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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
424 巨悪と邪悪が出会うとき
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「お困りのようですね、トモキ君」
と、そのときすぐ後ろから声がした。はっとして振り返るとそこには呪術オタの顔があった。
そういや、コイツも一応、暴マーのHP削り要員だっけ。ちょっと削るぐらいじゃ意味ない相手だと判明したわけだが。
「お前、この状況をどうにかできる術とか使えるのかよ?」
「……そうですね。あのマーハティカティさんの無限の回復能力に対抗できるのは、やはりツァドしかな――」
「だから、その術はやめろって言ってんだろ!」
危なすぎるからあ! お前以外のすべてが破滅する術じゃねえかよ!
「え……ツァド?」
と、そこで暴マーがぎょっとしたような声を出した。
「そ、それはまさか、あの虚ろの蛇ツァドφのことか? やつがここにいるというのか!」
なんかめっちゃ動揺してキョロキョロしはじめた。なんだこの反応?
「お前、ツァドってやつとなんかあったのか?」
「あ、あったも何も! あれはまさに恐るべき虚無そのものではないか! ふ、触れるどころか、近寄ることすら許されぬ、この世の終わりそのものの存在……」
話しながらガクブルして顔面蒼白になっていく暴マーだった。こいつ、その虚ろの蛇ってやつにトラウマでもあるのか。同じディヴァインクラス同士のモンスターでも、力の序列とかあんのかよ。
「まあ、確かにお前の怖がる気持ちはわからんでもない。あれはほんと、めっちゃやべえ暗黒そのものだったからな……」
と、俺も思わずうなずいてしまった。
「し、知っているのかそこの人間! お前もあやつの恐ろしさを!」
「ああ、拳も剣も何も通用しねえってのはなあ」
「我のブレスも何も効かなかった……。我とて少しばかり神聖魔法も使えるというのに、何も……」
「少しばかりたしなんでる程度じゃダメなんだろうなあ」
あの果てしなく虚無に近い暗黒だもんなあ。ドノヴォンの女帝様ぐらいのチート神聖魔法じゃねえと対抗できねえんだろう。ユリィはなぜそんなの使えたのか今でもよくわからんが。
「安心しろ、ここにそのツァドってやつはいない」
「そ、そうか! 安心したぞ、人間!」
「ただ、ツァドを召喚できる呪術を使うやつはここにいる」
「えっ」
「あ、はじめまして、暴虐の黄金竜マーハティカティさん。僕は呪術師のリュクサンドール・ヴァン――」
「うわああっ! 呼ぶな! あんなのを召喚するなあああっ!」
と、半狂乱になってリュクサンドールにブレス攻撃する暴マーだった。
まあ、すぐに、
「うわあ、熱いですねえ。これがディヴァインクラスのドラゴンさんの、本気のブレスですか。さすがです。今まで感じたことのない熱量です!」
とか言いながらやつは笑顔で復活したわけだが。
「こ、この男……我の本気のブレスを笑顔で受け止めた……」
暴マーのやつは、目の前の光景に愕然としたようだった。こいつもう、さっきから世界を滅ぼす最強の邪悪としての威厳ゼロだな。
「こいつは不死族だから、神聖属性攻撃以外は効かないんだよ。やるならお前の、少しばかり使えるとかいう神聖魔法をお見舞いしてやれよ」
さすがに面子丸つぶれすぎてかわいそうになってきたので、こっそり暴マーに教えてやった。
「! そうか! 神聖魔法か! ならば食らえ! 神聖波動!」
と、何やら詠唱無しで呪術オタめがけて白い光線をぶっ放した暴マーだった。
弱点の神聖属性魔法攻撃なだけに、呪術オタもさすがに、
「うひゃあ」
と、間抜けな声を出して、体を溶かし……て、すぐに再生しやがった。何事もなかったかのように。
「ああ、今のはちょっと痛かったですね。僕の寿命が五秒ぐらい削れた気がしました」
「五秒て」
ほぼ効いてねえじゃねえかよ! 暴マーさんの渾身の神聖属性魔法攻撃やぞ!
「あ……ああ……。この一瞬だけ攻撃が効いているようで、よく見ると全然効いてない様子は、まさにツァドそのもの……」
暴マーはついには恐怖し始めたようだった。たぶん、ツァドってやつと対峙したときも、こんな感じやったんやなって。
と、そのとき、
「あ、そうだ! ヒューヴ君みたいに僕もマーハティカティさんに攻撃しなくちゃいけないんでした!」
呪術オタは急に自分の仕事を思い出し、
「始原の混沌の、さらに奥深くに潜む悠久の観測者よ! その深淵から、すべての魔力を解き放ち、かの敵を穿て! 始原の観測者!」
と、十八番の呪術を暴マーにぶっぱなし、
「ギャアアアッ! 痛い痛い痛い!」
なんか普通にダメージ与えてるし。
「うわあ。あの伝説の存在のマーハティカティさんに僕の呪術が通用するなんて感動です! ここだけの話、この術は僕も痛いんですよ!」
「し、知るかあ!」
「他の呪術も使ってもいいですか?」
「いいわけあるか!」
「ツァドとかどうですか?」
「そ、それだけはやめろおおおおおっ!」
と、暗黒ビームを食らいながら涙目で必死で訴える暴マーだった。うん、そうね。マジでその術だけはやめよ?
と、そのときすぐ後ろから声がした。はっとして振り返るとそこには呪術オタの顔があった。
そういや、コイツも一応、暴マーのHP削り要員だっけ。ちょっと削るぐらいじゃ意味ない相手だと判明したわけだが。
「お前、この状況をどうにかできる術とか使えるのかよ?」
「……そうですね。あのマーハティカティさんの無限の回復能力に対抗できるのは、やはりツァドしかな――」
「だから、その術はやめろって言ってんだろ!」
危なすぎるからあ! お前以外のすべてが破滅する術じゃねえかよ!
「え……ツァド?」
と、そこで暴マーがぎょっとしたような声を出した。
「そ、それはまさか、あの虚ろの蛇ツァドφのことか? やつがここにいるというのか!」
なんかめっちゃ動揺してキョロキョロしはじめた。なんだこの反応?
「お前、ツァドってやつとなんかあったのか?」
「あ、あったも何も! あれはまさに恐るべき虚無そのものではないか! ふ、触れるどころか、近寄ることすら許されぬ、この世の終わりそのものの存在……」
話しながらガクブルして顔面蒼白になっていく暴マーだった。こいつ、その虚ろの蛇ってやつにトラウマでもあるのか。同じディヴァインクラス同士のモンスターでも、力の序列とかあんのかよ。
「まあ、確かにお前の怖がる気持ちはわからんでもない。あれはほんと、めっちゃやべえ暗黒そのものだったからな……」
と、俺も思わずうなずいてしまった。
「し、知っているのかそこの人間! お前もあやつの恐ろしさを!」
「ああ、拳も剣も何も通用しねえってのはなあ」
「我のブレスも何も効かなかった……。我とて少しばかり神聖魔法も使えるというのに、何も……」
「少しばかりたしなんでる程度じゃダメなんだろうなあ」
あの果てしなく虚無に近い暗黒だもんなあ。ドノヴォンの女帝様ぐらいのチート神聖魔法じゃねえと対抗できねえんだろう。ユリィはなぜそんなの使えたのか今でもよくわからんが。
「安心しろ、ここにそのツァドってやつはいない」
「そ、そうか! 安心したぞ、人間!」
「ただ、ツァドを召喚できる呪術を使うやつはここにいる」
「えっ」
「あ、はじめまして、暴虐の黄金竜マーハティカティさん。僕は呪術師のリュクサンドール・ヴァン――」
「うわああっ! 呼ぶな! あんなのを召喚するなあああっ!」
と、半狂乱になってリュクサンドールにブレス攻撃する暴マーだった。
まあ、すぐに、
「うわあ、熱いですねえ。これがディヴァインクラスのドラゴンさんの、本気のブレスですか。さすがです。今まで感じたことのない熱量です!」
とか言いながらやつは笑顔で復活したわけだが。
「こ、この男……我の本気のブレスを笑顔で受け止めた……」
暴マーのやつは、目の前の光景に愕然としたようだった。こいつもう、さっきから世界を滅ぼす最強の邪悪としての威厳ゼロだな。
「こいつは不死族だから、神聖属性攻撃以外は効かないんだよ。やるならお前の、少しばかり使えるとかいう神聖魔法をお見舞いしてやれよ」
さすがに面子丸つぶれすぎてかわいそうになってきたので、こっそり暴マーに教えてやった。
「! そうか! 神聖魔法か! ならば食らえ! 神聖波動!」
と、何やら詠唱無しで呪術オタめがけて白い光線をぶっ放した暴マーだった。
弱点の神聖属性魔法攻撃なだけに、呪術オタもさすがに、
「うひゃあ」
と、間抜けな声を出して、体を溶かし……て、すぐに再生しやがった。何事もなかったかのように。
「ああ、今のはちょっと痛かったですね。僕の寿命が五秒ぐらい削れた気がしました」
「五秒て」
ほぼ効いてねえじゃねえかよ! 暴マーさんの渾身の神聖属性魔法攻撃やぞ!
「あ……ああ……。この一瞬だけ攻撃が効いているようで、よく見ると全然効いてない様子は、まさにツァドそのもの……」
暴マーはついには恐怖し始めたようだった。たぶん、ツァドってやつと対峙したときも、こんな感じやったんやなって。
と、そのとき、
「あ、そうだ! ヒューヴ君みたいに僕もマーハティカティさんに攻撃しなくちゃいけないんでした!」
呪術オタは急に自分の仕事を思い出し、
「始原の混沌の、さらに奥深くに潜む悠久の観測者よ! その深淵から、すべての魔力を解き放ち、かの敵を穿て! 始原の観測者!」
と、十八番の呪術を暴マーにぶっぱなし、
「ギャアアアッ! 痛い痛い痛い!」
なんか普通にダメージ与えてるし。
「うわあ。あの伝説の存在のマーハティカティさんに僕の呪術が通用するなんて感動です! ここだけの話、この術は僕も痛いんですよ!」
「し、知るかあ!」
「他の呪術も使ってもいいですか?」
「いいわけあるか!」
「ツァドとかどうですか?」
「そ、それだけはやめろおおおおおっ!」
と、暗黒ビームを食らいながら涙目で必死で訴える暴マーだった。うん、そうね。マジでその術だけはやめよ?
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