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2章 ドノヴォン国立学院編
178 女帝様との面会
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エリーのやつ、どういうつもりで、俺にあんなことを言ったんだろう?
面会室を出て、警察署内の留置場の檻の中に戻った後、俺は考えずにはいられなかった。さっきのエリーの口ぶりは、まるで俺が脱獄することが不可能とでも言っているようだった。
もしかして、最近の警察関連施設や備品は、めちゃくちゃガードが固くなってるのか? 俺はふと疑問に思い、手首にはめられていた十個の手錠にちょっと力を入れてみた。ばきっ! それはすぐにぶっ壊れた。うーん? 手錠の強度は別にたいしたことはなさそうだ……。一応、凶暴なハリセン仮面様向けに用意されたものらしいんだけど。
「お、おい、お前! 何をしている!」
俺が手錠をぶっ壊した音を聞いたのだろう、見張りの警察官が俺の檻のほうにすっ飛んできた。
「いやー、なんかちょっと体ひねったら、壊れちゃって」
「何を言っている! その手錠は強化魔法で特に強度を高めたものだぞ! それを十個も一度に壊すことなど不可能――」
「いやでも、壊れたし?」
「そ、そのよう、だな……」
警官は俺の足元に転がっている壊れた手錠を見て、気まずそうに目を泳がせた。
やがて、俺はその警官に再び手錠をはめられた。同じ手錠を今度はニ十個! 倍だ!
「さすがにお前も、これだけの数の手錠は破れまい――」
「え、そうですか?」
ばきっ! 試しに腕に少し力を入れたら、ニ十個の手錠はすぐにぶっ壊れた。今度は警官の目の前で。
「まだ足りないみたいですけど、追加しますか?」
「え、いや、そのう……」
警官はそんな俺の行動に、ひたすらおろおろした様子だったが、やがて、
「と、とりあえず、これでおとなしくしてろ!」
自分の懐から、おそらくは特に強化されてない普通の手錠を出し、俺の手首にはめて去って行った。なんかもう、俺に関わるのがめんどくさくなったようだった。
「やっぱ脱獄は簡単だよな?」
警官が去った後、今度は目の前の檻に手をかけ引っ張ってみたが、すぐに出られそうな大きさに隙間が広がった。また警官に見つかるとめんどくさいから元に戻したが、やはり俺にとっては脱獄はヌルゲーのようだ。エリーはなんであんなことを言ったんだろう?
それに、俺はもう一つ気になることがあった。どうして面会に来たのはエリーだけなんだろう? そう、あんな思わせぶりな手紙を書いたんだから、まずユリィが来るべきじゃないか。というか、エリーが来るなら一緒についてきてもよかったんじゃないか? あいつ、なんで俺に会いに来てくれないんだろう? 俺、もしかしてハリセン仮面だってバレたから嫌われちゃったのか? そ、そんなことって……。
と、檻の中でひたすら鬱になっていると、やがてラックマン刑事が俺のところにやってきた。また面会らしい。
「おおおっ!」
ユリィだ! やっと俺に会いに来てくれたんだ、わあい!
すぐにラックマン刑事と一緒に留置場を出て、面会室に行った。ユリィ、待ってろよ!
しかし、面会室で俺を待っていたのは、ユリィではなかった……。
「ごきげんよう、トモキ・ニノミヤ。相変わらずお元気そうですね」
と、アクリル板の向こうから俺に声をかけてきたのは、誰であろう、ロリババア女帝様だった! 今はドノヴォン国立学院の制服ではなく、きらびやかなドレスの上に緋色のコートを羽織っており、顔は濃いベールに覆われてはっきりとは見えない。しかしこの声は間違いなくあのクソロリババアのものだ。また、その背後には近衛兵が三人立っていた。こいつらは警備のSPたちか。
「なんだよ、お前? またうぷぷーとか言って、俺のこと笑いにでも来たのかよ?」
「あら、わたくし相手に、ずいぶん不遜で身の程を知らない口の利き方をされるのですね。さすが、世を騒がせた大罪人ですこと」
女帝様はベールの下で、俺をあざ笑ったようだった。その笑い方、口調、ともに俺が知っているラティーナとは別人のようだ。おそらくこれが女帝としての表向きの顔なんだろう。
「は! どうせ死刑確定してるのに、いまさら女帝様相手にどんな態度とれって言うんだよ? 敬語なんかいらねーだろうがよ」
「そうでもないのですよ? あなたへの今後の処罰を決定するのは、ほかならぬこのわたくしなのですから」
「え」
「第一級国家反逆罪は、他の犯罪とは全く扱いが異なるのです。国家、そのものに対する反逆行為なのですからね。昔から、女帝自ら、裁きを下すことになっているのです」
「お前が直接……?」
「ええ。ですから、この場で不遜極まりない態度をとって、わたくしの心象を悪くすることはあまり得策ではないでしょうね」
「は、はい! すんませんした!」
俺はあわてて姿勢を正した。よくわからんが、今はこいつの好感度を上げておいたほうがいいっぽい!
「うふふ。今さら襟を正されても、点数稼ぎなのは見え見えですわね。わたくし、かえってあなたへの印象が悪くなりましたわよ?」
「う」
くそう! 口調が変わっても、中身はやっぱりあのラティーナじゃねえか! 俺をおちょくりやがって!
「も、もういい! お前は要するに、これから自ら死刑にする俺を煽りに来ただけなんだろ! ねえ、今どんな気持ち?みたいな。用が済んだらとっとと帰りやがれ!」
「いえ、実はわたくし、あなたにどうしてもお伝えしないことがありましてよ」
「なんだよ、それ?」
「あなたのお友達、確か、ユリィさんとおっしゃったかしら」
「え」
「わたくし、あなたへの裁きを確実に実行するために、彼女に協力していただくことにしましたの」
「な、なんの話だよ! あいつは俺とは関係ない――」
「まあ、わかりやすく言うと、人質に取らせていただいた、ということでしょうか」
その瞬間、ベールの奥のエメラルド色の瞳が鋭く光るのが見えた。
面会室を出て、警察署内の留置場の檻の中に戻った後、俺は考えずにはいられなかった。さっきのエリーの口ぶりは、まるで俺が脱獄することが不可能とでも言っているようだった。
もしかして、最近の警察関連施設や備品は、めちゃくちゃガードが固くなってるのか? 俺はふと疑問に思い、手首にはめられていた十個の手錠にちょっと力を入れてみた。ばきっ! それはすぐにぶっ壊れた。うーん? 手錠の強度は別にたいしたことはなさそうだ……。一応、凶暴なハリセン仮面様向けに用意されたものらしいんだけど。
「お、おい、お前! 何をしている!」
俺が手錠をぶっ壊した音を聞いたのだろう、見張りの警察官が俺の檻のほうにすっ飛んできた。
「いやー、なんかちょっと体ひねったら、壊れちゃって」
「何を言っている! その手錠は強化魔法で特に強度を高めたものだぞ! それを十個も一度に壊すことなど不可能――」
「いやでも、壊れたし?」
「そ、そのよう、だな……」
警官は俺の足元に転がっている壊れた手錠を見て、気まずそうに目を泳がせた。
やがて、俺はその警官に再び手錠をはめられた。同じ手錠を今度はニ十個! 倍だ!
「さすがにお前も、これだけの数の手錠は破れまい――」
「え、そうですか?」
ばきっ! 試しに腕に少し力を入れたら、ニ十個の手錠はすぐにぶっ壊れた。今度は警官の目の前で。
「まだ足りないみたいですけど、追加しますか?」
「え、いや、そのう……」
警官はそんな俺の行動に、ひたすらおろおろした様子だったが、やがて、
「と、とりあえず、これでおとなしくしてろ!」
自分の懐から、おそらくは特に強化されてない普通の手錠を出し、俺の手首にはめて去って行った。なんかもう、俺に関わるのがめんどくさくなったようだった。
「やっぱ脱獄は簡単だよな?」
警官が去った後、今度は目の前の檻に手をかけ引っ張ってみたが、すぐに出られそうな大きさに隙間が広がった。また警官に見つかるとめんどくさいから元に戻したが、やはり俺にとっては脱獄はヌルゲーのようだ。エリーはなんであんなことを言ったんだろう?
それに、俺はもう一つ気になることがあった。どうして面会に来たのはエリーだけなんだろう? そう、あんな思わせぶりな手紙を書いたんだから、まずユリィが来るべきじゃないか。というか、エリーが来るなら一緒についてきてもよかったんじゃないか? あいつ、なんで俺に会いに来てくれないんだろう? 俺、もしかしてハリセン仮面だってバレたから嫌われちゃったのか? そ、そんなことって……。
と、檻の中でひたすら鬱になっていると、やがてラックマン刑事が俺のところにやってきた。また面会らしい。
「おおおっ!」
ユリィだ! やっと俺に会いに来てくれたんだ、わあい!
すぐにラックマン刑事と一緒に留置場を出て、面会室に行った。ユリィ、待ってろよ!
しかし、面会室で俺を待っていたのは、ユリィではなかった……。
「ごきげんよう、トモキ・ニノミヤ。相変わらずお元気そうですね」
と、アクリル板の向こうから俺に声をかけてきたのは、誰であろう、ロリババア女帝様だった! 今はドノヴォン国立学院の制服ではなく、きらびやかなドレスの上に緋色のコートを羽織っており、顔は濃いベールに覆われてはっきりとは見えない。しかしこの声は間違いなくあのクソロリババアのものだ。また、その背後には近衛兵が三人立っていた。こいつらは警備のSPたちか。
「なんだよ、お前? またうぷぷーとか言って、俺のこと笑いにでも来たのかよ?」
「あら、わたくし相手に、ずいぶん不遜で身の程を知らない口の利き方をされるのですね。さすが、世を騒がせた大罪人ですこと」
女帝様はベールの下で、俺をあざ笑ったようだった。その笑い方、口調、ともに俺が知っているラティーナとは別人のようだ。おそらくこれが女帝としての表向きの顔なんだろう。
「は! どうせ死刑確定してるのに、いまさら女帝様相手にどんな態度とれって言うんだよ? 敬語なんかいらねーだろうがよ」
「そうでもないのですよ? あなたへの今後の処罰を決定するのは、ほかならぬこのわたくしなのですから」
「え」
「第一級国家反逆罪は、他の犯罪とは全く扱いが異なるのです。国家、そのものに対する反逆行為なのですからね。昔から、女帝自ら、裁きを下すことになっているのです」
「お前が直接……?」
「ええ。ですから、この場で不遜極まりない態度をとって、わたくしの心象を悪くすることはあまり得策ではないでしょうね」
「は、はい! すんませんした!」
俺はあわてて姿勢を正した。よくわからんが、今はこいつの好感度を上げておいたほうがいいっぽい!
「うふふ。今さら襟を正されても、点数稼ぎなのは見え見えですわね。わたくし、かえってあなたへの印象が悪くなりましたわよ?」
「う」
くそう! 口調が変わっても、中身はやっぱりあのラティーナじゃねえか! 俺をおちょくりやがって!
「も、もういい! お前は要するに、これから自ら死刑にする俺を煽りに来ただけなんだろ! ねえ、今どんな気持ち?みたいな。用が済んだらとっとと帰りやがれ!」
「いえ、実はわたくし、あなたにどうしてもお伝えしないことがありましてよ」
「なんだよ、それ?」
「あなたのお友達、確か、ユリィさんとおっしゃったかしら」
「え」
「わたくし、あなたへの裁きを確実に実行するために、彼女に協力していただくことにしましたの」
「な、なんの話だよ! あいつは俺とは関係ない――」
「まあ、わかりやすく言うと、人質に取らせていただいた、ということでしょうか」
その瞬間、ベールの奥のエメラルド色の瞳が鋭く光るのが見えた。
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