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 窓の外を見てみても、窓から見える景色に特別違和感はない。何か目立ったものはなく、少なくとも異常はなかった。となると、ここからでは見えないものか。
 わたしやスノーティア、シディール様が警戒している中、ずっと廊下の隅で待機して、黙っていたフィアが、焦ったように声を上げた。

「お三方は客間に一時避難を! すぐにこちらにも警備の者が参りますので」

 アデルの方から、彼女はなにか受信したのだろうか。わたしたちのいる場所から何があったのか把握できない以上、その可能性が高い。

「……避難? 何があったんですの?」

 急に声を出したフィアに質問をしたのはスノーティアだ。

「――……第一会議室にて、爆発騒ぎがあったそうです。犯人は不明、爆発音を合図に、集団で城を制圧しようとする者がいるかもしれません。とにかく、安全の確保を――」

 第一会議室。王城の第一会議室といえば、外交の際に使われる場所だ。

「ラペルラティア様!?」

 気が付けばわたしは第一会議室に向かって走り出していた。場所は知っているから、向かうこと自体は難しくない。
 今回の両国の終戦へ向けての話し合いは、オアセマーレからは王配が、リンゼガッドからは王太子が、それぞれ国の代表として話し合いの場についている、と聞いている。女王と国王、両国の代表が向かい合うときは、終戦の話がまとまり、後はもう、目の前で和平条約にサインするだけの状態のときだけだ。
 
だからこそ、参加しているのは王太子で――護衛には、シオンハイトがいるはずなのだ。
 夜には護衛を交代すると言っていた。
 そして、今は夕方。
 もう、会議が終わっていてくれ、と願いながら、わたしは走る。

 第一会議室近くにたどり着くと、わたしはすっかり息が上がっていた。
 第一会議室からは煙が上がり、扉が開いているのが見える。炎が吹きあがっていないあたり、火事にはなっていないのだろうか?

 ――中から、騒ぎ声が聞こえる。
 人が、いるんだ。

 わたしは、息を整えながら、部屋の入口へと立つ。
 その先には、悲惨な光景が、広がっていた。

 わたしの記憶の中にある絢爛豪華な会議室の面影はなく、焦げ跡や、何かの残骸が多くある。――そして、血と思われる、赤も。
 シオンハイトは、シオンハイトはどこ。
 わたしは探しに入ろうとして、思い切り肩を後ろに引っ張られた。

「ラペルラティア様、今入っては、救助の邪魔になります!」

 わたしに追い付いたフィアだった。
 彼女の言うことはもっともだ。わたしは医療系の『異能』を持っていないし、力があるわけでもない。ここに入ったところで、なんの役にも立たないどころか邪魔になるだけ。

 分かっているのに、室内を見て――気が付いてしまった。
 救助を受けているのは、人間ばかりだということに。
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