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会話が一時的にでも違う方向にいったからか、軌道修正されて、勉強のための魔法道具解説に戻った。……たぶん、オクトール様本人は会話が軌道修正されたことに気が付いていないと思うけど。
それからしばらくして、日が暮れたので、解散、ということになった。
「このテキストのこの辺りを復習しておくといいんじゃないか」
そう言って、オクトール様がテキストにふせんを貼ってくれる。ちなみに、この付箋も魔法道具の一種で、魔力で粘着力が調整できて、何度でも繰り返し使えるふせんになっている。そのため、前世で使っていた文房具のふせんよりはやや厚みがあって固いが、サイズ感自体はそこまで大差ないので、本当に凄いと思う。なお、制作者は当然オクトール様。
わたしは疲れ切った様子をなるべく隠しながら、ありがたくそれを受け取った。正直もう勉強したくない気持ちが強いし、疲れ切っているので休みたい思いもあるのだが、それはそれとして、どこをどう学ぶべきか、という指標をくれるのがありがたいのも事実なのだ。
家に帰ってちゃんと机に向かって勉強する余裕があるかは微妙だが、まあ、目を通しておくだけでも最低限しておきたい。
最初は多少勉強しておいたほうがいいかな、という軽い気持ちだったけれど、ここまでしてもらえるなら全力で応えないといけないというもの。
疲れ切った脳内で、少しでも復習するにはどうしたら、と考えていると――。
「……オクトール様?」
テキストを受け取ったには受け取ったものの、オクトール様が手を離す気配がない。テキストの両端が、それぞれわたしとオクトール様が持っているという、不思議な状況になっている。
手を離してもらわないと帰れないんだが……。
「ええと……何かありまして?」
わたしがそう言うと、オクトール様は眼鏡のブリッジを押し上げた。ここ数日しか接していないけど、なんとなく分かる。動揺を隠そうとしたんだ。
やばい、何か言いたいことがあるんだ。
何を言いたいのかさっぱり分からないけど、何か言いたげなのは分かる。
「……なんでもない」
しかし、オクトール様はテキストから手を離す。なんだったんだろう。
「なんでも気軽におっしゃってくださいね? ……とりあえず、今日はもう遅いですし、帰りますわ。また数日後に」
別れの挨拶をして、わたしは帰路につく。
帰りの馬車に揺られ、ぺらぺらと、頭の中に入れるつもりはなくてもなんとなく指示された範囲のテキストを眺めているときに、ふと、気が付く。
そういえば――勉強会のついでに触れあいに慣れるようにしよう、とか言い出したの、わたしだったな、と。
オクトール様がわたしに言いたかったことはそれだったんだろう。わたしが言い出したのに、勉強に疲れ切ってすっかり忘れていた。
しかし悲しいかな、それに気が付いたときにはもう、我が家が見え始めていたのだった。
それからしばらくして、日が暮れたので、解散、ということになった。
「このテキストのこの辺りを復習しておくといいんじゃないか」
そう言って、オクトール様がテキストにふせんを貼ってくれる。ちなみに、この付箋も魔法道具の一種で、魔力で粘着力が調整できて、何度でも繰り返し使えるふせんになっている。そのため、前世で使っていた文房具のふせんよりはやや厚みがあって固いが、サイズ感自体はそこまで大差ないので、本当に凄いと思う。なお、制作者は当然オクトール様。
わたしは疲れ切った様子をなるべく隠しながら、ありがたくそれを受け取った。正直もう勉強したくない気持ちが強いし、疲れ切っているので休みたい思いもあるのだが、それはそれとして、どこをどう学ぶべきか、という指標をくれるのがありがたいのも事実なのだ。
家に帰ってちゃんと机に向かって勉強する余裕があるかは微妙だが、まあ、目を通しておくだけでも最低限しておきたい。
最初は多少勉強しておいたほうがいいかな、という軽い気持ちだったけれど、ここまでしてもらえるなら全力で応えないといけないというもの。
疲れ切った脳内で、少しでも復習するにはどうしたら、と考えていると――。
「……オクトール様?」
テキストを受け取ったには受け取ったものの、オクトール様が手を離す気配がない。テキストの両端が、それぞれわたしとオクトール様が持っているという、不思議な状況になっている。
手を離してもらわないと帰れないんだが……。
「ええと……何かありまして?」
わたしがそう言うと、オクトール様は眼鏡のブリッジを押し上げた。ここ数日しか接していないけど、なんとなく分かる。動揺を隠そうとしたんだ。
やばい、何か言いたいことがあるんだ。
何を言いたいのかさっぱり分からないけど、何か言いたげなのは分かる。
「……なんでもない」
しかし、オクトール様はテキストから手を離す。なんだったんだろう。
「なんでも気軽におっしゃってくださいね? ……とりあえず、今日はもう遅いですし、帰りますわ。また数日後に」
別れの挨拶をして、わたしは帰路につく。
帰りの馬車に揺られ、ぺらぺらと、頭の中に入れるつもりはなくてもなんとなく指示された範囲のテキストを眺めているときに、ふと、気が付く。
そういえば――勉強会のついでに触れあいに慣れるようにしよう、とか言い出したの、わたしだったな、と。
オクトール様がわたしに言いたかったことはそれだったんだろう。わたしが言い出したのに、勉強に疲れ切ってすっかり忘れていた。
しかし悲しいかな、それに気が付いたときにはもう、我が家が見え始めていたのだった。
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