婚約破棄された侯爵令嬢は、元敵国の人質になったかと思ったら、獣人騎士に溺愛されているようです

安眠にどね

文字の大きさ
上 下
17 / 114

17

しおりを挟む
 わたしがプリンを食べるようになったからといって、シオンハイトがやってくる頻度は減らなかった。代わりに、必ずプリンやゼリーといった、毒や薬が混ぜにくそうなお菓子が出されるようにはなったが。
 今のところ、腹を下したり、気分が悪くなったりするようなことはない。

 でも、こんなにもほとんど毎日わたしのところに来て……いつ仕事しているんだろう、シオンハイト。
 いつになったら諦めるんだろう、とはずっと思っていたけれど、最近になって、彼の就業スタイルが気になってきた。もちろん、一日中わたしと一緒にいるわけじゃないし、毎日お菓子を運んでくるわけじゃない。

 でも、日中の、丁度おやつどきというのは、普通仕事の時間帯なんじゃないだろうか? まったく仕事をしていないわけじゃないだろうけれど、かといって、ちゃんと仕事をしているのかも不安になる。
 わたしが彼の仕事を心配したところで、どうにもならないのだが。

 そして最近気になることがもう一つ。
 暇だな、と思うようになる時間が増えた気がするのだ。
 つい先日までは、ずっと気を張っていて、それも今はあまり変わらないのだが、誇張なしに、わたしは一日中部屋にこもっている。

 わたしが、シオンハイトと共に使っているこの夫婦の部屋は、スートルームみたいな部屋だから、圧迫感はないものの、同時に、水回り完備なため、室内で全て完結してしまう。こんな場所で、じっとしているのは気が滅入るのだ。だからといって、一人で王城を歩き回る度胸はないので、余計に質が悪い。

 最近は再び、こちらに来たばかりの頃のように、帰りたい、という感情がぶり返していた。
 やることがないから、こうやって考え込んでしまうのだろうけど――。

「ララ!」

 勢いよく扉が開かれ、シオンハイトが入ってくる。
 今日もシオンハイトが来る時間か、と思ったけれど、今日の彼はお菓子を持っていない。廊下に使用人が控えている様子もなかった。
 不思議に思っていると、シオンハイトは、ソファに座っていたわたしの隣に座る。……やっぱり今日は手ぶららしい。

「ねえ、ララ。外に興味はない?」

 シオンハイトが、わたしの顔を見ながら聞いてきた。

 ――外。

 それはこの部屋の外、ということだろうか。それとも、もっと広い意味で城の外、とか?
 わたしが返答に困っていると、いつものだんまりだと思ったらしいシオンハイトが、わたしに構わず話を続けた。

「ララたちが自由に外へ出られる許可が降りたんだよ」

 そして、いつものように笑顔で、そんなことを言った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

真面目に仕事をしていただけなのに、戦帝に好かれちゃいました

ヒンメル
恋愛
元男爵令嬢ナディアは体を悪くした父を抱え、騎士団詰所で侍女の仕事に励んでいた。そんなある日、国の英雄である戦帝オスカー・グラフトンが王都に帰還したのだった。そんな二人が出会ったことにより何かが起こるのか?起こらないのか?(→起こらないと話が進まない……) ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

処理中です...