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1章 暴虐の黄金竜マーハティカティ再討伐編
36 ハーウェル(単位)
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俺が次にしょっぴかれたのは、訓練場と思しき、広い部屋だった。俺とハーウェルがまず先に入り、少し遅れて、王様と近衛兵たちとギルド長とザドリーが入ってきた。
「そういえば、貴殿には自己紹介がまだだったな。それがしは騎士ハーウェル! ハーウェル・ギュストー。レイナート聖騎士団、副長を担う三十二歳である!」
模擬戦用の木刀を選んでいると、にわかにハーウェルは、俺に向かって叫んだ。身長は百九十センチはありそうな大男だ。髪は黒く短く、肌は浅黒く、体は筋肉隆々。顔つきも彫りの深い、精悍なコワモテだ。さらに、鼻の頭から頬にかけては、大きな古傷が走っていた。
「さきほどの映像を見るに、貴殿はかの勇者の生まれ変わりだそうだな? だが、その肩書きに臆するそれがしではないぞ!」
「はあ」
なんか、妙に張り切っちゃってて、めんどくさそうな相手だなあ。まあ、適当にやりあって、適当に負けるつもりだけどさ。
「一応、言っておきますけど、俺の名前はトモキって言うんで。アルなんとかさんなんて人は、知らないので」
「なるほど。男なら言葉ではなく剣で語れと言う事か」
「え」
何この謎会話。何が、なるほどなんだ、この人。
「よく考えても見てください。一度死んだ人が、転生とかいうインチキシステムで復活するなんて、ありえないでしょ? ずるっこいでしょ? つまり、アルなんとかさんは十五年前に死んで、それで終わりなんです。俺はまったく関係ない――」
「はは! 相手が誰であろうと、それがしは手加減はせぬぞ!」
「……あの、人の話聞いてます?」
「ああ、そういえば、貴殿には話しておくべきことがあったな」
と、ハーウェルはいきなり、俺にずいと近づいてきた。
「な、なんすか?」
「それがしのこの顔の傷のことだ。貴殿はこれをどう思う?」
「え? まあ……男の勲章って感じで、カッコイイんじゃないですか?」
どうでもいい。本当は、めっちゃどうでもいいけどな!
「そうだろう、そうだろう。しかし、勘違いしないで欲しい。それがしは、過去の戦いで顔に深い傷を負ったことなど一度もないのだ。これはつまり……こういうことなのだ!」
ハーウェルはそこで顔の傷に手をやり――それをぺりっと剥がした。そう、それは本物の傷ではなかったのだ……。
「それ、もしかして、シールですか?」
「そうだ! それがしは常にこれを顔に貼っている。いわばこれは、戦場で散っていった多くの友たちを忘れぬための、あかしなのだ。つまりは常在戦場!」
「そ、そうですか……」
単にカッコツケのためなんじゃないかって気もするが?
「そして、これを貴殿の前で剥がすことの意味がわかるか?」
「わかりませんよ」
知りたくもないよ。
「はっは! これはつまり、それがしの真の姿、真の力を晒すということなのだ!」
ハーウェルは腰に手を当て、高笑いしながら言った。なんだそれ、実はリミッターだったのかよ。
「す、すごい! 俺、ハーウェルさんが、アレを外すところを初めて見たよ!」
「ハーウェルさんにあそこまでさせる相手なんて……ばねえ! マジぱねえ!」
「本気だ! もう誰もあの人を止められない……!」
ざわざわ。近衛兵たちがなんか騒ぎ始めている。いちいち、うるさいなあ、もう。
「ごちゃごちゃ前置きはいいから、とっとと終わらせましょうよ」
俺は適当に近くの木刀を取ると、腰にさしたゴミ魔剣を下に転がした。さすがに邪魔だしな。
「それもそうだな。よし、行くぞ!」
ハーウェルも木刀を手に取り、すぐに俺に打ち込んできた。その動きはこの国一番といわれるだけに素早い――というほどでもなかった。なんだか妙にスロウリィ?
「あの……本気モードなんですよね?」
適当にハーウェルの木刀をかわしながら、思わずたずねてしまった。
「ま、まあ、本気ではあるがまだ全力ではない!」
ふんふんふん!と、木刀を振り回しながら、なんだか気まずそうにハーウェルは答えた。
「じゃあ、とっとと全力出してくださいよ」
そうじゃないと、負けたフリをするにしても、サマにならないからな。
「ならば、それがしの渾身の一撃を食らえ!」
とうっ! ハーウェルは俺の喉笛に向かって、力強く突きを放ってきた。
「いや、これはどう考えても反則でしょ?」
喉に突きって、木刀でも殺す気マンマン攻撃じゃん。模擬戦でこれはないでしょー。俺は苦笑いしつつ、少し後ずさりして、ハーウェルの木刀を指で挟んで受け止めた。ぴたっ! その動きはあっさり止まった。
「な……それがしの、全力の突きを、指だけで……」
「え、ほんとに全力だったの」
特に力強さは感じなかったんだが?
「あの、つかぬことを聞きますが、あなた本当にこの国一番の武芸者でいいんですよね? 体調崩してるとかでもないんですよね?」
「も、もちろんだ!」
ハーウェルは威勢よく答えるが、その額にはじんわり冷や汗がにじんでいた。
「き、貴殿は卓越した防御能力を持っているようだな! さすが勇者アルドレイといわざるを得ない!」
「いや、だから、俺はアルドレイじゃなくてトモキだって。あと、どっちかというと、防御より攻撃のほうが得意だから」
「え……攻撃のほうが得意……」
ハーウェルは瞬間、たじろいだように半歩後ずさった。
「そ、それならば、ぜひ、その攻撃の腕前を見せて欲しいもの、だな! だな!」
言いながら、どんどん俺から離れていくハーウェルだった。もしかして、びびってんのか、このおっさん? 俺、まだ何もしてないんだが? 口だけ大将すぎるだろ……。
でも、ここで本気出したら、普通に俺が勝っちゃうっぽいしなあ。それはまためんどくさいことになるから、避けたい。なんとしても避けたい。
「う……なんか急に腹が痛いっ!」
俺はとっさに、痛くもない腹を両手で抱えてうずくまった。
「きっと、さっき、一撃もらったせいだ! ハーウェルさん、マジぱねえ!」
「え? それがしの攻撃は当たらなかったはずだが……?」
「それが、一発入ってたんですよ! 目にも留まらぬ早業でした! おかげで、痛みもディレイでやってきたってもんでさあ!」
「そ、そうなのか……」
ハーウェルはなんだかほっとしたような顔で俺の近くに戻ってきた。
「この痛みじゃ、俺はもう戦えないです! 完敗です! ハーウェルさんマジつよ!」
「はは、そうか! それがしの勝利か!」
ハーウェル氏、にっこり笑顔――のはずだったが、そこで、
「待て! 食らってもいない攻撃で試合を放棄するとは、明らかに不正であるぞ! 続けよ!」
王様の怒ったような声が聞こえてきた。
くそっ! はたから見てる人間にはさすがに嘘がバレたか! 歯軋りしちゃう俺だった。
「あ、なんか、そうえば、たいした痛みじゃなくなったような? ちょっとかすっただけだったしなあ。ははは」
俺は体裁を取り繕いつつ、立ち上がった。そして、
「じゃあ、第二ラウンドといきましょうか!」
いかにもマジメぶって、木刀を構えなおした。
「そ、そうか? ならば今度こそ、手加減はせぬぞ!」
ハーウェルはこんな俺の様子に困惑しているようだったが、すぐにまた木刀を打ち込んできた。相変わらずたいした速さじゃなかったが、とりあえず、試合を早く終わらせるために、その一太刀をわざと右腕に食らった。ぺち! ちょっと痛かった。
「ぐあああっ! 腕がああっ! 利き腕がああっ! これじゃもう戦えないぃいい!」
即座に床に転がり、右腕を左腕で押さえ、痛みに悶絶する演技をした。王様のほうに向かって。気分は、審判にウソのファウルアピールをするサッカー選手だ。
だが、
「たいしたダメージでもないのに、痛がるフリをするとは、実にけしからん!」
王様、またしても俺の演技を見破りやがった! くそ! なんだこの気の利かないデブ!
「いや、今のは本当に痛かったんですよ! 俺はもう木刀を握ることすらできない! 信じてくださいよ!」
俺は王様のほうを向き、必死に訴えた――と、そこで、王様の手にいつの間にやら、ゴミ魔剣が握られているのに気づいた。さらに、王様の目つきもハイライトが消えて、おかしな感じになっている……。
「て、てめえ、いつのまに――」
「ズルはいけないですねえ? 相手が全力をだしているのだから、マスターも全力で応えるべきですヨ?」
ネム in 王様は、にやりと笑いながら言った。こいつ、一国の王の体ですら、乗っ取れるのかよ! つか、ちょっと目を放した隙にこれかよ!
「てめえ、俺がどんなに負けても、認めないつもりだな!」
「余はおぬしの真の力が見たいのでな、フフ」
「ふざけんな!」
くそが! これじゃ、いくら負ける演技しても無駄じゃねえか! あいつ、どこまで俺をコケにして……。怒りがメラメラとわいてきた。
「あ、あのう……。それがし、そろそろ攻撃を再開してもよいか――」
「見掛け倒しのクソザコデクノボーは黙ってろ!」
どごっ! 急に視界に入ってきた筋肉ダルマのおっさんを蹴り飛ばし、俺は直ちに、ネムのほうに駆け寄った。そして、その顔を思いっきりグーで殴った! 力いっぱい殴ってやった!
「ぐはあっ!」
その太った体はきりもみ回転しながらぶっ飛び、後ろの壁に叩きつけられた。
「へへ、どんなもんだ! てめえも、少しは人の痛みってもんを覚え――」
「へ、陛下! 貴様、陛下に何を!」
「不敬である! すぐにこの者をひっとらえよ!」
「え」
俺はたちまち近衛兵たちに囲まれた。
そして、すぐに――城の地下の牢屋にぶち込まれた。
「あ、あるぇー?」
どうしてこうなった? どうしてこうなった? 薄暗い牢の中で、首をかしげちゃう俺だった。
「そういえば、貴殿には自己紹介がまだだったな。それがしは騎士ハーウェル! ハーウェル・ギュストー。レイナート聖騎士団、副長を担う三十二歳である!」
模擬戦用の木刀を選んでいると、にわかにハーウェルは、俺に向かって叫んだ。身長は百九十センチはありそうな大男だ。髪は黒く短く、肌は浅黒く、体は筋肉隆々。顔つきも彫りの深い、精悍なコワモテだ。さらに、鼻の頭から頬にかけては、大きな古傷が走っていた。
「さきほどの映像を見るに、貴殿はかの勇者の生まれ変わりだそうだな? だが、その肩書きに臆するそれがしではないぞ!」
「はあ」
なんか、妙に張り切っちゃってて、めんどくさそうな相手だなあ。まあ、適当にやりあって、適当に負けるつもりだけどさ。
「一応、言っておきますけど、俺の名前はトモキって言うんで。アルなんとかさんなんて人は、知らないので」
「なるほど。男なら言葉ではなく剣で語れと言う事か」
「え」
何この謎会話。何が、なるほどなんだ、この人。
「よく考えても見てください。一度死んだ人が、転生とかいうインチキシステムで復活するなんて、ありえないでしょ? ずるっこいでしょ? つまり、アルなんとかさんは十五年前に死んで、それで終わりなんです。俺はまったく関係ない――」
「はは! 相手が誰であろうと、それがしは手加減はせぬぞ!」
「……あの、人の話聞いてます?」
「ああ、そういえば、貴殿には話しておくべきことがあったな」
と、ハーウェルはいきなり、俺にずいと近づいてきた。
「な、なんすか?」
「それがしのこの顔の傷のことだ。貴殿はこれをどう思う?」
「え? まあ……男の勲章って感じで、カッコイイんじゃないですか?」
どうでもいい。本当は、めっちゃどうでもいいけどな!
「そうだろう、そうだろう。しかし、勘違いしないで欲しい。それがしは、過去の戦いで顔に深い傷を負ったことなど一度もないのだ。これはつまり……こういうことなのだ!」
ハーウェルはそこで顔の傷に手をやり――それをぺりっと剥がした。そう、それは本物の傷ではなかったのだ……。
「それ、もしかして、シールですか?」
「そうだ! それがしは常にこれを顔に貼っている。いわばこれは、戦場で散っていった多くの友たちを忘れぬための、あかしなのだ。つまりは常在戦場!」
「そ、そうですか……」
単にカッコツケのためなんじゃないかって気もするが?
「そして、これを貴殿の前で剥がすことの意味がわかるか?」
「わかりませんよ」
知りたくもないよ。
「はっは! これはつまり、それがしの真の姿、真の力を晒すということなのだ!」
ハーウェルは腰に手を当て、高笑いしながら言った。なんだそれ、実はリミッターだったのかよ。
「す、すごい! 俺、ハーウェルさんが、アレを外すところを初めて見たよ!」
「ハーウェルさんにあそこまでさせる相手なんて……ばねえ! マジぱねえ!」
「本気だ! もう誰もあの人を止められない……!」
ざわざわ。近衛兵たちがなんか騒ぎ始めている。いちいち、うるさいなあ、もう。
「ごちゃごちゃ前置きはいいから、とっとと終わらせましょうよ」
俺は適当に近くの木刀を取ると、腰にさしたゴミ魔剣を下に転がした。さすがに邪魔だしな。
「それもそうだな。よし、行くぞ!」
ハーウェルも木刀を手に取り、すぐに俺に打ち込んできた。その動きはこの国一番といわれるだけに素早い――というほどでもなかった。なんだか妙にスロウリィ?
「あの……本気モードなんですよね?」
適当にハーウェルの木刀をかわしながら、思わずたずねてしまった。
「ま、まあ、本気ではあるがまだ全力ではない!」
ふんふんふん!と、木刀を振り回しながら、なんだか気まずそうにハーウェルは答えた。
「じゃあ、とっとと全力出してくださいよ」
そうじゃないと、負けたフリをするにしても、サマにならないからな。
「ならば、それがしの渾身の一撃を食らえ!」
とうっ! ハーウェルは俺の喉笛に向かって、力強く突きを放ってきた。
「いや、これはどう考えても反則でしょ?」
喉に突きって、木刀でも殺す気マンマン攻撃じゃん。模擬戦でこれはないでしょー。俺は苦笑いしつつ、少し後ずさりして、ハーウェルの木刀を指で挟んで受け止めた。ぴたっ! その動きはあっさり止まった。
「な……それがしの、全力の突きを、指だけで……」
「え、ほんとに全力だったの」
特に力強さは感じなかったんだが?
「あの、つかぬことを聞きますが、あなた本当にこの国一番の武芸者でいいんですよね? 体調崩してるとかでもないんですよね?」
「も、もちろんだ!」
ハーウェルは威勢よく答えるが、その額にはじんわり冷や汗がにじんでいた。
「き、貴殿は卓越した防御能力を持っているようだな! さすが勇者アルドレイといわざるを得ない!」
「いや、だから、俺はアルドレイじゃなくてトモキだって。あと、どっちかというと、防御より攻撃のほうが得意だから」
「え……攻撃のほうが得意……」
ハーウェルは瞬間、たじろいだように半歩後ずさった。
「そ、それならば、ぜひ、その攻撃の腕前を見せて欲しいもの、だな! だな!」
言いながら、どんどん俺から離れていくハーウェルだった。もしかして、びびってんのか、このおっさん? 俺、まだ何もしてないんだが? 口だけ大将すぎるだろ……。
でも、ここで本気出したら、普通に俺が勝っちゃうっぽいしなあ。それはまためんどくさいことになるから、避けたい。なんとしても避けたい。
「う……なんか急に腹が痛いっ!」
俺はとっさに、痛くもない腹を両手で抱えてうずくまった。
「きっと、さっき、一撃もらったせいだ! ハーウェルさん、マジぱねえ!」
「え? それがしの攻撃は当たらなかったはずだが……?」
「それが、一発入ってたんですよ! 目にも留まらぬ早業でした! おかげで、痛みもディレイでやってきたってもんでさあ!」
「そ、そうなのか……」
ハーウェルはなんだかほっとしたような顔で俺の近くに戻ってきた。
「この痛みじゃ、俺はもう戦えないです! 完敗です! ハーウェルさんマジつよ!」
「はは、そうか! それがしの勝利か!」
ハーウェル氏、にっこり笑顔――のはずだったが、そこで、
「待て! 食らってもいない攻撃で試合を放棄するとは、明らかに不正であるぞ! 続けよ!」
王様の怒ったような声が聞こえてきた。
くそっ! はたから見てる人間にはさすがに嘘がバレたか! 歯軋りしちゃう俺だった。
「あ、なんか、そうえば、たいした痛みじゃなくなったような? ちょっとかすっただけだったしなあ。ははは」
俺は体裁を取り繕いつつ、立ち上がった。そして、
「じゃあ、第二ラウンドといきましょうか!」
いかにもマジメぶって、木刀を構えなおした。
「そ、そうか? ならば今度こそ、手加減はせぬぞ!」
ハーウェルはこんな俺の様子に困惑しているようだったが、すぐにまた木刀を打ち込んできた。相変わらずたいした速さじゃなかったが、とりあえず、試合を早く終わらせるために、その一太刀をわざと右腕に食らった。ぺち! ちょっと痛かった。
「ぐあああっ! 腕がああっ! 利き腕がああっ! これじゃもう戦えないぃいい!」
即座に床に転がり、右腕を左腕で押さえ、痛みに悶絶する演技をした。王様のほうに向かって。気分は、審判にウソのファウルアピールをするサッカー選手だ。
だが、
「たいしたダメージでもないのに、痛がるフリをするとは、実にけしからん!」
王様、またしても俺の演技を見破りやがった! くそ! なんだこの気の利かないデブ!
「いや、今のは本当に痛かったんですよ! 俺はもう木刀を握ることすらできない! 信じてくださいよ!」
俺は王様のほうを向き、必死に訴えた――と、そこで、王様の手にいつの間にやら、ゴミ魔剣が握られているのに気づいた。さらに、王様の目つきもハイライトが消えて、おかしな感じになっている……。
「て、てめえ、いつのまに――」
「ズルはいけないですねえ? 相手が全力をだしているのだから、マスターも全力で応えるべきですヨ?」
ネム in 王様は、にやりと笑いながら言った。こいつ、一国の王の体ですら、乗っ取れるのかよ! つか、ちょっと目を放した隙にこれかよ!
「てめえ、俺がどんなに負けても、認めないつもりだな!」
「余はおぬしの真の力が見たいのでな、フフ」
「ふざけんな!」
くそが! これじゃ、いくら負ける演技しても無駄じゃねえか! あいつ、どこまで俺をコケにして……。怒りがメラメラとわいてきた。
「あ、あのう……。それがし、そろそろ攻撃を再開してもよいか――」
「見掛け倒しのクソザコデクノボーは黙ってろ!」
どごっ! 急に視界に入ってきた筋肉ダルマのおっさんを蹴り飛ばし、俺は直ちに、ネムのほうに駆け寄った。そして、その顔を思いっきりグーで殴った! 力いっぱい殴ってやった!
「ぐはあっ!」
その太った体はきりもみ回転しながらぶっ飛び、後ろの壁に叩きつけられた。
「へへ、どんなもんだ! てめえも、少しは人の痛みってもんを覚え――」
「へ、陛下! 貴様、陛下に何を!」
「不敬である! すぐにこの者をひっとらえよ!」
「え」
俺はたちまち近衛兵たちに囲まれた。
そして、すぐに――城の地下の牢屋にぶち込まれた。
「あ、あるぇー?」
どうしてこうなった? どうしてこうなった? 薄暗い牢の中で、首をかしげちゃう俺だった。
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