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 王女様を部屋に案内し、来客用のソファに座ってもらう。実母は一礼して、自分の役目は終わった、とばかりに去っていった。
 わたしとシオンハイトも、王女様の座ったソファと向き合うようにして置かれたソファに腰を下ろす。
 わたしたちの持ち込んだ資料を見て、「なるほど」と王女様は納得したような声をあげた。

「証拠としては十分だ。これを『中央』に持っていけば、母様たちを糾弾できるだろうし、事の原因である母様たちがいなくなれば、すぐに終戦へと話は進むはずだ」

 王女様の言う『中央』とは、世界中央機構のことだろう。世界平和のために動き、国際的な犯罪にも対応している組織だ。
 世界平和、と言っても、武力による圧力で押さえている、という表現が一番しっくりくるのだが。
 世界でも有数なほど強い『異能』を所持している人たちの集まりでもあるので、逆らってその『異能』を使われば、小国であれば一年も立たずに滅んでしまう、と言われている程だ。

 ただ、世界各国から人員を派遣しているとはいえ、世界中央機構に属すると国籍を失う上に、所属するためにはいろいろと『異能』を使って制限を持たされるため、武力によって押さえられているとはいえ、不自由さや理不尽さは感じない。
 むしろ、その強大な『異能』で守られている、という気にすらなる。
 だから、誰も逆らわない。

「シオンハイト殿。私と共に、『中央』へ行ってはもらえないだろうか。証拠は足りているが、オアセマーレ王国の王女たる私と、リンゼガッドの王子たる貴殿が共に行けば、より説得力は増すというもの」

 彼女の言うとおりだ。両国の王族が出向けば、それなりの対応をしてもらえるに違いない。
 しかし、シオンハイトは快諾しなかった。嫌だ、と言葉にしたわけではないが、分かった、とも言わない。顔をしかめて考え込んでいるようだ。

「……行くのは構わない。でも、ララを置いてはいけない」

 シオンハイトはそう言って、わたしの肩を抱き、軽く引き寄せてきた。

「今、彼女を僕の手の届かない場所に置いておきたくないんだ」

「――ッ!」

 シオンハイトの発言に、わたしの顔はカッと熱くなった。確かに、安全と言い切れない今、シオンハイトと離れるのは不安だが、何も、こんなにストレートに言わなくたっていいのに!
 わたしたちの様子を見てか、王女様がくく、と笑った。

「ラペルラティアがついてきたところで構わない。むしろ、王族、貴族は多い方がいいだろうな。基本的に使用人を派遣する立場の人間が多くいるだけで、異常事態だとすぐに察してもらえる」

 それならば、と、シオンハイトは王女様の提案を了承し、わたしたちは世界中央機構へと向かうことになった。
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