313 / 436
3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
312 追跡
しおりを挟む
トレジャーハンター協会を出た後、俺はすぐに近くの建物の屋根の上に飛び乗り、ヒューヴを探した。
すると、かなり遠くの上空にその飛ぶ姿を発見した。すでにその体は砂粒ぐらいの大きさにしか見えなくなっている。ちょっと目を離したすきに離れすぎだろ。逃げ足早すぎかよ。
「おーい、ヒューヴ! 戻ってこーい!」
ダメもとでその場で叫んでみたが、戻ってくる気配は当然なかった。そもそも距離があり過ぎて俺の声が届いているのかもあやしい。
「くそ! 手間かけさせやがって!」
俺は舌打ちし、すぐさま屋根から飛び降り、やつのほうへ走った。全速力で走った! 一瞬でザレの村を出て森に入り、木をなぎ倒し沼を飛び越えながら走った! うおおっ! 今は少しでもやつに近づかないと!
やがて、俺はやつの真下にまで迫った。これ以上はさすがに高さがあるので近づけない。俺はやつと違って空は飛べないのだ。どうする俺……って、こうするしかねえか!
「うおおおっ! 届け、俺の魔球ッ!」
と、叫ぶと同時に近くに落ちていた石をヒューヴに投げつけた。強肩勇者のハイパースローだ!
まあ、当然それは当たらなかったわけだが。俺の狙いは正確で速度も申し分なく、普通に飛ぶ鳥なら余裕で落とせるタマだったが、なんせ相手はあのヒューヴだ。この俺のかつての冒険者仲間だ。たとえ背後からの奇襲だろうと、これだけ離れた場所からの投擲攻撃は当然見切ってかわせるに決まっている。俺と一緒にあの暴マー倒しに行った仲なんだしなあ。
ただ、その投じた一石をよけられることは、俺の想定の範囲内だった。俺の狙いはそこにはなかったからだ。
そう、やつの昔の仲間である俺は知っていた。射撃のプロであるやつには、ある習性があるということを……。
と、直後、ヒューヴのやつは実際にその習性をあらわにした。こっちに向かって、矢で反撃してきたのだ。
俺は当然それを難なくかわしたが、内心はほくそ笑んでいた。やっぱりそうだ。ヒューヴのやつ、「飛び道具で攻撃されたらとりあえず反撃せずにはいられない」という習性は十五年前と何も変わっちゃいねえ!
「はっはっは! バカめ! 今は反撃なんかせずに全力で逃げるときだろうがよお!」
俺は高笑いしながらさらに石をヒューヴに投げ続けた。やはりそれらは回避されたが、投げた石の数だけきっちり反撃の矢が飛んできた。当然、その間、やつは一切移動していない。俺が石を投げている間はその場に足止め(空中だから翼止め?)されている状態だ。
まあ、俺も当たらない石を投げているだけではまるであいつに近づけないわけなんだが……が! 大丈夫、俺は一人じゃない。ザレの村に置いてきた頼もしい仲間たちがいる。俺がヒューヴを足止めしているうちに、あいつらがここに駆けつけてきて、この状況をなんとかしてくれるだろう? ……だろう? 信じてるからな! 頼んだぞ、俺の仲間たちぃ!
と、そんな他力本願な感じで、ひたすら石を投げ続け、反撃の矢をよけ続けていると、やがて、
「トモキ、それではやつは落とせないだろう」
と、ヤギが俺のもとに駆け寄ってきた。うおおっ、本当に俺の仲間キター! しかも一番使えそうなやつ! やったあっ!
「いやだって、あいつ上にいるし、石投げるぐらいしかできねえだろ」
まあ、ただ足止めしてただけなんですけどね。こっちの攻撃少しも当たらんし。
「だったら、俺が魔法でお前を上に届けよう」
「おおっ!」
ありがてえ! 痒い所に手が届く、これぞまさに俺の仲間!
「じゃあ、頼む! お前の超魔法で俺をバシっと上に飛ばしてくれ!」
「ああ」
と、直後、ヤギは何か魔法を詠唱したようだった。とたんに俺の履いている靴が青白く光った。
「お前の靴に空中歩行の魔法をかけておいた」
「空中歩行? このまま歩いて上空にのぼれるのか?」
「ああ。ただ、これはあくまで急場しのぎだ。効果はあまり期待するな」
「いや、空中を歩けるだけでも大助かりだぜ。サンキュー!」
俺は近くに落ちていた石を数個素早く拾ってポケットに入れると、そのまま足を上にあげ、空中を駆け上がった! 真上に! 一気に! ヒューヴのいるところに向かって!
すると、かなり遠くの上空にその飛ぶ姿を発見した。すでにその体は砂粒ぐらいの大きさにしか見えなくなっている。ちょっと目を離したすきに離れすぎだろ。逃げ足早すぎかよ。
「おーい、ヒューヴ! 戻ってこーい!」
ダメもとでその場で叫んでみたが、戻ってくる気配は当然なかった。そもそも距離があり過ぎて俺の声が届いているのかもあやしい。
「くそ! 手間かけさせやがって!」
俺は舌打ちし、すぐさま屋根から飛び降り、やつのほうへ走った。全速力で走った! 一瞬でザレの村を出て森に入り、木をなぎ倒し沼を飛び越えながら走った! うおおっ! 今は少しでもやつに近づかないと!
やがて、俺はやつの真下にまで迫った。これ以上はさすがに高さがあるので近づけない。俺はやつと違って空は飛べないのだ。どうする俺……って、こうするしかねえか!
「うおおおっ! 届け、俺の魔球ッ!」
と、叫ぶと同時に近くに落ちていた石をヒューヴに投げつけた。強肩勇者のハイパースローだ!
まあ、当然それは当たらなかったわけだが。俺の狙いは正確で速度も申し分なく、普通に飛ぶ鳥なら余裕で落とせるタマだったが、なんせ相手はあのヒューヴだ。この俺のかつての冒険者仲間だ。たとえ背後からの奇襲だろうと、これだけ離れた場所からの投擲攻撃は当然見切ってかわせるに決まっている。俺と一緒にあの暴マー倒しに行った仲なんだしなあ。
ただ、その投じた一石をよけられることは、俺の想定の範囲内だった。俺の狙いはそこにはなかったからだ。
そう、やつの昔の仲間である俺は知っていた。射撃のプロであるやつには、ある習性があるということを……。
と、直後、ヒューヴのやつは実際にその習性をあらわにした。こっちに向かって、矢で反撃してきたのだ。
俺は当然それを難なくかわしたが、内心はほくそ笑んでいた。やっぱりそうだ。ヒューヴのやつ、「飛び道具で攻撃されたらとりあえず反撃せずにはいられない」という習性は十五年前と何も変わっちゃいねえ!
「はっはっは! バカめ! 今は反撃なんかせずに全力で逃げるときだろうがよお!」
俺は高笑いしながらさらに石をヒューヴに投げ続けた。やはりそれらは回避されたが、投げた石の数だけきっちり反撃の矢が飛んできた。当然、その間、やつは一切移動していない。俺が石を投げている間はその場に足止め(空中だから翼止め?)されている状態だ。
まあ、俺も当たらない石を投げているだけではまるであいつに近づけないわけなんだが……が! 大丈夫、俺は一人じゃない。ザレの村に置いてきた頼もしい仲間たちがいる。俺がヒューヴを足止めしているうちに、あいつらがここに駆けつけてきて、この状況をなんとかしてくれるだろう? ……だろう? 信じてるからな! 頼んだぞ、俺の仲間たちぃ!
と、そんな他力本願な感じで、ひたすら石を投げ続け、反撃の矢をよけ続けていると、やがて、
「トモキ、それではやつは落とせないだろう」
と、ヤギが俺のもとに駆け寄ってきた。うおおっ、本当に俺の仲間キター! しかも一番使えそうなやつ! やったあっ!
「いやだって、あいつ上にいるし、石投げるぐらいしかできねえだろ」
まあ、ただ足止めしてただけなんですけどね。こっちの攻撃少しも当たらんし。
「だったら、俺が魔法でお前を上に届けよう」
「おおっ!」
ありがてえ! 痒い所に手が届く、これぞまさに俺の仲間!
「じゃあ、頼む! お前の超魔法で俺をバシっと上に飛ばしてくれ!」
「ああ」
と、直後、ヤギは何か魔法を詠唱したようだった。とたんに俺の履いている靴が青白く光った。
「お前の靴に空中歩行の魔法をかけておいた」
「空中歩行? このまま歩いて上空にのぼれるのか?」
「ああ。ただ、これはあくまで急場しのぎだ。効果はあまり期待するな」
「いや、空中を歩けるだけでも大助かりだぜ。サンキュー!」
俺は近くに落ちていた石を数個素早く拾ってポケットに入れると、そのまま足を上にあげ、空中を駆け上がった! 真上に! 一気に! ヒューヴのいるところに向かって!
0
お気に入りに追加
211
あなたにおすすめの小説
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~
桜井正宗
ファンタジー
Cランクの平凡な錬金術師・カイリは、宮廷錬金術師に憧れていた。
技術を磨くために大手ギルドに所属。
半年経つとギルドマスターから追放を言い渡された。
理由は、ポーションがまずくて回復力がないからだった。
孤独になったカイリは絶望の中で三毛猫・ヴァルハラと出会う。人語を話す不思議な猫だった。力を与えられ闇の錬金術師に生まれ変わった。
全種類のポーションが製造可能になってしまったのだ。
その力を活かしてお店を開くと、最高のポーションだと国中に広まった。ポーションは飛ぶように売れ、いつの間にかお金持ちに……!
その噂を聞きつけた元ギルドも、もう一度やり直さないかとやって来るが――もう遅かった。
カイリは様々なポーションを製造して成り上がっていくのだった。
三毛猫と共に人生の勝ち組へ...!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる