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「それではお先に」と出ていくシャローネは実に楽しそうだった。わたしの反応が面白いのか、シャローネもシルヴィアもわたしをからかうことが多い。どちらにも、からかってばかり! と軽く怒ったことはあるけれど、やめないので諦めた。
一時期はからかいを無視しよう、と思うこともあったけれど、二人とも上手くからかってくるので、無視することができない。
「足はもう大丈夫なのか?」
わたしはオクトール様に言われて、立ち上がって見せる。うん、全然大丈夫そう。もうつりそうな感覚はないし、痛みはすっかり消えた。
「大丈夫ですわ。ご心配をおかけして、ごめんなさいね。……その、重くありませんでした?」
前世を含めても、今までお姫様だっこなんてされたことがない。というか、幼少期を除けば、抱っこやおんぶ自体されたことがない。
『ベルメ・ルビロス』としての体形は、太っておらず、スタイルはいいけれど、身長がそれなりに高いので、総合的にみればたとえ平均体重だとしても、それなりの重さはあると思う。
非常に失礼な感想ではあるが、オクトール様はかなりの細身で、筋力がなさそうな、いかにも運動より勉強ができる見た目をしている。わたしを持ち上げるなんて、まさか出来るとは思っていなかった。
そんなことを考えているのが分かったのか、オクトール様は眼鏡のブリッジを押し上げ、にっこりと笑った。
「何か失礼なことを考えていないか?」
わたしは思わず視線を逸らしてしまう。無言の肯定でしかない。でも、否定したら嘘になってしまうし、露骨な言い方になれば、彼を馬鹿にしているような言い方になってしまう。失礼なことを考えはしたけれど、馬鹿にする意図は一切ない。
「……まあ、言いたいことも分かるがな。僕は、ほとんど研究室や自室から出ないし、他の兄弟と比べて運動量が全くないからな」
自覚はあるらしい。
「しかし、僕だって男だぞ。令嬢ひとり抱えて歩くことくらいできる」
そういうもの……なんだろうか? わたしを抱っこしようとする人なんて、なかなかいなかったから分からない。比べる対象が、父親では比べようがないだろう。しかも子供の頃の話だし。
「……あと、本や、魔法道具は物によるが意外と重い」
付け加えられた言葉で納得した。
この世界の本やノートは全てハードカバーが主流だから、どれもこれも重い。ましてや、専門書なんかの類は、余計に重厚な装丁になっていることだろう。
それに、魔法道具もいわば前世の家電だからね。重いやつは本当に重い。それを扱っている、というなら、見た目よりは筋肉がついているのかも。
一時期はからかいを無視しよう、と思うこともあったけれど、二人とも上手くからかってくるので、無視することができない。
「足はもう大丈夫なのか?」
わたしはオクトール様に言われて、立ち上がって見せる。うん、全然大丈夫そう。もうつりそうな感覚はないし、痛みはすっかり消えた。
「大丈夫ですわ。ご心配をおかけして、ごめんなさいね。……その、重くありませんでした?」
前世を含めても、今までお姫様だっこなんてされたことがない。というか、幼少期を除けば、抱っこやおんぶ自体されたことがない。
『ベルメ・ルビロス』としての体形は、太っておらず、スタイルはいいけれど、身長がそれなりに高いので、総合的にみればたとえ平均体重だとしても、それなりの重さはあると思う。
非常に失礼な感想ではあるが、オクトール様はかなりの細身で、筋力がなさそうな、いかにも運動より勉強ができる見た目をしている。わたしを持ち上げるなんて、まさか出来るとは思っていなかった。
そんなことを考えているのが分かったのか、オクトール様は眼鏡のブリッジを押し上げ、にっこりと笑った。
「何か失礼なことを考えていないか?」
わたしは思わず視線を逸らしてしまう。無言の肯定でしかない。でも、否定したら嘘になってしまうし、露骨な言い方になれば、彼を馬鹿にしているような言い方になってしまう。失礼なことを考えはしたけれど、馬鹿にする意図は一切ない。
「……まあ、言いたいことも分かるがな。僕は、ほとんど研究室や自室から出ないし、他の兄弟と比べて運動量が全くないからな」
自覚はあるらしい。
「しかし、僕だって男だぞ。令嬢ひとり抱えて歩くことくらいできる」
そういうもの……なんだろうか? わたしを抱っこしようとする人なんて、なかなかいなかったから分からない。比べる対象が、父親では比べようがないだろう。しかも子供の頃の話だし。
「……あと、本や、魔法道具は物によるが意外と重い」
付け加えられた言葉で納得した。
この世界の本やノートは全てハードカバーが主流だから、どれもこれも重い。ましてや、専門書なんかの類は、余計に重厚な装丁になっていることだろう。
それに、魔法道具もいわば前世の家電だからね。重いやつは本当に重い。それを扱っている、というなら、見た目よりは筋肉がついているのかも。
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