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 帰りの馬車の中、わたしは自己嫌悪に満ちていた。

 わたしは結局、シオンハイトを取ってしまったのだ。

 女王様の言葉を信じられなかったけれど、諦めると言っても、諦めないと言っても、どっちにしろ助けてもらえないのなら、と、「諦める」とわたしは彼女に言ってしまった。
 諦めると言ったからと、本当に諦めてしまうかどうかはまた別問題。それは分かっているのだが、やりにくくなったのは事実だし、王女様が危ないのも事実。

 結局、フィアがわたしたちの元へ一緒に来ることはなくなってしまったし、あんなことがあったから、終戦への話し合いは振り出しに戻った。それどころか、むしろ再戦へのきっかけになってしまうかもしれない。
 不幸中の幸いなのは、死人が一人もでないことだった。戦争の復興に、医療系の『異能』持ちがあちこちひっぱりだこで、必要最低限しかいなかったあの状態で、死者が出なかったのは奇跡に近いと思う。

 女王様の言う通り、命は助かったのだ。
 でも、それが今後も続くとは思わない。特に、王女様は。

 彼女が失脚する前になんとかしないと、このまま、戦争の原因を明らかにして、双方の誤解を解き、終戦への道を作ることができなくなってしまう。
 あんな爆発騒ぎがあれば、わたしはかなり疑いの目で見られるだろう。実際、わたしはあの場にいなかったから、わたしが爆発を起こした犯人でないことは分かってもらえるかもしれないが、リンゼガッドの情報を流すのでは、という疑いが向けられてもおかしくはない。これはわたしに限った話ではなくて、リンゼガッドに嫁いだ令嬢全員に言えることかもしれないが。

 ……何か、彼女にばれないで行動する手はないだろうか。
 わたしはリンゼガッド側にも、オアセマーレ側にも、信頼して手を組めるような相手がいない。この状況では、今からリンゼガッドに信用してもらって、代わりに行動してもらえるような人を見つけられるとは思えない。ましてや、リンゼガッドにもイルシオンへ奴隷を流している人物がいるかもしれないし。

 女王様のあの態度を見るに、王女様が行動を起こすことは分かっていたはず。ならば、きっと、失脚のシナリオもできているだろう。
 ばれたら処分される、と懸念していた王女様が、バレたときの対処が無策とは思えないが、時間稼ぎにしかならないような気がするのだ。

 わたしは馬車の窓から、流れていく風景を見ながら、何か手はないかと、考えていた。
 わたしの『異能』が変身系や幻覚系だったら、わたしたちだと悟られないように行動できるかもしれないのに。
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