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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編

430 いじめっこ勇者

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 それから俺たちはすぐに、暴マーを自殺に追い込むための作戦会議を始めた。メンバーはもちろん、俺、リュクサンドール、ヒューヴ、サキ、シャラ、女帝様の全員で、円陣を組んでの話し合いだ。

「相手を自殺させるためには、やっぱリンチしかねーよな! 暴力で訴えかけてよォ! 暴力はすべてを解決する!」

 とりあえず殺さない程度に痛めつけ続け、やつの心を折る作戦に決めた。

 ただ、心を折られたやつがすぐに自殺しようという発想になるかはあやしいところだったので、変態女の魔法で、あらかじめやつの目の届く範囲の空中に様々な自殺の方法を書き記したカンペを投影させることにした。自爆魔法で自殺、頸動脈切断からの失血死、首つり、など、この場で簡単に死ねる方法を完全網羅した虎の巻だ。これを見れば誰でも簡単に死ねる!

 また、やつを痛めつけるにあたっては当然、ゴミ魔剣にはきつく「捕食禁止」の命令を出した。物理障壁がある以上、こいつを使う必要があるが、その最中うっかり一撃で倒され(食われ)ちまったらすべてが水の泡だからな。

 まあ、ゴミ魔剣は当然、

『エー、ヤダヤダヤダッ! あんなご馳走を前にして食うの禁止とか、そんなご無体な話があるか、マスタァー!』

 めちゃめちゃ物分かりが悪かったわけだが。

「うっせーな。一度は食った相手なんだからいいだろ。今回は我慢して、お前はやつのバリア破る仕事だけしてろ」
『ヤダー! 仕事だけ押し付けられて給料ナシとか、そんなクソボランティア行為を強いられるとかあるかァ!』
「あるよ」
『ナイナイ! ナイナイナイ! イヤッ! もうワタシ、帰る!』
「……どこにだよ」

 まあ、俺としては用が済んだらどこぞに消えてもらって全然かまわんのだが。用が済んだらな。

「いいから、今回は我慢しろよ。そのうちまた美味いモンスター食わせてやるからさ」

 完全に駄々っ子なので、子供をあやすような感じで適当に言った。

 すると、

『エ? じゃあ、かわりにここのデカい亀さん食べちゃっていいっすか?』

 またふざけたことを言うゴミ野郎だった。

「だから、それはダメだって言ってんだろ! あんま俺の言うこと聞かねえと、またドノヴォンの警察に預けちまうぞ!」
『ア、それはチョト、勘弁デスネー……』

 と、一気にトーンダウンするゴミ野郎だった。そうそう、こいつってば俺がハリセン仮面として捕まった時、ドノヴォンの警察に証拠品として押収されたんだが、そのときはまったく俺のところに帰ってこなかったもんな。ドノヴォンの警察の中に、こいつを封じ込めることができる凄腕の術師がいることは明確だ。そもそもティリセのアブなんとかって魔法でもコロっと封印されてたしな。クソみたいなチート野郎だが、封印系の魔法は効くやつなんだ。

『わ、わっかりましたヨォ? クッソしゃらくせえですけど、今だけは特別にマスターの言うこと聞いてあげてもいいですヨォ? ハァァ……クソデカため息』

 どうやら、言うことは聞く気になったようだが、めちゃくちゃ士気が落ちてやがる。これはこれで使いにくそうだな?

「まあ、この埋め合わせはちゃんとするから。ベルガド以外で」
『マジっすか? じゃあ、ネムちゃんはぁ、バカでかーい鯨のお肉食べたいっす!』
「鯨? ファルンなんとかっていう、ディヴァインクラスのレジェンド・モンスターことか?」
『イエッス! ディヴァイン食い損ねた悲しみは、同じディヴァインを食うことでしか雪ぐことができない法則ッ!』
「……まあ、それぐらいは別にいいか」

 確か、そのなんとかという鯨は、報復とはいえ、人間の国を滅ぼしたこともあるそうだからな。討伐しても特に文句を言われることはなさそうだ。

「じゃあ、そういうことなんで、今日は言われた通りキリキリ働け!」
『ア、ハーイ。鯨肉の件、忘れんじゃねっすヨ? 捕鯨は伝統文化!』

 と言いながら、ゴミ魔剣は即座に形を柄の長い鈍器に変えた。短槍くらいのリーチで、先端にはトゲトゲのついた金属の塊がついている。これは狼牙棒ってやつか?

「なるほど。やつをひたすらサンドバックにするにはちょうどよさそうだな」

 そういうわけで俺はそのまま狼牙棒で暴マーに襲い掛かったのだった。

「オラッ! クソ爬虫類、泣け! 苦しめ! 絶望しろ!」

 ボコボコ! 一撃で倒さない程度に手加減しつつ、ひたすら狼牙棒で殴りつける!

「ちょ、ま……。貴様は剣使いのはずだろう! それがなぜそのような鈍器を振り回して……痛たたたたッ!」

 呪術オタに捨てられたショックで放心状態だったらしい暴マーは、急に俺が狼牙棒で殴りかかってきてびっくりしたようだったが、かまわず殴り続ける! 傷心の竜を肉体的にも痛めつける!

「ギャーッ!」

 飛び散る血しぶき、響く悲鳴。一応、暴マーもブレス吐いてきたり、手足や尻尾をバタつかせたりして抵抗してくるが、そんなの俺にとっちゃ屁の河童だ。そのままひたすらボコりつづけた。

「き、貴様、我を布団か何かと勘違いしているのか! 我を延々と叩いても何も出んぞ!」
「出るだろ」
「え」
「……内臓とか、目玉とか」
「ちょ、そんなの外に出してはイカンだろう! しまっておくものだろう!」
「んー、でも、出ちゃうし?」

 ボコボコ! 今度はやや強めに狼牙棒を打ち付け、その巨体から内臓と目玉を飛び出させてやった。有言実行だ。

「ギャーッ!」

 と、悲鳴は上げるものの、すぐに完全回復する暴マーだった。わかっちゃいるが、この手の相手ってやっぱめんどくせえな。はやく死にたい気持ちになーれ! ボッコボコ!
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