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「――できったぁ……とと、あれ?」
ようやく最後までテキストの問題を解くことができて、思わず声を上げてしまい、慌てて口元を押さえていたのだが、気が付けばオクトール様の姿がどこにも見当たらなかった。
集中していて、部屋から出て行ったのに気が付かなかったのだろうか。
それにしても、わたしを置いて出ていくとは、なんと不用心な……。まあ、この部屋、家具ばかりで何か盗むようなものも見当たらないんだけど。最低限そのくらいは信用されているんだろうか。
そうは言っても、侯爵令嬢だから物を盗む必要もないんだけど……。
特に何も言われていないから、ここで待っていればいいんだろうか。
広い部屋のどこにもオクトール様がいない、と、辺りを見回していると、ふと、少しだけ開いている扉を見つける。廊下に繋がる扉ではないが、いつも閉まっている扉だ。
もしかして、あの扉の先に、オクトール様がいるんだろうか。でも、勝手に扉を開けるのはな……。人の部屋だし、許可もなく動き回るのは気が引ける。
かといって、いつ戻ってくるのかも分からないし。
「……開けなければセーフかしら」
わたしは少しばかり開いている扉の前に立つ。本当に隙間が少し開いているだけなので、中を見ることは出来ない。たぶん、扉を閉める勢いで完全に閉まると思ったら、意外と勢いが足りなくてちゃんと閉まらなかった、とか、そんな感じだと思う。
「オクトール様ー、いらっしゃいますかー?」
わたしは扉に向かって声をかける。声を張り上げたわけじゃないけど、扉が開いているのなら声は届くだろう。
この扉の先にいる、というわたしの予想は当たっていたようで、「少し待ってくれ!」というオクトール様の声が聞こえた。
言われた通り、扉の前で待っていると、ばたばたという足音が聞こえてきて、扉が開かれた。
思ったよりも勢いよく扉が開く。わたしはとっさに背後へ後ずさりした。あのまま立っていたら顔面に扉がぶつかる。
「ごめ――っ、すまない」
オクトール様はずれていた眼鏡を一瞬で直す。ものすごい早業だ。
「中、入って」
オクトール様ごしに見えるのは、なにやら散乱している部屋だ。本は山積みになっているし、紙も散らばっている。なにやらよく分からない道具も並んでいるし……物置か?
「これでも片付けた方なんだが……普段、研究室にはノーディーニ以外入れないんだ。少なくとも、一見して分かる足の踏み場は作ったから、君でも歩けるはずだ」
……研究室だった。よかった、物置ですか? とか聞かなくて。
ようやく最後までテキストの問題を解くことができて、思わず声を上げてしまい、慌てて口元を押さえていたのだが、気が付けばオクトール様の姿がどこにも見当たらなかった。
集中していて、部屋から出て行ったのに気が付かなかったのだろうか。
それにしても、わたしを置いて出ていくとは、なんと不用心な……。まあ、この部屋、家具ばかりで何か盗むようなものも見当たらないんだけど。最低限そのくらいは信用されているんだろうか。
そうは言っても、侯爵令嬢だから物を盗む必要もないんだけど……。
特に何も言われていないから、ここで待っていればいいんだろうか。
広い部屋のどこにもオクトール様がいない、と、辺りを見回していると、ふと、少しだけ開いている扉を見つける。廊下に繋がる扉ではないが、いつも閉まっている扉だ。
もしかして、あの扉の先に、オクトール様がいるんだろうか。でも、勝手に扉を開けるのはな……。人の部屋だし、許可もなく動き回るのは気が引ける。
かといって、いつ戻ってくるのかも分からないし。
「……開けなければセーフかしら」
わたしは少しばかり開いている扉の前に立つ。本当に隙間が少し開いているだけなので、中を見ることは出来ない。たぶん、扉を閉める勢いで完全に閉まると思ったら、意外と勢いが足りなくてちゃんと閉まらなかった、とか、そんな感じだと思う。
「オクトール様ー、いらっしゃいますかー?」
わたしは扉に向かって声をかける。声を張り上げたわけじゃないけど、扉が開いているのなら声は届くだろう。
この扉の先にいる、というわたしの予想は当たっていたようで、「少し待ってくれ!」というオクトール様の声が聞こえた。
言われた通り、扉の前で待っていると、ばたばたという足音が聞こえてきて、扉が開かれた。
思ったよりも勢いよく扉が開く。わたしはとっさに背後へ後ずさりした。あのまま立っていたら顔面に扉がぶつかる。
「ごめ――っ、すまない」
オクトール様はずれていた眼鏡を一瞬で直す。ものすごい早業だ。
「中、入って」
オクトール様ごしに見えるのは、なにやら散乱している部屋だ。本は山積みになっているし、紙も散らばっている。なにやらよく分からない道具も並んでいるし……物置か?
「これでも片付けた方なんだが……普段、研究室にはノーディーニ以外入れないんだ。少なくとも、一見して分かる足の踏み場は作ったから、君でも歩けるはずだ」
……研究室だった。よかった、物置ですか? とか聞かなくて。
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