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 なんだ、今の声。
 ――……もしかして。

「その男の子と知り合いなんですか?」

 社交界デビュー前の子供も連れてきていい、私的なパーティーとはいえ、王城で開催されたものだ。もしかしたら、ソルヴェード様も知っている人だったのかも。
 ソルヴェード様とわたしは一歳しか年が違わないし、あのときの男の子と知り合いでもおかしくはない。あのときの男の子も、わたしと同じくらいの年齢だったと思うし。

 ハッキリ彼に聞いたわけではないけど、普通に会話が成り立っていたから、極端に年下ということもあるまい。体格も似通っていたから逆もまたしかり。

「ああ、うん、そう。知ってるよ」

 なんだか少し歯切れが悪かったけれど、ソルヴェード様は肯定の言葉を返してくれた。

「どこの家の人か分かります?」

 別に今更あったところで何か変わるわけでもない。初恋みたいなものではあったけれど、だからといってどうこうなりたい、という感情はない。ただ、彼が元気にやっているのかな、とか、どこの人の家の子息だったのかな、とか、ちょっとした好奇心みたいなものがあるだけだ。

 確かに、きっかけこそ、心細いときに差し出されて安心したものだから好きになった、と言えるけれど、今は完全に味が好きで食べているわけだし。
 王城のパーティーで食べるのは、なんとなくその一件を思い出してしまうから食べたくなる、というのは事実だけれど、毎回安心感を求めてストロベリーパイを食べるということはない。

「あー、えっと……。あの子は、僕の……と、友だちなんだけど、あんまり表立って言えないっていうか……」

「……低い方なんですか?」

 今いる場所が場所なので、わたしは具体的に何が、とは口にしなかったけれど、爵位が低い人なのか、という質問の意図を分かってくれたのか、ソルヴェード様は「そ、そんなところかな?」と言った。なんだか曖昧な物言いだけれど。
 でも、本当に相手が爵位の低い家の子息ならば、表立って王子と友人だというと、向こうに迷惑がかかるよね。主に、爵位は高いのに、王族と交流できない層からのやっかみが凄そう。

「元気にしてますか?」

「ああ、うん、それはもう。元気だよ」

 ――……。
 なんか、急にはっきり言われると、それはそれで怪しいな。

 でも別に、あれは確かに男の子だったし、隠されるようなことはなにもない。
 ちょっとした好奇心からの質問だから、どうしても言及したいわけじゃないし、ソルヴェード様が元気だというのならそれでいいか。

 わたしは深く考えることをやめ、再びストロベリーパイを食べる手を動かすのだった。
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