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 ソルヴェード様とのダンスが終わって少しすると、彼の考えた通り、様々な家の令息がわたしに話しかけてきた。ソルヴェード様とダンスをする前、壁の花になっていたのが嘘のようである。
 まあ、勿論その誰も彼もが、わたしを踏み台にしてソルヴェード様に近付こう、という魂胆が見え隠れしている人ばかりだったが。ソルヴェード様自体は女好きではあるけれど、人から嫌われるような人間ではなく、どちらかといえば人望はある方なのだ。女遊びが激しくても、超えてはいけない一線を見誤ることなく、きっちりしているから周りの評価も悪くないのだと思う。

 ソルヴェード様、というよりは王族の覚えが良くなりたい、という下心を持つ人もいれば、単純にソルヴェード様と仲良くないりたい、という人もいるようだ。
 学園生活では王族に話しかけていい家の人間は暗黙の了解で決まっていたけれど、学園の外ではそうでもない。わたしみたいに、学園時代の名残で話しかけない人も多いが、そもそも貴族としているからには、一度も王族と話をしない、というのも無理な話なのだし。

 閑話休題。

 そんなわけで、わたしは珍しく、たくさんダンスを踊って疲れ切っていた。舞踏会が久々というものあるけれど、そもそも『伯爵令嬢』をしたくないわたしにとっては、ダンスなんて極力踊りたくないのだ。だから、いつもは大抵花の壁。
 ようやく会場の隅に戻ってこれて、わたしは一息ついた。

 何人かダンスを踊りはしたけれど、これ、今後に繋がるのかは微妙だなあ。無意味ではないと思うけれど、婚約者云々まで発展するかと考えたらそれはまた別の話な気がする。
 座りたいなあ、と思いながらわたしは、壁にこっそり寄りかかった。休憩室に行きたいけれど、あそこって、大抵男女が連れ合って行く場所だし。かといって、本当に体調不良の救護室に行くわけにもいかない。ちょっと疲れただけだし。

 どこか座れるような場所はないかな、と思うものの、用意されているテーブルはどれも四人席で、グループ利用することが前提のものを見ると、一人でいるわたしにはちょっと使いにくい。しかもああいうの、派閥で座る場所がなんとなく決まっているものだし。基本的に社交を輪にかけておろそかにしているわたしが座るのはちょっとなあ……。前までの自分の立ち位置を考えて座る場所を見極めることはできるけれど、今も前と同じ場所に座っていいのか分からないし。
 使われていないところは使われていないところで、後から人が来たら逃げられない。わたしの家の現状に興味を持った人が、探りをいれに、正面に座るということを想像しただけで、立っている方がマシに思えてくる。

 早く終わらないかな、なんて、今日の気力を使い切り、本来の目的も忘れてそんなことを考えていると――。

「――少し、いいだろうか」

 わたしは、一人の男性に声をかけられた。
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