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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編

383 錬金術師の城 Part 3

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「ああ、そうでしたね。あなたがたは私を討伐しにはるばるおいででした。実に剣呑な話です」

 ラファディは笑いながら言う。言葉とは裏腹に、まったく俺たちに恐怖を感じてはいないようだった。こいつ、俺たちに倒されたら死ぬってわかってないのか? それとも、倒される心配はないと思っているのか?

 というか、これだけ普通に話せる相手なんだし、倒す必要あるのか? ようはここベルガド封印窟が解放されればいいだけだしなあ。

「なあ、お前さ、どうせずっと引きこもっているだけなんだろうし、ここ以外のところに引っ越さねえか?」

 俺は提案した。そうだ、俺は別にこいつのこと特になんとも思っちゃいねえ。過去にこいつがどんなあくどいことをしたのか知らないし、どうでもいい。こいつがとっととここから出ていけば、俺達には争う理由はなくなるし、俺の目的もすんなり果たせるはず……と、思ったわけだったが、

「おぬし、何をふざけたことを言っておるのじゃ! こんなやつを野に放つ気か!」

 肝心の亀妖精さんはめっちゃ反発しているご様子で。

「いや、三百年以上前に何してようと、もう時効だろ? つか、ここで禁固三百年以上の刑に服してたんだから、もう無罪みたいなもんだろ?」
「おぬしは何も知らんからそのようなことが言えるのじゃ! こやつはかつて、自らの研究のためと称して、一つの国の人間を根絶やしにしたのだぞ!」
「ええぇ……」

 わりとガチの悪党だったでござる。禁固三百年超じゃだいぶ足りなさそうな。

「ベルガド様、根絶やしにしたとはまた人聞きの悪いことを。私はただ、国単位で私の錬金術と死霊交信術ネクロマンシーが行使できるのか、実験したまでですよ。彼らはそのための尊い犠牲になっただけです」

 大量虐殺犯ラファディはしれっと言う。うーん、これがホンモノのサイコパスってやつかあ。

「なるほど、実験のためならしょうがないですね。自らの研究のために犠牲をいとわないラファディさんの精神は素晴らしいです。僕も見習いたいですね」

 と、一方で何から感銘している呪術オタの男がいた。ああ、やっぱこいつ、あっち側の人間なんだ……。

「じゃあ、お前、ここを出たら同じようなことやるつもりか?」
「そうですね。ただの無意味な殺戮は好みませんが、研究のために必要とあれば」
「……だろうなあ」

 こいつやっぱ、ここで討伐しなきゃいけないタイプの悪だわ。真っ黒だわ。

「わかったよ。そういうことなら、俺たちも遠慮なくお前を倒すことにするよ。とっとと本体のいるところまで案内しろよ」

 俺は立ち上がり、ラファディに迫った。

「……もう少しゆっくりお話ししていたかったのですがね、残念です」

 ラファディもやれやれといった感じで立ち上がった。

 そして、そのまま俺たちを本体のいる場所に案内して……は、くれなかった。そこまで親切でもなかったわけだった。

「では、ここからの時間は私の術のすばらしさをお楽しみいただきましょう!」

 と、やつがそう叫ぶや否や、周りに立っているメイドたちの様子が一変した。さっきまではただの美女集団だったのに、いきなりシワシワの老人の姿になったのだ。メイド服のまま。

 しかも、みんな目を赤く光らせ、めちゃくちゃ凶悪な顔つきをしている。

「どうです、素晴らしいでしょう? 魂を入れ替えることで、器の姿や能力も変わるのですよ……このように!」

 と、ラファディは手を大きく振り、メイド服の老人どもに指示を出したようだった。今度はそいつら、いっせいに手からビームを発射してきた!

「のわっ!」

 いきなり集中砲火かよ! 聞いてないんですけど!

 ただ、それらのビームは俺たちのところには届かなかった。

 そう、手が光った瞬間に、やつらはヒューヴのブラストボウで吹っ飛ばされたのだった。全員、いっぺんに、一瞬のうちに。

「……せっかくかわいかったのに、なんで姿を変えちゃうかなあ」

 残されたメイド服の老人の残骸を見ながら、ヒューヴはため息をつく。異常な反射能力と速射を披露しておいて、このセリフである。

「いやあ、せっかく死蝕の幻影タナトスサイトを使う絶好のチャンスだったんですけどね。ヒューヴ君に先を越されてしまいましたねー」

 と、近くで不穏なセリフも聞こえてくる。ヒューヴの射撃のほうが早くて、マジで助かったぜ!

「おお、さすがは伝説のジーグ様。なんと見事な射撃でしょう!」

 そして、ラファディはそんなヒューヴにわざとらしく拍手した。おそらく今のはあいさつがわりの軽いジャブってところか。

「それではみなさん、この城のどこかにいる私を探し出してください.。私の術のすばらしさを目の当たりにしながら」

 そう言うと、ラファディのその体は一瞬で灰になり床に崩れ落ちた。いよいよバトルスタートか。まあ、どこに本体がいるのかわからんが、探すしかないか。
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