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2章 ドノヴォン国立学院編
145 勇者、敵はワンパンなのになぜか危機的状況
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飛来してきたモンスターたちの中で一番俺の近くにいたのは、小型の氷属性の竜、アイスドレイクだった。すでに高威力のアイスブレスを吐き出そうと、首をもたげ、口に冷気を集めているところだ。ヤバイヤバイ。あれを口から放出されたら、俺はともかく、他のみんなは氷漬けになっちまう! あわてて、その口元に駆け寄り、拳を前に出す――と、その直前、俺ははっとした。このままこいつをグーで殴ったら、また後ろのギャラリー達の俺への誉め言葉が「ハリセン仮面みたい!」になっちゃうじゃないの! あわてて握った拳をパーに変え、それでアイスドレイクの横っ面を思いっきり平手打ちした。ビタァーンッ!と。
俺のハイパー平手打ちを受け、アイスドレイクは勢いよく横に倒れ、体を強く床に打ち付けられた。ドーン!という音とともに、床が割れ、そのインド象くらいの大きさの体が沈んだ。見ると、俺の一撃ですっかり目を回しているようだった。
よし、このままこいつをこの場から消しちゃおう。俺はすぐにその首を両手でつかみ、ハンマー投げの要領で軽く回して、空のかなたにぶん投げた。どうだい、この華麗なるバシルーラ(物理)! 拳で暴れまわるハリセン仮面さんとはあまりに違う戦い方だろう、ギャラリー達ぃ! 少しは俺に対するイメージを改めたまえ、ギャラリー達ぃ!
と、俺なりにハリセン仮面の面影を払拭しようと工夫したわけだったが、
「うわあ、あんなドラゴンを投げちゃうなんて、フィジカル強すぎ、トモキ君!」
「まさにハリセン仮面だね!」
ちくしょう! なんも変わってない! いや、むしろ表現がよりハリセン様に近づいてる! バカなの、君たち! なんで俺に守ってもらっておきながら、俺を凶悪犯罪者みたいに言うの! せめて、もっと違う言葉で褒めなさいよ、勇者アルドレイ様みたいだとかさあ! そっちの身バレならまだマシだからさあ!
くそう……ちょっと変わった戦い方をするだけではダメなのか。もっと大胆なイメチェンが必要だというのか。いったいどうすれば……と、俺はそこで、辺り一面に散らばっている、建物の残骸やら岩の破片やらの存在に気付いた。
そうか、素手で戦うからダメなんだ! 武器がないなら、武器になりそうなものを使えばいいじゃない! すぐにその辺の建材やら岩やらを手に取り、目の前のモンスターたちに投げつけた! そうだ、道具を使って戦えば、俺のイメージはきっとハリセン仮面様から遠のくはず!
もちろん、念には念を入れて、今度は「キャラ」も作る!
「ウホッ! ウホウホウホッ! ウキィー!」
そう、モンスターどもに手あたり次第いろんなものを投げつけながら、サルの物まね! はっきり言ってめちゃくちゃ恥ずかしい。俺、バカみたいじゃん。つか、バカそのものじゃん? しかし、ハリセンという文明の利器を手に文化的に戦ったハリセン仮面氏から俺を切り離すためにはこれしかない! 恥ずかしくても、今は全力でやるっきゃない!
「ウキャキャキャ! キィーッ!(訳 食らえ、俺の必殺投擲アタック!)」
ドコドコッ! 岩とか建材とか、なんでも敵に投げちゃう! もちろん、敵はそれなりに強めのやつらばかりだから、そんなものじゃ致命傷は与えられないが、投げたブツに相手がひるんでいる一瞬に、ギャラリー達からは見えないところに移動し、ダイレクトにボディに蹴りや拳を叩きこみ倒すことはできた。ギャラリー達から見れば、俺はまるで投擲だけで敵を倒している、クソ強いサルに違いない。そう、ハリセン仮面とはまったく違う、荒ぶる獣に見えるに違いない!
と、俺は考えたわけだったんだが……、
「うわあ、トモキ君の戦い方すごく面白-い!」
「っていうか、ハリセン仮面と同じレベルじゃない? いろんな意味で!」
そこで擦り合わせるのかよ! 戦い方の面白さ加減とか!
いやまあ、よく考えたらハリセン仮面氏の戦い方も面白い(笑)以外の何物でもない……。クソッ! またしても俺とハリセン仮面氏の距離が縮まってしまった! 俺はただ敵と戦っているだけだというのに!
と、そこで、
「いやあ、どんな戦い方でも本当に強いですねえ、トモキ君は」
と、ひたすらのん気に言うリュクサンドールの声が聞こえた。
「て、てめえ……」
俺はその声にイラつかずにはいられなかった。他の生徒たちはともかく、この男はなぜこうも最初から傍観者気取ってて、俺に丸投げなの? おかしくない? お前、一応、教師でしょ? 生徒たちを率先して守る立場でしょ? しかも大人でしょ? しかもしかも――レジェンド・モンスターで、ここにいる連中よりはよっぽど格上の存在のはずだろうがよ! なぜそんなお前は何もしないんだ!
「あー、さすがに俺一人だと辛くなってきましたよ、先生ー」
と、俺はそのリュクサンドールのほうに振り返った。
「つよいつよーい、ロイヤルクラスのレジェンド・モンスターの先生の力がないと、俺、負けちゃうかもー?」
そのままツカツカとリュクサンドールに近づき、その制服の胸倉を片手でわしづかみにした。
「見せてくださいよ、先生の本気!」
「え」
「先生ならやれるって、俺信じてますから!」
と、俺は言うと、
「くらえ! ロイヤルアタッーク!」
そのままリュクサンドールをモンスターどもに向かってぶん投げた。
俺のハイパー平手打ちを受け、アイスドレイクは勢いよく横に倒れ、体を強く床に打ち付けられた。ドーン!という音とともに、床が割れ、そのインド象くらいの大きさの体が沈んだ。見ると、俺の一撃ですっかり目を回しているようだった。
よし、このままこいつをこの場から消しちゃおう。俺はすぐにその首を両手でつかみ、ハンマー投げの要領で軽く回して、空のかなたにぶん投げた。どうだい、この華麗なるバシルーラ(物理)! 拳で暴れまわるハリセン仮面さんとはあまりに違う戦い方だろう、ギャラリー達ぃ! 少しは俺に対するイメージを改めたまえ、ギャラリー達ぃ!
と、俺なりにハリセン仮面の面影を払拭しようと工夫したわけだったが、
「うわあ、あんなドラゴンを投げちゃうなんて、フィジカル強すぎ、トモキ君!」
「まさにハリセン仮面だね!」
ちくしょう! なんも変わってない! いや、むしろ表現がよりハリセン様に近づいてる! バカなの、君たち! なんで俺に守ってもらっておきながら、俺を凶悪犯罪者みたいに言うの! せめて、もっと違う言葉で褒めなさいよ、勇者アルドレイ様みたいだとかさあ! そっちの身バレならまだマシだからさあ!
くそう……ちょっと変わった戦い方をするだけではダメなのか。もっと大胆なイメチェンが必要だというのか。いったいどうすれば……と、俺はそこで、辺り一面に散らばっている、建物の残骸やら岩の破片やらの存在に気付いた。
そうか、素手で戦うからダメなんだ! 武器がないなら、武器になりそうなものを使えばいいじゃない! すぐにその辺の建材やら岩やらを手に取り、目の前のモンスターたちに投げつけた! そうだ、道具を使って戦えば、俺のイメージはきっとハリセン仮面様から遠のくはず!
もちろん、念には念を入れて、今度は「キャラ」も作る!
「ウホッ! ウホウホウホッ! ウキィー!」
そう、モンスターどもに手あたり次第いろんなものを投げつけながら、サルの物まね! はっきり言ってめちゃくちゃ恥ずかしい。俺、バカみたいじゃん。つか、バカそのものじゃん? しかし、ハリセンという文明の利器を手に文化的に戦ったハリセン仮面氏から俺を切り離すためにはこれしかない! 恥ずかしくても、今は全力でやるっきゃない!
「ウキャキャキャ! キィーッ!(訳 食らえ、俺の必殺投擲アタック!)」
ドコドコッ! 岩とか建材とか、なんでも敵に投げちゃう! もちろん、敵はそれなりに強めのやつらばかりだから、そんなものじゃ致命傷は与えられないが、投げたブツに相手がひるんでいる一瞬に、ギャラリー達からは見えないところに移動し、ダイレクトにボディに蹴りや拳を叩きこみ倒すことはできた。ギャラリー達から見れば、俺はまるで投擲だけで敵を倒している、クソ強いサルに違いない。そう、ハリセン仮面とはまったく違う、荒ぶる獣に見えるに違いない!
と、俺は考えたわけだったんだが……、
「うわあ、トモキ君の戦い方すごく面白-い!」
「っていうか、ハリセン仮面と同じレベルじゃない? いろんな意味で!」
そこで擦り合わせるのかよ! 戦い方の面白さ加減とか!
いやまあ、よく考えたらハリセン仮面氏の戦い方も面白い(笑)以外の何物でもない……。クソッ! またしても俺とハリセン仮面氏の距離が縮まってしまった! 俺はただ敵と戦っているだけだというのに!
と、そこで、
「いやあ、どんな戦い方でも本当に強いですねえ、トモキ君は」
と、ひたすらのん気に言うリュクサンドールの声が聞こえた。
「て、てめえ……」
俺はその声にイラつかずにはいられなかった。他の生徒たちはともかく、この男はなぜこうも最初から傍観者気取ってて、俺に丸投げなの? おかしくない? お前、一応、教師でしょ? 生徒たちを率先して守る立場でしょ? しかも大人でしょ? しかもしかも――レジェンド・モンスターで、ここにいる連中よりはよっぽど格上の存在のはずだろうがよ! なぜそんなお前は何もしないんだ!
「あー、さすがに俺一人だと辛くなってきましたよ、先生ー」
と、俺はそのリュクサンドールのほうに振り返った。
「つよいつよーい、ロイヤルクラスのレジェンド・モンスターの先生の力がないと、俺、負けちゃうかもー?」
そのままツカツカとリュクサンドールに近づき、その制服の胸倉を片手でわしづかみにした。
「見せてくださいよ、先生の本気!」
「え」
「先生ならやれるって、俺信じてますから!」
と、俺は言うと、
「くらえ! ロイヤルアタッーク!」
そのままリュクサンドールをモンスターどもに向かってぶん投げた。
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