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作戦の内容はこうだ。
わたしとオクトール様がそれはもうラブラブである、という噂が立つくらい、仲が良いことをアピールする。具体的には、アインアルド王子がわたしをどんどん数字の大きい夫人にしていったのは、他の令嬢たちより魅力的でないからではなく、心がオクトール様のところにあったから、と認識してもらえるくらいに。
婚約発表のパーティーの場では、アインアルド王子に婚約破棄されるのは計画の一環で、本当に結婚したかったオクトール王子と結ばれるための行動だった。無事に結ばれて良かった、と思ってもらえるのが最良のゴールである。
この作戦が成功すれば、わたしは魅力のない『おさがり』というあだ名を払拭できるし、オクトール様の社交の練習にもなる。
ついでに言えば、わたしがオクトール様に、オクトール様がわたしに、それぞれ夢中である、ということを周知できれば、第二、第三夫人を、という声が出てくる頻度が少なくなるだろうし、断る口実も出てくる。
一石二鳥どころか一石三鳥と言っても過言ではない作戦だ。
最高の作戦、と思ったのだが、オクトール様の表情は暗いままである。
「あら、駄目でしたか?」
予定通り上手くいく、とは最初から思っていないが、作戦自体はいいと思ったのだが。
わたしが頬に手を当てて、首を軽く傾げて、何が駄目なの? というアピールをする仕草を見せると、オクトール様は「作戦自体は悪くないし、理屈も分かる、が……」と、言葉を濁らせる。
言葉を探すように目線を泳がせ、オクトール様は眼鏡を撫でながら、「具体的には?」と質問してきた。
「具体的に、とは?」
「だから、その……ラ……ええと、どう、仲をよく見せるのか、と」
それは、と口を開いて、わたしはそのまま言い淀み、口を閉じた。
か、肝心なところを考えていなかった!
この世界は『シックス・パレット』というギャルゲーが下地になっている世界だから、貴族社会もそこまでガチガチではない。ゲームの世界に似ていてもゲーム本編ではないから、ゲームほどゆるゆるではないけど。
でも、少なくとも、会話をしている相手に対して、抱き着いて接触し、会話に割り込むことくらいは普通に許される世界なのだ。
だから、わたしが、「やっと婚約できて嬉しい♡」とか言いながら、オクトール様の腕に引っ付いて、熱視線を送っていても、本気で怒られることはない。人によっては、軽くたしなめられるかもしれないが。
――が、怒られるか否かと、わたしらしいか否かはまだ別問題である。
ベルメ・ルビロスはそんなキャラじゃないし、わたし自身もそういう性格をしていない。結果として、そんな行動をする人間だとは周囲に見られていない。
本当は仲が良かったんだ! と認知される前に、うわ何やってんだろう……とドン引きされるのが簡単に想像つく。
わたしとオクトール様がそれはもうラブラブである、という噂が立つくらい、仲が良いことをアピールする。具体的には、アインアルド王子がわたしをどんどん数字の大きい夫人にしていったのは、他の令嬢たちより魅力的でないからではなく、心がオクトール様のところにあったから、と認識してもらえるくらいに。
婚約発表のパーティーの場では、アインアルド王子に婚約破棄されるのは計画の一環で、本当に結婚したかったオクトール王子と結ばれるための行動だった。無事に結ばれて良かった、と思ってもらえるのが最良のゴールである。
この作戦が成功すれば、わたしは魅力のない『おさがり』というあだ名を払拭できるし、オクトール様の社交の練習にもなる。
ついでに言えば、わたしがオクトール様に、オクトール様がわたしに、それぞれ夢中である、ということを周知できれば、第二、第三夫人を、という声が出てくる頻度が少なくなるだろうし、断る口実も出てくる。
一石二鳥どころか一石三鳥と言っても過言ではない作戦だ。
最高の作戦、と思ったのだが、オクトール様の表情は暗いままである。
「あら、駄目でしたか?」
予定通り上手くいく、とは最初から思っていないが、作戦自体はいいと思ったのだが。
わたしが頬に手を当てて、首を軽く傾げて、何が駄目なの? というアピールをする仕草を見せると、オクトール様は「作戦自体は悪くないし、理屈も分かる、が……」と、言葉を濁らせる。
言葉を探すように目線を泳がせ、オクトール様は眼鏡を撫でながら、「具体的には?」と質問してきた。
「具体的に、とは?」
「だから、その……ラ……ええと、どう、仲をよく見せるのか、と」
それは、と口を開いて、わたしはそのまま言い淀み、口を閉じた。
か、肝心なところを考えていなかった!
この世界は『シックス・パレット』というギャルゲーが下地になっている世界だから、貴族社会もそこまでガチガチではない。ゲームの世界に似ていてもゲーム本編ではないから、ゲームほどゆるゆるではないけど。
でも、少なくとも、会話をしている相手に対して、抱き着いて接触し、会話に割り込むことくらいは普通に許される世界なのだ。
だから、わたしが、「やっと婚約できて嬉しい♡」とか言いながら、オクトール様の腕に引っ付いて、熱視線を送っていても、本気で怒られることはない。人によっては、軽くたしなめられるかもしれないが。
――が、怒られるか否かと、わたしらしいか否かはまだ別問題である。
ベルメ・ルビロスはそんなキャラじゃないし、わたし自身もそういう性格をしていない。結果として、そんな行動をする人間だとは周囲に見られていない。
本当は仲が良かったんだ! と認知される前に、うわ何やってんだろう……とドン引きされるのが簡単に想像つく。
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