ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

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 ホールに戻ると、わたしたちに気が付いた何人かが声をかけに来てくれる。シャローネの近くにいた貴族は、オクトール様の言った、ヒールが折れた、という言葉が聞こえたかもしれないが、大半の貴族からしたら、踊り終えたわたしがふらついて、オクトール様に運ばれた、という風に見えたようだ。

 言われてみれば、そう言う風に見られてもおかしくない、ということに気が付く。お姫様だっこされたことに慌てていて、そんなことまで気が回らなかった。
 わたしの体調不良を心配する声に、「お恥ずかしながら、ヒールが折れてしまって」と、オクトール様の嘘に全力で乗っかった。
 体調自体は全く問題ないことを告げると、安堵する人と、なんだか嫌な表情を浮かべる人とで別れた。

「アインアルド王子との婚約破棄で、心労がたたったのかと思いました。無理もないでしょうけど」

 とある夫人のその言い方に、わたしはカチンとくる。
 この国の貴族からしたら、いろんな妻を娶れるアインアルド王子が魅力的な男で、どんどんと『おさがり』になっていったわたしは魅力のない女、という風に見えるのは分かっているが、面と向かって言われるとイラッとする。影でひそひそ言われるのも、それはそれで腹が経つが。

 シルヴィアの招待客とは全く毛色が違い、純粋に貴族ばかりでは、やはりこういう態度の人間が一気に増える。しかも、シャローネの家自体が、伝統を重んじる家だから、自然と新興貴族のシルヴィアや、彼女の家と主な付き合いがあるような下位とはつるまない人間ばかり。

 シャローネは本当の意味で伝統を重んじるので、自分より上位の家の人間をそういう目で見たりはしないが、長い歴史のある上位貴族という立場に驕る人は、しばしば複数女を侍らせられない男や、わたしみたいな『おさがり』を見下した目で見ることがある。
 でも、そんなことをされたって、怒りとなって、わたしのやる気の糧になるだけだ。悲しいと思うことはあまりない。

「いいえ? アインアルド王子は良縁をくださいましたもの。感謝こそすれ、未練などありませんわ」

 わたしが言うと、ここまで言い切ると思っていなかったのか、相手が少しだけひるんだような表情を見せる。まあでも、わたしが悔しまぎれに言った一言だと、向こうは思うんだろうけど――まぎれもない、本心だ。

 最初こそ、まだわたしの他に婚約者が決まっていなくて、人付き合いが苦手そうなオクトール様は、わたしが望む一夫一妻に都合がよさそうだ、なんて思ったものだけど。
 今は、オクトール様だからこそいいと、本気で思っている。
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