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23.女神様は外堀を埋め尽くしたようだ
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浩介達と別れた後は特にすることもなかったのと、まあまあいい時間になってきたので家路についた。
この時期の夕方ともなるとかなり冷え込んでくる。帰ったら、昨日出したばかりのこたつに入って暖まろうと思っている。
「ただいま」
一人だった時は必要なかった言葉。今はこれに対して返してくれる人がいる。
「あっ、おかえり~」
エプロン姿で腕まくりした穂香が迎えてくれた。
「えへへ……ユウ君、その髪型似合ってるよ……カッコいいな」
近寄ってきて俺の髪の毛を褒めてくれると、一瞬だけ唇を合わせてきた。母さんがリビングにいるのに大胆だなと思う。
でも、恥ずかしいのは恥ずかしいらしく、頬を少し紅に染めている。そんな穂香が可愛くて、照れ隠しに軽く頭を撫でてリビングの方へ行く。
「母さん、ただいま」
母さんにただいまと言ったのは実家以来だな。
「おかえり、優希。あら、何か色男になって帰ってきたわね。あんたがそんな髪型にするのって初めてよね~ちょっとこれは父さんにも見せるべきね。そこに立ってくれる?写真撮るから」
え?マジかよ。やめてくれとは思いつつも、母さんに勝てるわけもないから諦めた。こういう時は素直に従った方がいい。
「うん、いい男ね~でも、優明さんには負けるかしら」
優明というのは俺の父さんだ。仕事で海外を飛び回ってるので、あまり会えないが。
「そりゃ、母さんからしたら、父さんが一番だろ」
父さんと母さんは一緒にいるときはいまだにラブラブだ。息子から見ても胸やけするくらい仲が良い。
「それは当然よね~。あ、丁度いいわ。穂香ちゃんも父さんにお披露目しておきましょう。穂香ちゃん今ちょっと大丈夫かしら?」
ん?穂香ちゃん?なんか呼び方がちょっと変わってるな。まぁ、半日二人で家にいたから色々話したりしたんだろう。
「は~い、大丈夫です。お義母さん、どうしましたか?」
穂香の言った言葉にとてつもない違和感を感じた気がする。
「穂香ちゃんの写真も父さんに送りたいんだけどいい?」
「あ、じゃあ、エプロン外しますね」
エプロン外して、服装を軽く直している穂香に聞いてみる。
「……なぁ、穂香?」
「なぁに?」
「俺の聞き間違いじゃなかったら、お義母さんって言わなかったか?」
俺の質問に答えようとした穂香を制止して、母さんが答えた。
「それはね、私が言ったのよ。穂香ちゃんのご両親の事は聞いたわ。私も娘は昔から欲しかったのもあるし……あなたたちは若いから、この先の事なんてまだまだ分からないけど、中途半端な気持ちで付き合ってるわけじゃないでしょ?穂香ちゃんには、その気があるなら、そう呼んでってお願いしたのよ」
「そうなの。ユウ君をビックリさせようとは思ってたけどね」
順調に外堀が埋め尽くされていく感じがするな。というか、もう埋まってるよな。
まぁ、俺も穂香を手放すつもりはないし、そこに関しては問題ない。
「なるほど、わかった。俺としても穂香と母さんが仲良い方がいいからな、むしろ歓迎する」
「さすが私の息子ね。よくわかってるじゃない。じゃあ、写真撮るから二人ともくっついて」
母さんがそう言うと、穂香が俺の右手に両腕を絡め、抱き着いてきた。
え?父さんに送る写真なのにこんなにくっつくのか?母親の目の前でこれは恥ずかしい。
「いいわね~穂香ちゃんはとってもいい表情よ。優希はちょっと硬いわね。いつも穂香ちゃんといる時はそんな顔じゃないでしょ?」
そんな事言われてもなぁ、俺はこういうの慣れてないんだ。とりあえず参考までに穂香の表情を見てみよう。
視線を向けると、それに合わせるように俺の方を向いてくれて、ニコっと微笑んでくれた。その笑顔につられて、俺も自然と表情が綻ぶ。
「よし、いいの撮れたわ。後で送っておくわね」
「あの……お義母さん。今の写真、私も欲しいです」
「もちろんいいわよ。今送るわね」
「えへへ……後で待ち受けにしよっと」
そんなことを呟きながら、穂香はキッチンへ戻っていった。
リビングに残されたのは俺と母さんだが、母さんは父さんへさっきの写真やメッセージを送っている。その作業がひと段落着いたところで、母さんに声をかけた。
「なぁ、母さん。お願いがあるんだが……穂香と、ここで一緒に住んでもいいか?」
OKだとしても、多分色々な条件を出されるだろう。だが、学校の成績は穂香のお陰で上々だ。衣食住に関しても穂香のお陰で問題ない。
あれ?俺って穂香がいなかったらダメ人間じゃないか?
「……いいわよ」
母さんの答えは予想を裏切ってあっさりしたものだった。
「え?」
「何か条件とか出されると思ったんでしょう?それに関しては、今、クリアしたからいいわよ」
どうなってるのか意味がわからない。OKなんだよな?
「母さん、どういうことだ?」
「実はね、穂香ちゃんからも話があったのよ。学校の成績は穂香ちゃんのおかげで良くなってるでしょ。食事や掃除は穂香ちゃんがいれば大丈夫、と言うよりいないとできない。あと、穂香ちゃんのおばあさんの件は、後で穂香ちゃんから聞きなさい。あとは、この話をあんたから私にしてきてくれたらいいかなって思ってたから」
どうやら、俺がいない間に話が進んでたらしい。それはそれでありがたいが、実際に知らないところで話が進んでるのは、体験すると結構怖いものがあるな。
「ただし、成績があまり落ちるようなら打ち切りよ。それと、これはあんた達見てたら大丈夫だと思うけど、仲良くしなさい。私も月一回は来れるようにするわ。スケジュールが合えば父さんも連れてくるし。あと、わかってると思うけど、避妊はしっかりしなさい」
「あ、ああ。もちろんわかってるよ」
これに関しては当たり前だよな。
「よろしい。じゃあ、そろそろご飯にしましょう」
そう言って母さんもキッチンへ行ってしまった。後にはポカンとした表情の俺が残されただけだ。
拍子抜けするほど簡単に事が運びすぎだが、これも俺がいない間に穂香が頑張ってくれたのかもしれないな。俺には勿体ないくらいの女神様だ。かと言って、誰にも渡すつもりはないがな。
ちなみに本日の夕食は寄せ鍋だ。家族三人で食べる夕食はいつもよりも美味しく感じられた。
この時期の夕方ともなるとかなり冷え込んでくる。帰ったら、昨日出したばかりのこたつに入って暖まろうと思っている。
「ただいま」
一人だった時は必要なかった言葉。今はこれに対して返してくれる人がいる。
「あっ、おかえり~」
エプロン姿で腕まくりした穂香が迎えてくれた。
「えへへ……ユウ君、その髪型似合ってるよ……カッコいいな」
近寄ってきて俺の髪の毛を褒めてくれると、一瞬だけ唇を合わせてきた。母さんがリビングにいるのに大胆だなと思う。
でも、恥ずかしいのは恥ずかしいらしく、頬を少し紅に染めている。そんな穂香が可愛くて、照れ隠しに軽く頭を撫でてリビングの方へ行く。
「母さん、ただいま」
母さんにただいまと言ったのは実家以来だな。
「おかえり、優希。あら、何か色男になって帰ってきたわね。あんたがそんな髪型にするのって初めてよね~ちょっとこれは父さんにも見せるべきね。そこに立ってくれる?写真撮るから」
え?マジかよ。やめてくれとは思いつつも、母さんに勝てるわけもないから諦めた。こういう時は素直に従った方がいい。
「うん、いい男ね~でも、優明さんには負けるかしら」
優明というのは俺の父さんだ。仕事で海外を飛び回ってるので、あまり会えないが。
「そりゃ、母さんからしたら、父さんが一番だろ」
父さんと母さんは一緒にいるときはいまだにラブラブだ。息子から見ても胸やけするくらい仲が良い。
「それは当然よね~。あ、丁度いいわ。穂香ちゃんも父さんにお披露目しておきましょう。穂香ちゃん今ちょっと大丈夫かしら?」
ん?穂香ちゃん?なんか呼び方がちょっと変わってるな。まぁ、半日二人で家にいたから色々話したりしたんだろう。
「は~い、大丈夫です。お義母さん、どうしましたか?」
穂香の言った言葉にとてつもない違和感を感じた気がする。
「穂香ちゃんの写真も父さんに送りたいんだけどいい?」
「あ、じゃあ、エプロン外しますね」
エプロン外して、服装を軽く直している穂香に聞いてみる。
「……なぁ、穂香?」
「なぁに?」
「俺の聞き間違いじゃなかったら、お義母さんって言わなかったか?」
俺の質問に答えようとした穂香を制止して、母さんが答えた。
「それはね、私が言ったのよ。穂香ちゃんのご両親の事は聞いたわ。私も娘は昔から欲しかったのもあるし……あなたたちは若いから、この先の事なんてまだまだ分からないけど、中途半端な気持ちで付き合ってるわけじゃないでしょ?穂香ちゃんには、その気があるなら、そう呼んでってお願いしたのよ」
「そうなの。ユウ君をビックリさせようとは思ってたけどね」
順調に外堀が埋め尽くされていく感じがするな。というか、もう埋まってるよな。
まぁ、俺も穂香を手放すつもりはないし、そこに関しては問題ない。
「なるほど、わかった。俺としても穂香と母さんが仲良い方がいいからな、むしろ歓迎する」
「さすが私の息子ね。よくわかってるじゃない。じゃあ、写真撮るから二人ともくっついて」
母さんがそう言うと、穂香が俺の右手に両腕を絡め、抱き着いてきた。
え?父さんに送る写真なのにこんなにくっつくのか?母親の目の前でこれは恥ずかしい。
「いいわね~穂香ちゃんはとってもいい表情よ。優希はちょっと硬いわね。いつも穂香ちゃんといる時はそんな顔じゃないでしょ?」
そんな事言われてもなぁ、俺はこういうの慣れてないんだ。とりあえず参考までに穂香の表情を見てみよう。
視線を向けると、それに合わせるように俺の方を向いてくれて、ニコっと微笑んでくれた。その笑顔につられて、俺も自然と表情が綻ぶ。
「よし、いいの撮れたわ。後で送っておくわね」
「あの……お義母さん。今の写真、私も欲しいです」
「もちろんいいわよ。今送るわね」
「えへへ……後で待ち受けにしよっと」
そんなことを呟きながら、穂香はキッチンへ戻っていった。
リビングに残されたのは俺と母さんだが、母さんは父さんへさっきの写真やメッセージを送っている。その作業がひと段落着いたところで、母さんに声をかけた。
「なぁ、母さん。お願いがあるんだが……穂香と、ここで一緒に住んでもいいか?」
OKだとしても、多分色々な条件を出されるだろう。だが、学校の成績は穂香のお陰で上々だ。衣食住に関しても穂香のお陰で問題ない。
あれ?俺って穂香がいなかったらダメ人間じゃないか?
「……いいわよ」
母さんの答えは予想を裏切ってあっさりしたものだった。
「え?」
「何か条件とか出されると思ったんでしょう?それに関しては、今、クリアしたからいいわよ」
どうなってるのか意味がわからない。OKなんだよな?
「母さん、どういうことだ?」
「実はね、穂香ちゃんからも話があったのよ。学校の成績は穂香ちゃんのおかげで良くなってるでしょ。食事や掃除は穂香ちゃんがいれば大丈夫、と言うよりいないとできない。あと、穂香ちゃんのおばあさんの件は、後で穂香ちゃんから聞きなさい。あとは、この話をあんたから私にしてきてくれたらいいかなって思ってたから」
どうやら、俺がいない間に話が進んでたらしい。それはそれでありがたいが、実際に知らないところで話が進んでるのは、体験すると結構怖いものがあるな。
「ただし、成績があまり落ちるようなら打ち切りよ。それと、これはあんた達見てたら大丈夫だと思うけど、仲良くしなさい。私も月一回は来れるようにするわ。スケジュールが合えば父さんも連れてくるし。あと、わかってると思うけど、避妊はしっかりしなさい」
「あ、ああ。もちろんわかってるよ」
これに関しては当たり前だよな。
「よろしい。じゃあ、そろそろご飯にしましょう」
そう言って母さんもキッチンへ行ってしまった。後にはポカンとした表情の俺が残されただけだ。
拍子抜けするほど簡単に事が運びすぎだが、これも俺がいない間に穂香が頑張ってくれたのかもしれないな。俺には勿体ないくらいの女神様だ。かと言って、誰にも渡すつもりはないがな。
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