ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

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 正直、わたしはやれると思う。二人で一杯練習してきたし、開幕のダンスはそこまで長い間踊るわけじゃない。下手に途中参加して、周りが遠慮なり好奇心なりで踊るのを辞め、取り残されるほうが長く踊らないといけない気がするのだ。

 開幕のダンスは曲がある程度決まっているのに対して、普通にダンスする曲の長さは演奏者のさじ加減で決まる。曲自体の長さがあるから、そこまで極端に変わるわけじゃないけど、盛り上がっている様子があれば繰り返しの部分を増やして曲を長くすることもあるし、その逆で、不興であれば短くサクッと終わらせて次の曲に移ることもある。

 何も、一曲まるまる踊らないといけない、というわけではないけれど、やっぱり曲の切れ目が入るのも出るのもやりやすいタイミングだし、誰もいなくなったから辞めよう、というのはなかなかに勇気がいる。だって、周りがそっと踊らなくなった、ということは、残った一組のダンスが見たい、ということに他ならないのだから。
 そうなると、開幕のダンスで注目を浴びておいた方のが楽だと思う。流石に開幕で踊っているのに、本編でもまた一組で躍らせる、なんていうことはしないだろう。

 でも、そういうのって、舞踏会に出て、なんとなくの空気感でタイミングを学んでいくものなんだよな。
 ダンスのレッスンをしていたのなら、舞踏会でダンスの始め方や終わり方まで教えられているとは思うが、抜けるタイミングばかりは実際の空気に合わせてでないとどうしようもない。

 きっとオクトール様は、本編で皆に混じって踊ればいい、くらいに考えていると思う。
 だからといって、シャローネの目の前で実情をひそひそと話すわけには……。

「皆様もきっとお二人の開幕のダンスを見たいと思っていますわよ、きっと」

 わたしが言葉に迷っていると、シャローネが追い打ちをかけてきた。彼女としては、伝統通り、わたしとオクトール様に踊ってほしいんだろう。

「――……分かった。引き受けよう」

 返事をしたのは、わたしではなくオクトール様だった。断れないことだと判断したのかもしれない。
 承諾の返事をしたにも関わらず、オクトール様の顔はこわばっているように見えた。

「まあ! ありがとうございますわ!」

 それとは対照的にパッと明るくなるシャローネの表情。
 うーん、大丈夫かな……。
 い、いや、大丈夫! 大丈夫だよ、きっと! 前回、シルヴィアの夜会に出たときはオクトール様、完璧だったし。二人で練習したときも、少なくとも足を踏むなんていう、初心者中の初心者みたいな失敗はしなかったし。
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