ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

文字の大きさ
上 下
3 / 111

03

しおりを挟む
 しかし、こうして婚約破棄を言い渡されたのであれば、王子の今の現状を見て考えるに、無事ハーレムエンドに至っただろう。わたしの出番はこれで終わりである。
 あとは適当にわたしが悔しがってパーティーを退席し、彼らは彼らで軽くいちゃついて、そのまま時が飛んで夜、ハーレムに迎え入れたヒロインたちと年齢制限ギリギリの表現でいちゃいちゃしていればそのままエンディング曲が流れて終わりである。

 当然、現実だから時が飛ぶ、なんて、創作物でよくある表現は存在しないわけだが。
 さーて、適当に言葉を並べて退場しますか、と、わたしが息を吸い込んだとき――。

「ベルメ、貴様はオクトールと結婚するといい」

 そんな王子の言葉を聞いて、わたしの思考は完全に止まった。頭の中真っ白である。
 オクトール様と言えば、この国の第八王子である。第八王子、と言っても、国王も複数の女性を妻として迎え入れているので、わたしとそう年齢は変わらない。むしろ、アインアルド王子との間にあった五歳差が、三歳差にまで縮まる。ちなみに両方ともわたしより年上である。

 いや、年齢差はこの際どうでも良くて。
 ハーレムエンドに、こんなセリフ、あったっけ。いや、ないはず。ここは、負け台詞を吐くわたしに興味なんか持たないまま、ヒロインと会話しているはず。

 ――いや、これがゲームじゃない、からか。

 ゲームはここで終わりだったけれど、現実はここで終わりじゃない。むしろ、わたしたちの年齢を考えると、ここからがスタートである。
 となれば、わたしだって、貴族令嬢として、誰かと結婚しないといけないわけで。婚約破棄の後が、国外追放や死罪でないのなら、なおのこと。

 それにしてもオクトール様か。
 オクトール様は、魔法の天才、と呼ばれているが、その実、部屋にこもりきりで外に出ないお人だ。天才で、国の利益になる魔法道具をいくつも開発するからこそ許される生活を送っている。
 わたしも会ったことがないし、そもそも兄弟姉妹中もあまりよくないため、王子や王女でもそうそう顔を合わせないという。
 今日だって、アインアルド様の誕生パーティーを欠席している。王族だから、貴族よりは休みやすいんだろうけど。

 ……いや、オクトール様、逆にアリでは?
 引きこもっていたら出会いはない。国内で発表される、新しい魔法道具の開発ペースからして、ずっと自室で魔法道具の研究や開発をしているに違いない。
 彼の部屋に唯一自由に出入り出来るのは、彼の魔法の師である教師一人のみ。かなりのご年輩の老人だ。一度教師を引退したにも関わらず、オクトール様が彼しか部屋の出入りを認めなかったため、再び城に戻された人である。

 少なくとも、女性の影は一切ない。

 ここで断ったとしても、他の王子の元へ嫁がされるなら、他に妃がいることは確定しているし、妻が一人でいい、なんて稀有な貴族男性を探すのは骨が折れる。
 彼なら一夫一妻のままでいてくれる可能性がかなり高そうだ。

「かしこまりました、喜んで拝命いたします」

 脳内で計算をして、話を受けた方がいいな、と判断し、笑顔で返すと、わたしがそう返してくるとは思わなかったのか、王子は虚を突かれたような表情をしていた。
 ちょっとだけ気分がいい。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

皆さん、覚悟してくださいね?

柚木ゆず
恋愛
 わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。  さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。  ……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。  ※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...