしくはない。
生まれた順番がイコールで王位を継ぐ可能性の高い順番でなくなった後も、暗殺騒動が減ったとはいえゼロになったわけではない。
でも、かといって、ただ、「欲しいのでください」と言って納得してくれる相手でないことも分かっている。
わたしは旧魔女の魔法のくだりを隠して、新しい魔法道具の開発のために必要なのだと説明した。
「オクトール様のために、用意してあげたいのです」
王族の名前まで出せば、いよいよ彼に逃げ場はなくなるので、あくまでもわたしが勝手にオクトール様のために動いている、という風を演じる。
何とか泣き落としが聞かないだろうか、と思っていると、セザル氏の、リストを持つ手が分かりやすく揺れた。
だから、今すぐ譲ってもらわなくても大丈夫ではあるのだが――最終的には絶対に譲ってほしい。
わたしが冗談で言っているわけじゃないことが伝わったのか、セザル氏は溜息を吐いた。
「こちらとしても、可能な限り対応はしたいと思っています。ですが、一枚目はともかく、二枚目は……」
予想通りの反応。
「せめて、どれか一つだけでも譲っていただけませんか」
オクトール様もわたしも、最初から全て売って貰えるとは思っていない。ひとつだけでも手に入れば、ほとんど絶滅したと言っても過言ではない貴重な植物が量産できるのだと証明することができる。
無理難題を吹っ掛けて、その後本題を提示して交渉をしやすくする。有名な方法ではあるけれど……あまり彼には響いていないようだ。それほどまでに大切なコレクションなのだろう。
実家の名前を出すのは最終手段にしたい。確かに侯爵家であれば子爵家から何かを取り上げることくらいできるが、わたしはそれに見合うだけの責任を取れる立場にいない。使えるものは使うつもりでいるが、できることなら使いたくない手段だ。
それに、最終目的のためには穏便に済ませたい。無理やり取り上げたもので成功したところで、後々問題になりそうだから。
わたしが一切引く様子を見せないと、セザル氏は「どうして必要なのですか」と問うてきた。
「貴女に貴重品のコレクションの趣味はないでしょう? 見たところ、一枚目の方は多少珍しくとも普通の素材の範囲のようですし」
「それは……」
わたしは少し言い淀む。王位を取るために伝説の魔女が使っていた旧魔女の魔法の再現を魔法道具でするために必要なんです、なんて全部話せるわけがない。今の段階で他所に情報が漏れたらいろんなところから足を引っ張られるに違いない。
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でも、かといって、ただ、「欲しいのでください」と言って納得してくれる相手でないことも分かっている。
わたしは旧魔女の魔法のくだりを隠して、新しい魔法道具の開発のために必要なのだと説明した。
「オクトール様のために、用意してあげたいのです」
王族の名前まで出せば、いよいよ彼に逃げ場はなくなるので、あくまでもわたしが勝手にオクトール様のために動いている、という風を演じる。
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