80 / 114
80
しおりを挟む
帰りの馬車の中、わたしは自己嫌悪に満ちていた。
わたしは結局、シオンハイトを取ってしまったのだ。
女王様の言葉を信じられなかったけれど、諦めると言っても、諦めないと言っても、どっちにしろ助けてもらえないのなら、と、「諦める」とわたしは彼女に言ってしまった。
諦めると言ったからと、本当に諦めてしまうかどうかはまた別問題。それは分かっているのだが、やりにくくなったのは事実だし、王女様が危ないのも事実。
結局、フィアがわたしたちの元へ一緒に来ることはなくなってしまったし、あんなことがあったから、終戦への話し合いは振り出しに戻った。それどころか、むしろ再戦へのきっかけになってしまうかもしれない。
不幸中の幸いなのは、死人が一人もでないことだった。戦争の復興に、医療系の『異能』持ちがあちこちひっぱりだこで、必要最低限しかいなかったあの状態で、死者が出なかったのは奇跡に近いと思う。
女王様の言う通り、命は助かったのだ。
でも、それが今後も続くとは思わない。特に、王女様は。
彼女が失脚する前になんとかしないと、このまま、戦争の原因を明らかにして、双方の誤解を解き、終戦への道を作ることができなくなってしまう。
あんな爆発騒ぎがあれば、わたしはかなり疑いの目で見られるだろう。実際、わたしはあの場にいなかったから、わたしが爆発を起こした犯人でないことは分かってもらえるかもしれないが、リンゼガッドの情報を流すのでは、という疑いが向けられてもおかしくはない。これはわたしに限った話ではなくて、リンゼガッドに嫁いだ令嬢全員に言えることかもしれないが。
……何か、彼女にばれないで行動する手はないだろうか。
わたしはリンゼガッド側にも、オアセマーレ側にも、信頼して手を組めるような相手がいない。この状況では、今からリンゼガッドに信用してもらって、代わりに行動してもらえるような人を見つけられるとは思えない。ましてや、リンゼガッドにもイルシオンへ奴隷を流している人物がいるかもしれないし。
女王様のあの態度を見るに、王女様が行動を起こすことは分かっていたはず。ならば、きっと、失脚のシナリオもできているだろう。
ばれたら処分される、と懸念していた王女様が、バレたときの対処が無策とは思えないが、時間稼ぎにしかならないような気がするのだ。
わたしは馬車の窓から、流れていく風景を見ながら、何か手はないかと、考えていた。
わたしの『異能』が変身系や幻覚系だったら、わたしたちだと悟られないように行動できるかもしれないのに。
わたしは結局、シオンハイトを取ってしまったのだ。
女王様の言葉を信じられなかったけれど、諦めると言っても、諦めないと言っても、どっちにしろ助けてもらえないのなら、と、「諦める」とわたしは彼女に言ってしまった。
諦めると言ったからと、本当に諦めてしまうかどうかはまた別問題。それは分かっているのだが、やりにくくなったのは事実だし、王女様が危ないのも事実。
結局、フィアがわたしたちの元へ一緒に来ることはなくなってしまったし、あんなことがあったから、終戦への話し合いは振り出しに戻った。それどころか、むしろ再戦へのきっかけになってしまうかもしれない。
不幸中の幸いなのは、死人が一人もでないことだった。戦争の復興に、医療系の『異能』持ちがあちこちひっぱりだこで、必要最低限しかいなかったあの状態で、死者が出なかったのは奇跡に近いと思う。
女王様の言う通り、命は助かったのだ。
でも、それが今後も続くとは思わない。特に、王女様は。
彼女が失脚する前になんとかしないと、このまま、戦争の原因を明らかにして、双方の誤解を解き、終戦への道を作ることができなくなってしまう。
あんな爆発騒ぎがあれば、わたしはかなり疑いの目で見られるだろう。実際、わたしはあの場にいなかったから、わたしが爆発を起こした犯人でないことは分かってもらえるかもしれないが、リンゼガッドの情報を流すのでは、という疑いが向けられてもおかしくはない。これはわたしに限った話ではなくて、リンゼガッドに嫁いだ令嬢全員に言えることかもしれないが。
……何か、彼女にばれないで行動する手はないだろうか。
わたしはリンゼガッド側にも、オアセマーレ側にも、信頼して手を組めるような相手がいない。この状況では、今からリンゼガッドに信用してもらって、代わりに行動してもらえるような人を見つけられるとは思えない。ましてや、リンゼガッドにもイルシオンへ奴隷を流している人物がいるかもしれないし。
女王様のあの態度を見るに、王女様が行動を起こすことは分かっていたはず。ならば、きっと、失脚のシナリオもできているだろう。
ばれたら処分される、と懸念していた王女様が、バレたときの対処が無策とは思えないが、時間稼ぎにしかならないような気がするのだ。
わたしは馬車の窓から、流れていく風景を見ながら、何か手はないかと、考えていた。
わたしの『異能』が変身系や幻覚系だったら、わたしたちだと悟られないように行動できるかもしれないのに。
0
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます
刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
秘密の多い令嬢は幸せになりたい
完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。
完結が確定しています。全105話。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる