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「どこまで君が私の話を信じるか分からないが、話を続けよう。……信じようと信じまいと、母様にバレるような真似だけはしてくれるな」
トン、と島の辺りを叩きながら、王女様は言う。
「――私は、このイルシオンこそが、戦争の原因ではないかと思っている」
「……根拠は?」
わたしが聞くと、「信じるのか?」と目を丸くして驚かれた。
「信じるかどうかは、証拠次第です。現状では、だいぶ怪しいですが……」
わたしが言葉を濁すと、そうだろうな、とでも言いたげな表情で彼女は「あるよ」と言った。
「先日、港町にお忍びで遊びに――んんっ、視察に行ったのだが、そこで不審な船を見つけてな。こっそり調べたら、どうやら奴隷商の船だったようだ」
――奴隷。
前世の記憶があるわたしからしたら、考えられない話だが、オアセマーレには奴隷という制度がある。というのも、刑罰の一種なのだ。前世の記憶からすれば、奴隷なんて大げさな言い方で、ただの刑務作業そのものなのだが、この世界では奴隷と名づけられている。
ただし、それは合法の奴隷に限った話。
王女様がわざわざ口にしたということは――違法奴隷。おおよそ、幼い子供を攫い、教育によって常識や意識を歪め、使い勝手がいいようにする非道極まりないものだ。
「船内にあった航路図には、イルシオンの島が描かれていたよ。つまりは、少なくともあの船の船員は、イルシオンの存在を知っていたことになる」
普通に考えたら、その船はイルシオン行き、ということか。
「一番肝心な奴隷なのだが――人間ではなく、獣人もかなりの数、混ざっていたようだ。突撃するだけの戦力も、優位に立てる『異能』持ちもいなかったから、彼らを引きとめることはできなかったが」
「――!」
わたしは思わず息を飲む。それは、かなり怪しい話だ。
でも――。
「――もし、イルシオンという国があり、本当に違法に奴隷を双方の国から取っていたところで……戦争になるのは、イルシオンとであり、オアセマーレとリンゼガッドが争う理由にはならないのでは?」
確かに、違法に国民を攫われたとなれば、争いの原因になることは十分にある。外交だけで取り戻すのが一番ではあるが、こじれて戦争にまで、という展開は、あり得なくはない。
今まで見当をつけた中では、一番あり得る原因だ。ただ、戦争にイルシオンが参加していない、という一点を除いては。そもそも、そんな国があったこと自体、知らなかったのだ。
「……そこで、この地図だ。本物の地図が隠されて、私たち王族の教育にまで、偽物の地図が使われ、イルシオンの存在は隠されている。どう考えても、我が国が一枚噛んでいるに違いないと思わないか?」
わたしは、彼女の言葉を否定できなかった。
トン、と島の辺りを叩きながら、王女様は言う。
「――私は、このイルシオンこそが、戦争の原因ではないかと思っている」
「……根拠は?」
わたしが聞くと、「信じるのか?」と目を丸くして驚かれた。
「信じるかどうかは、証拠次第です。現状では、だいぶ怪しいですが……」
わたしが言葉を濁すと、そうだろうな、とでも言いたげな表情で彼女は「あるよ」と言った。
「先日、港町にお忍びで遊びに――んんっ、視察に行ったのだが、そこで不審な船を見つけてな。こっそり調べたら、どうやら奴隷商の船だったようだ」
――奴隷。
前世の記憶があるわたしからしたら、考えられない話だが、オアセマーレには奴隷という制度がある。というのも、刑罰の一種なのだ。前世の記憶からすれば、奴隷なんて大げさな言い方で、ただの刑務作業そのものなのだが、この世界では奴隷と名づけられている。
ただし、それは合法の奴隷に限った話。
王女様がわざわざ口にしたということは――違法奴隷。おおよそ、幼い子供を攫い、教育によって常識や意識を歪め、使い勝手がいいようにする非道極まりないものだ。
「船内にあった航路図には、イルシオンの島が描かれていたよ。つまりは、少なくともあの船の船員は、イルシオンの存在を知っていたことになる」
普通に考えたら、その船はイルシオン行き、ということか。
「一番肝心な奴隷なのだが――人間ではなく、獣人もかなりの数、混ざっていたようだ。突撃するだけの戦力も、優位に立てる『異能』持ちもいなかったから、彼らを引きとめることはできなかったが」
「――!」
わたしは思わず息を飲む。それは、かなり怪しい話だ。
でも――。
「――もし、イルシオンという国があり、本当に違法に奴隷を双方の国から取っていたところで……戦争になるのは、イルシオンとであり、オアセマーレとリンゼガッドが争う理由にはならないのでは?」
確かに、違法に国民を攫われたとなれば、争いの原因になることは十分にある。外交だけで取り戻すのが一番ではあるが、こじれて戦争にまで、という展開は、あり得なくはない。
今まで見当をつけた中では、一番あり得る原因だ。ただ、戦争にイルシオンが参加していない、という一点を除いては。そもそも、そんな国があったこと自体、知らなかったのだ。
「……そこで、この地図だ。本物の地図が隠されて、私たち王族の教育にまで、偽物の地図が使われ、イルシオンの存在は隠されている。どう考えても、我が国が一枚噛んでいるに違いないと思わないか?」
わたしは、彼女の言葉を否定できなかった。
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