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5 黒川さんの里帰り
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「そんなに恥ずかしがることもないでしょう。赤城さんの体、すごくきれいですよ」
「な、なななな何を――」
もはやパニックになってしまう。この状況で何を口走ってるんだ、この妖怪は。
「まあ、この体勢だとあんまり見えないんですけどね。首を伸ばして確認できるのは、せいぜい、水面に映ってる赤城さんのかわいらしいはにかみ顔くらいですかね」
「わ、わわわたしが、か、かかわ――」
かわいいってまた言われちゃった! こんな状況でまた言われちゃった! あわわ、こういう場合どうすればいいの? 全然わかんない!
……いい歳して、思春期の少女のように動揺してしまう雪子であった。
「なので、赤城さん、そんな亀のように身を固くしてないで、こっちを向いてくれませんか? これじゃ、僕、何もできないじゃないですか」
「で、できるって、わ、私に何をする気なんですか!」
「そりゃあ、厄除けですよ」
「え?」
「他に何があるって言うんですか。そのために、ここに来たんでしょう」
黒川は体を震わせ、おかしそうに笑った。
ああそういえば、厄除けの最中だっけ……。
色ボケ全開だった雪子はそこではっと我に返った。そして、言われたとおり、黒川のほうに向き直った。胸を手で覆いながらおずおずと。あくまで厄除けのためなんだからと、自分に言い聞かせながら。
「そ、それで、私、これから何をすればいいんですか?」
「何も。ただ僕を受け入れてくれればいいですよ」
「受け入れる?」
「これからあなたの体に、僕の中の神気を吹き込みますから」
「吹き込むってどうやって――」
「いいから、目を閉じてじっとしていてください」
銀髪の美貌の青年は、雪子にやわらかく微笑みかけ、彼女の体をそっと自分のほうに引き寄せた。そして、首筋にやさしく触れ、指を遊ばせた後、彼女に口付けした。
「あ……」
その瞬間、雪子は小さく声をもらしたが、彼の唇を拒む力はまったく出なかった。目を閉じると、重なり合っている彼の肌からぬくもりが伝わってきて、それが彼女の中の恥じらいや戸惑い、緊張を溶かしていくようだった。
男の人の唇ってこんな感触なんだ。意外とやわらかい……。
胸の奥で、心臓が強く高鳴っているのがわかったが、不思議と他人事のように感じられた。
彼はそのまま口移しで神気とやらを彼女の体に吹き込んでいった。次第に、彼女は何かあたたかいもので体が満たされていくようだった。それはうっとりするような、心地よい感覚だった。
彼女はだんだん、お酒を飲んだときのように、意識がふわふわになった。あれ? あったかくてすごく気持ちいいはずなのに、なんだかとても眠い……。
「ちょっと吹き込む神気の量が多すぎましたかね? 赤城さん、すっかりのぼせてしまったみたいです」
やがて黒川は彼女から離れ、からかうように彼女の顔を覗き込んだ。のぼせてる?
そうか、これ、湯あたりみたいな状態なんだ……。
朦朧とする意識の中で、雪子がかろうじて理解できたのはそれぐらいだった。彼女はすぐに彼の胸にもたれかかり、気を失ってしまった。
「……これで、あなたは僕のものだ」
薄れ行く意識の中で、そんな言葉が聞こえた気がした。
「な、なななな何を――」
もはやパニックになってしまう。この状況で何を口走ってるんだ、この妖怪は。
「まあ、この体勢だとあんまり見えないんですけどね。首を伸ばして確認できるのは、せいぜい、水面に映ってる赤城さんのかわいらしいはにかみ顔くらいですかね」
「わ、わわわたしが、か、かかわ――」
かわいいってまた言われちゃった! こんな状況でまた言われちゃった! あわわ、こういう場合どうすればいいの? 全然わかんない!
……いい歳して、思春期の少女のように動揺してしまう雪子であった。
「なので、赤城さん、そんな亀のように身を固くしてないで、こっちを向いてくれませんか? これじゃ、僕、何もできないじゃないですか」
「で、できるって、わ、私に何をする気なんですか!」
「そりゃあ、厄除けですよ」
「え?」
「他に何があるって言うんですか。そのために、ここに来たんでしょう」
黒川は体を震わせ、おかしそうに笑った。
ああそういえば、厄除けの最中だっけ……。
色ボケ全開だった雪子はそこではっと我に返った。そして、言われたとおり、黒川のほうに向き直った。胸を手で覆いながらおずおずと。あくまで厄除けのためなんだからと、自分に言い聞かせながら。
「そ、それで、私、これから何をすればいいんですか?」
「何も。ただ僕を受け入れてくれればいいですよ」
「受け入れる?」
「これからあなたの体に、僕の中の神気を吹き込みますから」
「吹き込むってどうやって――」
「いいから、目を閉じてじっとしていてください」
銀髪の美貌の青年は、雪子にやわらかく微笑みかけ、彼女の体をそっと自分のほうに引き寄せた。そして、首筋にやさしく触れ、指を遊ばせた後、彼女に口付けした。
「あ……」
その瞬間、雪子は小さく声をもらしたが、彼の唇を拒む力はまったく出なかった。目を閉じると、重なり合っている彼の肌からぬくもりが伝わってきて、それが彼女の中の恥じらいや戸惑い、緊張を溶かしていくようだった。
男の人の唇ってこんな感触なんだ。意外とやわらかい……。
胸の奥で、心臓が強く高鳴っているのがわかったが、不思議と他人事のように感じられた。
彼はそのまま口移しで神気とやらを彼女の体に吹き込んでいった。次第に、彼女は何かあたたかいもので体が満たされていくようだった。それはうっとりするような、心地よい感覚だった。
彼女はだんだん、お酒を飲んだときのように、意識がふわふわになった。あれ? あったかくてすごく気持ちいいはずなのに、なんだかとても眠い……。
「ちょっと吹き込む神気の量が多すぎましたかね? 赤城さん、すっかりのぼせてしまったみたいです」
やがて黒川は彼女から離れ、からかうように彼女の顔を覗き込んだ。のぼせてる?
そうか、これ、湯あたりみたいな状態なんだ……。
朦朧とする意識の中で、雪子がかろうじて理解できたのはそれぐらいだった。彼女はすぐに彼の胸にもたれかかり、気を失ってしまった。
「……これで、あなたは僕のものだ」
薄れ行く意識の中で、そんな言葉が聞こえた気がした。
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