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ウンディーネ編
第134話 再び水の神殿へ
しおりを挟むびしょ濡れになったわたしたちは、洞窟から脱出する前に、ホムラを囲んで暖を取ることにした。
ついでに、軽い食事もとる。わたしは硬いクッキーにかじりついた。
「ふぅ。今回は本当に危なかったね」
「本当。エルメラがいなければどうなっていたことやらですわ」
「サラマンダーが助言してくれたからだよ。ありがとう、サラマンダー」
「我が友の為にならこの程度のこと当然である」
エルメラにお礼を言われて、サラマンダーも満更じゃなさそうだ。
「上に戻ったら、メジロは待ち構えているだろうな」
イオがふとつぶやく。
「どうかな。戻ってこないと思っているかも」
「どちらにしろ、メジロとはおそらく戦闘になるだろう」
わたしたちは黙ってしまう。
そうなのだ。ウンディーネの影は居なくなったとはいえ、メジロはまだ精霊使いとウンディーネを恨んでいるはずだ。
「メジロもきっと悲しかったんだよね……」
エルメラが言うことに、みんな静かに頷いた。メジロも大切な人たちを失くしたのだ。
もしも、メジロも一人ではなかったなら、違う結果になっていたかもしれない。
「でも戦闘になったら凍ったウンディーネを壊したりしないか心配ですわ。今はそんな気配はありませんけれど」
ルーシャちゃんが言う通り、ウンディーネを壊されたら自然界の水がどうなるか分からない。自暴自棄になったメジロが何をするか分からなかった。
「……ウンディーネは本当に凍っているのだろうか?」
イオがあごに手を当てて、思案している様子を見せる。
「どういうこと? 実際に凍っていたじゃない」
神殿の中で見たはずだ。わたしたちが近づいてもピクリとも動かなかった。
「いや。少しおかしいと思ったんだ。いくら精霊使いとしてレベルが高いメジロと言っても、精霊の王を凍らせることが出来るだろうか」
「確かにわたくしがいくら頑張ってもシルフには傷一つ付けられないと思いますわ。同じ精霊の王同士ならまだしも、一介の精霊使いには不可能だと」
ルーシャちゃんが言うことに、イオも頷く。
「ああ。だから、ウンディーネはメジロに凍らされた振りをして、自ら凍ったんじゃないかと思うんだ」
「でも、そんなことをして、何になるの?」
その疑問にはエルメラが答えた。
「……きっと、ウンディーネはメジロに攻撃できなかったんじゃないかな」
「攻撃を?」
「うん。影の話を聞いても、本体のウンディーネはきっと優しい精霊だよ」
確かに自分ばかりを責めて、わたしたちを責める言葉はなかった。
「うむ。彼女のことだから、反撃をしなくても不思議ではない。おそらく芯は凍らずに、表面だけ凍っているのであろう」
サラマンダーの言うことで、さらに確信が持てる。
「メジロがウンディーネを凍らせたわけではないなら考えがある」
イオは洞窟を脱出した後のことを話し出した。
わたしたちはルーシャちゃんの風に乗って、洞窟を脱出する。
もちろん、湖の水は襲って来たりはしない。
穴から出ると、そこは神殿裏から少し離れた場所だ。
「裏口ってないのかな?」
裏から回れば、メジロの隙をつけるはずだ。わたしたちは神殿に近づいていみるけれど、それらしい入り口はなかった。
やはり正面から行くしかない。
「そういえば、水の龍ってどうしているのかな」
神殿の入り口の辺りには居ないようだ。
「神殿のどこかに身を潜めているかもしれないな。協力してくれたらいいが。みんな、準備はいいか?」
イオの目配せにわたしたちは頷く。
それぞれ、精霊たちも呼び出していて準備は万端だ。
「行こう」
わたしたちは神殿の巨大な扉をくぐる。
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