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 シオンハイトの言った通り、人通りのない裏道の影に隠れて、こっそりと髪色と目の色を変える。あれこれ考えるのが面倒だったので、わたしとシオンハイトは同じ色にした。
 髪は茶髪とも金髪とも言えないような中間の色で、目は明るい緑色。シオンハイトの傷の色を元に戻したので、色に気を配る余裕がなかったとも言う。

 シオンハイトの傷が綺麗さっぱり消せて、一人でこっそりと安心していた。肌の色を変えて傷っぽく見せていただけで、本当の傷というわけではなく、触っても痛くはないだろうし、触る側も特別引っかかるような感触はしないが、見ているだけで目立つから、ちゃんと消えて良かったという重いしかない。
 一応、目じりにほくろを入れて別人感を出してみたが……ここまで顔の印象が変わっていれば、パッと見た感じでシオンハイトだと分かる人はそうそういないだろう。

 ――さて、問題はここからだ。

 ここの現在地が分からないことには、わたしたちも動きようがない。最終目的としては、何か告発の準備を整えているであろう王女様の元へこの証拠を誰にもバレずに持っていくことなのだが……。
 オアセマーレであれば獣人が目立つからわたしが動くべきだし、リンゼガッドであればどちらかと言えばわたしが目立ってしまうから、シオンハイトに動いてもらいたいのだが……。

 ひと気がない場所を選びつつ、わたしたちは裏道を歩く。――しかし、これといって、ここの地名が分かるような決定的な看板等はない。住宅街なのか、似たような見た目のアパートの入口がいくつも続いているだけだ。
 やっぱり、表通りに出ないと情報が得られないだろうか、なんていう会話をひそひそと小声でシオンハイトとしていると――ふと、シオンハイトが足を止めた。

「何か見つけたの?」

 シオンハイトは大通りに繋がる横道の方を見ている。向こうは賑やかな通りになっているみたいだし、なにか特徴的なものを見つけたのかも。
 そう思って、シオンハイトに声をかけると、彼は大通りの方を指さした。

「――あそこ」

「何かある?」

「ここ、立って」

 シオンハイトが軽くわたしを引っ張る。そして、シオンハイトは、両手の親指と人差し指で四角をつくり、わたしの目の前に差し出した。右手の親指が左手の人差し指に、左手の親指が右手の人差し指に、それぞれ触れている、長方形の形。
 シオンハイトの指という額によって、風景が切り取られているようだった――まさに、一枚の絵のように。

「――あっ」
 わたしは思わず声を上げる。

 祭りの飾りこそないものの、ここはわたしがシオンハイトにあげた絵に描いた場所、そのものだ。
 ――ということは。ここはオアセマーレで、近くに、わたしたちが出会った場所がある可能性が非常に高いということか。
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