ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

文字の大きさ
上 下
76 / 111

76

しおりを挟む
 流石のオクトール様でも、一発で新たな魔法道具を開発はできない。だから、二枚目の紙に書かれた植物の種たちは、すぐに必要じゃない。再現ができたと確信できたのちに欲しいものだ。
 だから、今すぐ譲ってもらわなくても大丈夫ではあるのだが――最終的には絶対に譲ってほしい。

 わたしが冗談で言っているわけじゃないことが伝わったのか、セザル氏は溜息を吐いた。

「こちらとしても、可能な限り対応はしたいと思っています。ですが、一枚目はともかく、二枚目は……」

 予想通りの反応。

「せめて、どれか一つだけでも譲っていただけませんか」

 オクトール様もわたしも、最初から全て売って貰えるとは思っていない。ひとつだけでも手に入れば、ほとんど絶滅したと言っても過言ではない貴重な植物が量産できるのだと証明することができる。
 無理難題を吹っ掛けて、その後本題を提示して交渉をしやすくする。有名な方法ではあるけれど……あまり彼には響いていないようだ。それほどまでに大切なコレクションなのだろう。

 実家の名前を出すのは最終手段にしたい。確かに侯爵家であれば子爵家から何かを取り上げることくらいできるが、わたしはそれに見合うだけの責任を取れる立場にいない。使えるものは使うつもりでいるが、できることなら使いたくない手段だ。

 それに、最終目的のためには穏便に済ませたい。無理やり取り上げたもので成功したところで、後々問題になりそうだから。

 わたしが一切引く様子を見せないと、セザル氏は「どうして必要なのですか」と問うてきた。

「貴女に貴重品のコレクションの趣味はないでしょう? 見たところ、一枚目の方は多少珍しくとも普通の素材の範囲のようですし」

「それは……」

 わたしは少し言い淀む。王位を取るために伝説の魔女が使っていた旧魔女の魔法の再現を魔法道具でするために必要なんです、なんて全部話せるわけがない。今の段階で他所に情報が漏れたらいろんなところから足を引っ張られるに違いない。

 邪魔をさせられるだけならまだマシだが、魔法道具をあれだけ開発してきたオクトール様が『王位を取るための魔法道具』を作ろうとしているのだ。そんなもの、絶対にできると皆が思うだろう。最悪、暗殺騒動になってもおかしくはない。

 生まれた順番がイコールで王位を継ぐ可能性の高い順番でなくなった後も、暗殺騒動が減ったとはいえゼロになったわけではない。
 でも、かといって、ただ、「欲しいのでください」と言って納得してくれる相手でないことも分かっている。

 わたしは旧魔女の魔法のくだりを隠して、新しい魔法道具の開発のために必要なのだと説明した。

「オクトール様のために、用意してあげたいのです」

 王族の名前まで出せば、いよいよ彼に逃げ場はなくなるので、あくまでもわたしが勝手にオクトール様のために動いている、という風を演じる。
 何とか泣き落としが聞かないだろうか、と思っていると、セザル氏の、リストを持つ手が分かりやすく揺れた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

皆さん、覚悟してくださいね?

柚木ゆず
恋愛
 わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。  さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。  ……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。  ※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

処理中です...