上 下
72 / 436
2章 ドノヴォン国立学院編

71 ついにあのドラゴンの正式名称が判明!

しおりを挟む
『ようするに、これは呪いなのデスヨ。そう、レベルカンストした勇者のみに発動する、その名もバッドエンド呪い!』
「そのまんますぎるだろ……」

 つか、何気にレベルカンストしてたん、俺? やっぱタダモノじゃなかったか、はっは――って、笑ってる場合じゃあ、ない!

「なんだその意味わからん呪いは。しかも発動条件狭すぎるだろ」
『狭いどころじゃあねーですネ。この世界広しと言えども、条件満たしてるのは間違いなくマスターしかいねーじゃん的な? よっ、さすマスター!』
「茶化すのはいいから、呪いについて詳しく話せ」
『呪いの根源はあの暴虐の黄金竜マーハティカティですヨ』
「マーハ? なんだそのトンチキな名前?」
『つい先日、マスターがワンターンキルした引きこもり爬虫類でさあ』
「ああ、そんな正式名称あったんだな、アイツ」

 昔は確かに覚えてたはずなんだけど、なんかめっちゃ初めて聞く響きだな? まあ、どうでもいいか。

『あの爬虫類はマスターに瞬殺されたうえに、ワタシに美味しく食べられたとはいえ、一応、この世界では数体しかいないディヴァインクラスのモンスターでしたからネ。めんどくせー能力持ってたんですヨ。その一つが、自分が倒されたときに、相手に発動する呪いってわけで』
「え、何そのいやがらせみたいな呪い……」

 アンデット系モンスターだとそういうのよく聞くけどさあ。まさか、ラスボスクラスの超つよ系のモンスターが自分が倒された時のこと想定してそんな呪い用意してるとか、ないわー。悪の大魔王が倒されること前提に生きてるとか、ないわー。

「呪いの正式名称はバッドエンド呪いであってるんだよな? ま、まさか、俺が前世で姫に刺されて死んだのはその呪いのせい――」
『せやでー』
「って、なんでそこで唐突に関西弁なの、お前!」

 当人としてはメッチャ重い話なのに、あのキツネさんみたいに軽く流すのやめてよ、もう!

『そして、つい先日、十五年前と同様にあの爬虫類をさくっとキルしちゃったわけで、バッドエンド呪いがすでに発動しちゃってる可能性が高い』
「う……」

 やべーな。うっかり前世で勇者プレイやりこんでレベルカンストしてる場合じゃなかったよ、俺! カンスト手前で寸止めしとけば呪い回避できたんじゃないですか、俺!

「い、いやでも、今の俺のジョブは学生だし? いや、勇者やめたからただの無職か。とりあえず、呪いの発動条件からは外れる――」
『アッハ、そんなムシのいい話で現実逃避するのは無理無理カタツムリ。そもそも、勇者とは職業ではなく称号なのデスヨ? 自分で職業として名乗って勇者、ではなく、多くの人に勇者と呼ばれたとき、その人は勇者になるのデス! そういうふうにこの世の中はできてるもんデスヨ?』
「いや、俺、最近はそんなに勇者って呼ばれてな――って、よく考えたら、呼ばれまくりじゃねえか、チクショウ!」

 そうそう、あのクソ国のクソ連中ども! 動画拡散とかやりやがって! あいつらのせいで、俺は呪いの発動条件満たしちまったのかよ! クソが! 

『このままだと近いうちにマスターは死ぬ! それも最も死にたくない瞬間に死ぬ! 人生の幸せの絶頂を迎える直前に死ぬ! それがこのバッドエンド呪いの正体でさあ』
「し、幸せの絶頂を迎える直前に死ぬ呪い、だとう……」

 そんなハイパー陰湿極まりない呪いがあるわけな……いや、あるよ、超あるある! 俺、前世で好きな人に告白した直後に、その好きな人に殺されて死んだもん。告白する直前まで、まさかそんなことになるとは夢にも思わず、愛しの姫との幸せな家族計画しか頭になかったのになあ。子供は二人は欲しいかなあとか、思いながら……童貞なのにね!

「もしかすると、俺、この先幸せになっちゃいけない人なの? 人並みの幸せを手に入れようとしたら死ぬ体質になっちゃったの?」
『いえーす。そういうことになりますネー』
「そ、そんなバカなっ!」

 さすがに話が絶望的すぎて、にわかに受け入れられない。つか、意味が分からん! マーなんとかというあの竜は倒され世界は平和になったはずなのに、世界を救ったはずの俺だけ幸せになっちゃいかんとか、そんな理不尽許されるわけないだろ!

「よ、よく考えたら、お前みたいなゴミ魔剣の話を信じる理由なんてどこにもねーんだよ! 何がバッドエンド呪い(笑)だ! 作り話ならもっとマシな名前用意しろってんだ!」
『ナルホドー。この船に殺人鬼が乗っている? そんなバカな話を信じるか、俺は自分の部屋に戻る! みたいなことを口走っちゃう人だったんですネー、マスターってば』
「ちょ、勝手に人の言葉を死亡フラグにすりかえるのやめてくれる!」

 それ、ミステリーで真っ先に殺されちゃう人のセリフじゃんよ……。

『信じる者は救われる、と。ワタシとしてはそう言いたいだけなのデスネ』
「う、うっさい! 今のお前の話が正しいなんて保証はどこにもないんだからなっ!」

 と、腰に差しているゴミ魔剣に叫んだところで、俺は、周りを行きかう人たちからじろじろ見られていることに気づいた。みんな、「この人、さっきから一人で何しゃべってんの? 頭かわいそうな人なの?」みたいな視線で見ている……。うわ、めっちゃ恥ずかしい!

『マスター、ワタシは一応、あの竜を食っちまったんですぜ? したがって、あの竜の情報はすべて解析済みで、その上でこうしてマスターに警告してるってわけでさあ。そこんとこ、ご理解頼む』
「知るかっ! お前はもう黙ってろ!」

 そう言うと、俺は足早にその場を離れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗
ファンタジー
Cランクの平凡な錬金術師・カイリは、宮廷錬金術師に憧れていた。 技術を磨くために大手ギルドに所属。 半年経つとギルドマスターから追放を言い渡された。 理由は、ポーションがまずくて回復力がないからだった。 孤独になったカイリは絶望の中で三毛猫・ヴァルハラと出会う。人語を話す不思議な猫だった。力を与えられ闇の錬金術師に生まれ変わった。 全種類のポーションが製造可能になってしまったのだ。 その力を活かしてお店を開くと、最高のポーションだと国中に広まった。ポーションは飛ぶように売れ、いつの間にかお金持ちに……! その噂を聞きつけた元ギルドも、もう一度やり直さないかとやって来るが――もう遅かった。 カイリは様々なポーションを製造して成り上がっていくのだった。 三毛猫と共に人生の勝ち組へ...!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

処理中です...