ハーレム系ギャルゲに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

安眠にどね

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 モルトベルグ王国第一王子、アインアルド・ミハイル・モルトベルグ。
 それがわたしの、婚約者の肩書であり、名前である。

 その、はずだったのだが。

「――ベルメ・ルビロス! 貴様との婚約破棄を、この場で公表させてもらう!」

 今、この瞬間、このときを持って、わたしの婚約者、という肩書は消えるらしい。
 ざわざわと、辺りがどよめく。今日はアインアルド様の誕生日パーティー。社交界デビューを終えた国中の貴族が全員出席している、と言っても過言ではない。立ち上がることもままらないほどの大病を患っているか、隠居してボケきっているとかでなければ、今、この場にいるはずだ。

 そんな状況で、堂々と言うなんて、いい性格しているな、と思う反面――わたしは歓喜に満ち溢れていた。
 婚約破棄。王子からの。
 このときを、どれだけ待ったことか!

 ――『おさがり』がついに捨てられるのか。

 どこからともなく、そんな声がわたしの耳に届く。カクテルパーティ効果、というやつだろうか。自分に関係していたり、興味があることは、ざわめきの中でも聞き取れる、というやつだ。

 『おさがり』。そう、『おさがり』だ。
 一夫多妻制が存在し、偉くなれば偉くなるほど、金を持っていれば持っているほど、それが当たり前で常識になるモルドベルグ王国。

 最初はアインアルド様の、第一夫人、正室、未来の王妃候補、として彼と婚約したはずなのに。
 気が付けば今や七番目の女にまで成り下がっている。故に、『おさがり』と社交界でわたしは呼ばれているのだ。
 侯爵令嬢であるわたしをよくもまあそこまでコケにできるものだと言いたいが、相手は第一王子で、次期国王であることがほぼほぼ決まっている男。文句のつけようなんてないし、そもそも七人もの女を娶ること自体は、この国の王族であればおかしくはない。むしろ少ない方、とまで言われる始末。

 でも、わたしはそんなのごめんだった。
 一夫多妻なんてクソくらえ。一夫一妻こそ至上。浮気野郎の×××なんて腐ってもげろ――っといけないけない。
 『今の』わたしは侯爵令嬢、ベルメ・ルビロス。やんごとなきお嬢様なのだから、脳内であれど、ここまで汚い言葉を使っては駄目だ。ボロがでる。

 なにせ、わたしは前世で一般人として生きた記憶が残っているのだから。生粋のお嬢様に擬態するには、徹底しないと駄目なのだ。

 たとえこの世界が、前世にあった、ハーレム系ギャルゲー『シックス・パレット』という世界でも、今、わたしがベルメ・ルビロスという人間になったのなら、これが現実なのだから。
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