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2章 ドノヴォン国立学院編
146 ダンピール・プリンスやっぱりすぐ死ぬ
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べちゃっ!
結論から言うと、俺が飛び道具として投げたそのブツは、攻撃力ゼロのゴミだった。それが当たったのはちょうど近くにいたダイヤモンドガーゴイルの頭だったが、当たると同時にぐちゃっとつぶれて、ダイヤモンドガーゴイルの頭に血の痕をつけて下に落ちただけだった。ダイヤモンドより硬い体を持つということからその名がついたダイヤモンドガーゴイルには当然ノーダメだ。さらに、下に落ちたと同時に近くのモンスターたちに踏みつぶされ、そのブツはますますぐちゃぐちゃになったようだった。
「予想はしてたが……こうも使えないとは……」
ロイヤル要素どこだよ、この男。これじゃ、あっちで戦っている普通の人間以下じゃねえか。とりあえず、その肉塊を生産したモンスターたちを拳で撲殺した。もう何やってもハリセン仮面様呼ばわりされちゃうから、普通に殴って。
「いきなり何するんですか、トモキ君! 痛いじゃないですか!」
俺が近くのモンスターを片付けたときには、すでにリュクサンドールは肉の塊から元の形に戻っていた。相変わらず復活だけは異常に早いな。
「いやあ、さすがです、先生。身を粉にして俺たち生徒を守ってくれるなんて、教師のカガミですね」
「身を粉にしてどころか、身をミンチにされちゃったじゃないですか……」
と言いながらも、普通に立ち上がるリュクサンドールだった。教師の制服もついでに元通りになっている。こっちも何気に修復能力ぱねえな。
「前にも言ったでしょう。僕は戦うのが得意じゃないんですよ。特に、こんな太陽がさんさんと輝いているような時間は……う」
と、そこで、日向から素早く近くのモンスターの死体の陰に隠れる男だった。日光を浴びてもいきなり灰になるとかじゃなさそうだが、苦手には違いないらしい。
「じゃあ、今の先生って何なんですか? ロイヤルクラスのレジェンド・モンスターのくせに、ただの役立たずなんですかー?」
「いや、呪術が使えれば僕だってそれなりに戦えるはずなんですよ。昼でも、死蝕の幻影ぐらいなら、少々お時間をいただければご用意できますし――」
「って、何ハイパー物騒な術使おうとしてるんだよ!」
それ、使ったらこの場にいるみんな死んじゃうやつじゃん! それをてめえ、ちょっと手のかかる料亭の料理みたいに言いやがって。
「まあ、さすがに禁術は使っちゃダメですよね。向こうに刑事さんいますし。それに実は、僕、今度内緒で呪術使ったのバレたら、陛下の神聖魔法で塵一つ残らず浄化されてしまうんですよ。三度目の反省文書いて提出したときに、そうきつく叱られましてね……」
万引きをとがめられた小学生みたいな口調で、また言ってることがおかしい男だ。
「じゃあ、やっぱり今の先生ってただの役立たずのがっかりレジェンド・モンスターなんですね。あー、もう、俺マジ幻滅ですよー」
今更幻滅もクソもないが、あまりにも情けないので煽ってみた。
すると、
「そ、そんなことはないですよ! 昼間でも、僕はそこらの人よりよっぽど魔力があるはずですし、禁術以外の魔法でも戦えるはずなんですよ!」
何かやる気スイッチが入ったようだった。再び日向に飛び出してきた。何か懐から取り出しながら。見るとそれは、分厚い手帳のようだった。もしかして、廃村でゴブリン相手に使おうとしていたカンペか?
「万が一学院に凶悪なテロリストがやってきたとき用に、僕なりに使えそうな属性魔法の召喚術式をメモしておいたんです! 今こそ使うときです!」
と、かつてないほど気合の入った顔つきで叫ぶと、手帳をぱらぱらめくりはじめた。なんだか知らんが、これは期待していいのか? とりあえず邪魔にならないよう、ちょっと離れてその様子を見守った。
召喚魔法の詠唱はすぐに始まった……。
「バター50g……タマゴ一個……砂糖40g……薄力粉50g……ふくらし粉小さじ1/4――」
ん? 召喚魔法の詠唱か、これ?
「ああっ! しまった! 僕としたことが、間違えてメモしておいたマドレーヌのレシピ(※)を読み上げてしまいました!」
うん、期待した俺がバカだった。やっぱこいつ、ただのポンコツじゃねえか。
だが、そのとき、突然リュクサンドールの目の前の足元に魔法陣が現れ、強い光を放ちはじめた!
「やった! 何か召喚できたようですよ!」
え、今ので? おかしくない? こいつ、マドレーヌのレシピ読んだだけじゃん……と、見ると、確かに魔法陣の中から何かがにゅるっと出てくるところだった。アーモンドみたいな形の茶色い物体で、表面がギザギザに波打っている――って、うん、これマドレーヌだね。まあそうだよね。マドレーヌのレシピ読んだんだからね、出てくるのコレだよね……。
ただ、それはマドレーヌにしてはだいぶ大きく、大人が両手を広げたぐらいの大きさがあり、マドレーヌにしては鋭い牙の生えた口のようなものがあり、マドレーヌにしては禍々しく赤く光る瞳がついていた。
「うわあ、マドレーヌのモンスターですね! これは強そうです! さあ、僕のマドレーヌ君、目の前のモンスターを思いっきり攻撃してください!」
リュクサンドールはウキウキで自らが召喚したマドレーヌの怪物に指示した。
直後、マドレーヌの怪物は思いっきり口を開け、リュクサンドールに食いついた!
「わあああっ!」
まあ、やつ自身が「目の前のモンスター」って指示したんだから、それであってるよな……。マドレーヌの怪物の食いつきは思いのほか狂暴で、あっというまにリュクサンドールの体は飲み込まれ、ぐちゃくちゃに咀嚼されてしまったようだった。
やがて、
「まず……」
と、つぶやいて、マドレーヌの怪物は口から何か肉の塊のようなものを吐き出した。そして、消えてしまった……。
「こいつ、本当にロイヤルクラスのレジェンド・モンスターなのか?」
とりあえず、その醜態は見なかったことにして、俺は周りに残っていたモンスターたちを素手で片付けた。
(※マドレーヌのレシピを参考にしたサイト
https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/706589/
なお、この世界は地球ではないので、重さの単位である「g」はグラムと読まず、ガラムと読むのです。地球で使っている単位とは違うのです! 1ガラムは1グラムと同じ重さです。偶然にも同じ重さなんですねー)
結論から言うと、俺が飛び道具として投げたそのブツは、攻撃力ゼロのゴミだった。それが当たったのはちょうど近くにいたダイヤモンドガーゴイルの頭だったが、当たると同時にぐちゃっとつぶれて、ダイヤモンドガーゴイルの頭に血の痕をつけて下に落ちただけだった。ダイヤモンドより硬い体を持つということからその名がついたダイヤモンドガーゴイルには当然ノーダメだ。さらに、下に落ちたと同時に近くのモンスターたちに踏みつぶされ、そのブツはますますぐちゃぐちゃになったようだった。
「予想はしてたが……こうも使えないとは……」
ロイヤル要素どこだよ、この男。これじゃ、あっちで戦っている普通の人間以下じゃねえか。とりあえず、その肉塊を生産したモンスターたちを拳で撲殺した。もう何やってもハリセン仮面様呼ばわりされちゃうから、普通に殴って。
「いきなり何するんですか、トモキ君! 痛いじゃないですか!」
俺が近くのモンスターを片付けたときには、すでにリュクサンドールは肉の塊から元の形に戻っていた。相変わらず復活だけは異常に早いな。
「いやあ、さすがです、先生。身を粉にして俺たち生徒を守ってくれるなんて、教師のカガミですね」
「身を粉にしてどころか、身をミンチにされちゃったじゃないですか……」
と言いながらも、普通に立ち上がるリュクサンドールだった。教師の制服もついでに元通りになっている。こっちも何気に修復能力ぱねえな。
「前にも言ったでしょう。僕は戦うのが得意じゃないんですよ。特に、こんな太陽がさんさんと輝いているような時間は……う」
と、そこで、日向から素早く近くのモンスターの死体の陰に隠れる男だった。日光を浴びてもいきなり灰になるとかじゃなさそうだが、苦手には違いないらしい。
「じゃあ、今の先生って何なんですか? ロイヤルクラスのレジェンド・モンスターのくせに、ただの役立たずなんですかー?」
「いや、呪術が使えれば僕だってそれなりに戦えるはずなんですよ。昼でも、死蝕の幻影ぐらいなら、少々お時間をいただければご用意できますし――」
「って、何ハイパー物騒な術使おうとしてるんだよ!」
それ、使ったらこの場にいるみんな死んじゃうやつじゃん! それをてめえ、ちょっと手のかかる料亭の料理みたいに言いやがって。
「まあ、さすがに禁術は使っちゃダメですよね。向こうに刑事さんいますし。それに実は、僕、今度内緒で呪術使ったのバレたら、陛下の神聖魔法で塵一つ残らず浄化されてしまうんですよ。三度目の反省文書いて提出したときに、そうきつく叱られましてね……」
万引きをとがめられた小学生みたいな口調で、また言ってることがおかしい男だ。
「じゃあ、やっぱり今の先生ってただの役立たずのがっかりレジェンド・モンスターなんですね。あー、もう、俺マジ幻滅ですよー」
今更幻滅もクソもないが、あまりにも情けないので煽ってみた。
すると、
「そ、そんなことはないですよ! 昼間でも、僕はそこらの人よりよっぽど魔力があるはずですし、禁術以外の魔法でも戦えるはずなんですよ!」
何かやる気スイッチが入ったようだった。再び日向に飛び出してきた。何か懐から取り出しながら。見るとそれは、分厚い手帳のようだった。もしかして、廃村でゴブリン相手に使おうとしていたカンペか?
「万が一学院に凶悪なテロリストがやってきたとき用に、僕なりに使えそうな属性魔法の召喚術式をメモしておいたんです! 今こそ使うときです!」
と、かつてないほど気合の入った顔つきで叫ぶと、手帳をぱらぱらめくりはじめた。なんだか知らんが、これは期待していいのか? とりあえず邪魔にならないよう、ちょっと離れてその様子を見守った。
召喚魔法の詠唱はすぐに始まった……。
「バター50g……タマゴ一個……砂糖40g……薄力粉50g……ふくらし粉小さじ1/4――」
ん? 召喚魔法の詠唱か、これ?
「ああっ! しまった! 僕としたことが、間違えてメモしておいたマドレーヌのレシピ(※)を読み上げてしまいました!」
うん、期待した俺がバカだった。やっぱこいつ、ただのポンコツじゃねえか。
だが、そのとき、突然リュクサンドールの目の前の足元に魔法陣が現れ、強い光を放ちはじめた!
「やった! 何か召喚できたようですよ!」
え、今ので? おかしくない? こいつ、マドレーヌのレシピ読んだだけじゃん……と、見ると、確かに魔法陣の中から何かがにゅるっと出てくるところだった。アーモンドみたいな形の茶色い物体で、表面がギザギザに波打っている――って、うん、これマドレーヌだね。まあそうだよね。マドレーヌのレシピ読んだんだからね、出てくるのコレだよね……。
ただ、それはマドレーヌにしてはだいぶ大きく、大人が両手を広げたぐらいの大きさがあり、マドレーヌにしては鋭い牙の生えた口のようなものがあり、マドレーヌにしては禍々しく赤く光る瞳がついていた。
「うわあ、マドレーヌのモンスターですね! これは強そうです! さあ、僕のマドレーヌ君、目の前のモンスターを思いっきり攻撃してください!」
リュクサンドールはウキウキで自らが召喚したマドレーヌの怪物に指示した。
直後、マドレーヌの怪物は思いっきり口を開け、リュクサンドールに食いついた!
「わあああっ!」
まあ、やつ自身が「目の前のモンスター」って指示したんだから、それであってるよな……。マドレーヌの怪物の食いつきは思いのほか狂暴で、あっというまにリュクサンドールの体は飲み込まれ、ぐちゃくちゃに咀嚼されてしまったようだった。
やがて、
「まず……」
と、つぶやいて、マドレーヌの怪物は口から何か肉の塊のようなものを吐き出した。そして、消えてしまった……。
「こいつ、本当にロイヤルクラスのレジェンド・モンスターなのか?」
とりあえず、その醜態は見なかったことにして、俺は周りに残っていたモンスターたちを素手で片付けた。
(※マドレーヌのレシピを参考にしたサイト
https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/706589/
なお、この世界は地球ではないので、重さの単位である「g」はグラムと読まず、ガラムと読むのです。地球で使っている単位とは違うのです! 1ガラムは1グラムと同じ重さです。偶然にも同じ重さなんですねー)
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