ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

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 それからというもの、オクトール様の眼鏡が直るまでは勉強会は延期になった。前回は一週間くらいかかったし、今回もそのくらいになるはず。
 眼鏡なしでも会話ができるようになりたい、とは言っていたけれど、結構なストレスであるのは事実だろう。
 あの日も、多少会話をしてみたものの、終始つらそうな顔をしていた。顔前面に、逃げたい、とでも書いてあるように見えた。

 でも、ノーディーニさんとは眼鏡なしでも会話できると思うんだよね。わたしが初めて顔を合わせようとしたとき、ノーディーニさんの声を聞いて部屋から出てきたオクトール様は眼鏡をかけていなかった。
 ということは、普段から眼鏡をかけずにノーディーニさんと会話しているということだ。

 なにか分かりやすい基準みたいなものがあればもっと対応しやすいと思うんだけど……。例えば、男性より女性の方が接したくないとか、魔法道具の研究者同士での会話なら問題ないとか。
 まあ、わたしとノーディーニさんの共通点なんて一つもないのだから、仮に彼にとってのラインが存在しても、わたしはその線より外側にいる気がする。

 勉強をしていると、つい、オクトール様のことを考えてしまう。丁度いい手ごたえの場所は勉強に集中できるのだが、あまりにも難しい箇所や理解が及ばない場所が出てくると、現実逃避に思考が飛ぶ。
 うーん……少し休憩するべきか。集中してテンポよく勉強できないのならまだしも、完全に思考がどこかにいって、テキストの内容が頭に入ってこないのでは、勉強の意味がない。

 お茶でも貰おうかな、と、わたしつきのメイドであるグレーリアを呼ぼうとして、わたしの私室の扉がノックされる。

「お嬢様、少々よろしいでしょうか」

 グレーリアの声だ。
 凄いタイミング。丁度お茶の時間だから、持ってきてくれたんだろうか――なんて思っていたんだけれど。
 招き入れたグレーリアは、お茶のセットではなく、何やら大きな箱を持っていた。

「オクトール第八王子より、贈り物でございます」

「オクトール様から……?」

 なんだろう。全然そんな話は聞いていない。
 不思議に思っていると、「お嬢様、こちらお手紙になります!」とカリスが、ぴょん、とくせっ毛を躍らすように、元気よくわたしに手紙をくれる。淡々と仕事をこなすグレーリアと違って、カリスは実に楽しそうだ。

 カリスからう受け取った手紙を見ると、綺麗な字で『先日の詫びだ オクトール』と書かれていた。次に会う約束と一緒に。
 詫び、と言ったって、このサイズ……何を送ってきたんだろう。

「グレーリア、カリス、箱を開けてくださる?」

 二人がかりで開けられた箱の中身は、暗めな赤が鮮烈で格好いい、一着のドレスだった。
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