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2章 ドノヴォン国立学院編

193 暗黒未来予想図

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「ご安心ください。この術で見える未来とは、あくまで予測です。予知ではありません」

 と、またしても自分から術のネタバラシをする呪術オタだった。おお、ありがてえ。

「せんせー、予測ってどういうことですかー?」
「いい質問ですね、トモキ君! 実はこの未来解析眼球ラプラスゴーストは、君の今までの動きのを解析し、これからの行動パターンを予測するものなのですよ」
「はーん? 解析して予測ね……」

 ようは天気予報みたいなもんか。未来を見るとか言われて一瞬びびったが、あんまたいしたことなさそうだな。

「解析に使われるデータは、僕が今まで見聞きした君に関するすべての情報です。単に戦闘の様子だけではなく、普段の君の言動や、人間関係、DIYに対する間違った執着など、あらゆるデータが参照されます」
「DIYもか」

 その情報いる?

「……まあ、この術のすばらしさは、実際にその目で、いやその体で確かめてもらったほうが、早いでしょう」

 と、やつは再びこっちに始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスを使ってきた。瞬時に、俺の足元に、瞳のレリーフが浮かび上がる――が、当然俺は、その一瞬ですでに右に飛んでいて、回避余裕だった。もうこの術は俺に効かないのだ、はは。

 だが、右の床に着地した直後、俺は足元からいきなり始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスのレーザーの直撃を受けた!

「いだだだたっ!」

 また瞬時にその場から離れたが、意味がわからなかった。最初の攻撃を俺が避けることを予想していたとしても、俺が避ける方向まではわからないはずだろう。それなのに、今の二回目の攻撃は、まるでそれを見抜いていたかのような……?

「もしかして、今の二発目は、未来解析眼球ラプラスゴーストとやらを使って当てたのか?」
「ええ、そうですよ。この眼球には、君がどの方向に動くのか、あらかじめ見えていましたからね」

 リュクサンドールの頭のすぐ近くで、その眼球は不気味に光っている。まるでカメラのように。

「ちっ、ばかばかしい。んなもん、マグレに決まってんだろ!」
「そう思われるのでしたら、もっと使ってみましょうか」

 と、やつはさらにこっちに始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスを使ってきた。俺のよける方向がお見通し? 天気予報みたいなもんなのに、んなバカな話があるかよ、と、俺は今度は前に飛んでよけた。

 しかし結果はさっきとまったく同じだった。前に飛んだところで、その足元からまた始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスのレーザーが飛んできて、俺の体をぶち抜きやがった! 痛い痛い痛い!

「ふ、ふざけんな、てめえ! たかが予測のくせに、二回も当ててんじゃねー!」

 と、怒鳴ったが、上空の男はもう俺の声なんて聞いちゃいなかった。そのまま次々と、俺に始原の観測者アビスゲイザー・ケイオスを放って来た。

 俺は当然、それをよけるしかないわけだが……だが? よけても当たるんだな、これが、ははは……って、笑ってる場合じゃない! 実際食らってみてわかったんだが、こいつのこの暗黒レーザー攻撃の威力、わりとシャレにならない感じなんだが? 食らうたびに俺のヒットポイントがガリガリ削られている感じなんだが? 俺の超分厚い魔法防御力の上から殴りつけてくる、圧倒的な火力なんだが? こうやって考えている間にも、何発も食らいまくりなんだが?

 というか、仮にこの攻撃をよけられたとしても、俺には何の反撃の手段もないような。あいつには俺の攻撃が一切通用しないし。不死族だし神聖属性の攻撃ならダメージを与えられるんだろうけど、俺、そんな攻撃手段もってないし。ポエムと偽って、神聖魔法の詠唱をさせたぐらいしか、神聖属性の攻撃できんかったし……それもすぐ復活されたし……。

 もしかして俺、このまま負けてしまうのか? というか、負けちゃっていいのか? 殺されちゃっていいのか? だって、これは俺に対する処刑のはずだし、俺は処刑されるべき大罪人だったはずだし、そもそも俺には転生という希望があったし? そうそう、ここで死んだあと、俺、イケメンの魔王に転生する予定だったんだよね。あ、そうか! 俺もうがんばらなくてもいいんだ、なーんだ! がんばって損した、ははは!

「って、んなわけあるかっ!」

 と、一瞬ハイパー弱気になってしまった自分に、セルフツッコミせざるを得なかった。なにが転生だ! 俺は最強無敗の勇者様だぞ! 圧倒的に相性不利だろうと、こんな男同士のタイマン勝負で負けていいわけないのだ! うおおおお、がんばれ、俺ぇ!

 と、ボロボロになりながらも自分に喝を入れていると、

『うぷぷー、トモキ君、先生にやられっぱなし。超かっこわるー』

 女帝様の声が聞こえてきた。うぜええ!

「うっせーな! こんなのは演出だよ! こっから華麗に反撃する俺の姿を見とけや!」
『えー、でも、トモキ君の攻撃、全然先生に通用してないよー』
「そ、それはそのう……」
『やっぱ、このまま殺されちゃうのがオチだね、トモキ君。で、ユリィちゃんも、その後、すぐに死んじゃう』
「え」

 ユリィが何? いきなり何言ってんの、このロリババア。

「ユリィは関係ないだろ?」
『えー、だって、ファニファ、ユリィちゃんにお願いされたもん。トモキ君が処刑されたら、自分も殺してくださいって』
「なん……だと……」

 衝撃的すぎる話だ! ユリィがそんなことを言ってたなんて……。

『まあ、ファニファはもちろん、そのお願いは断ったんだけど、ユリィちゃんのあの感じだと、トモキ君が処刑された後に、一人で死んじゃうんじゃないかなー』
「あいつが自殺? そんなバカなことあるかよ!」
『ファニファに言われてもわかんなーい。自殺するかどうかは、ユリィちゃん次第だもん』
「う……」

 確かにそうだ。今はこいつに何を言っても、ユリィには届かない。

 ただ、今ので一つ、はっきりとわかったことがある。俺はやはり、この戦い、絶対に負けられないってことが。そう、俺が負けたらあいつも死んでしまうんだからな!

「そっか。ユリィのこと、わざわざ教えてくれて、ありがとな女帝様。おかげで目が覚めたぜ!」

 そうだ、絶対に俺はあの男を倒す! 勝つ! 何としても! どうやってか、わからんけども!
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