魔法使いの少年と二人の女神様【R18】

龍 翠玉

文字の大きさ
上 下
19 / 26

19.菜摘とシャワー 1

しおりを挟む
「優希さん、大変なことが起こりました」

 放課後、俺の部屋に来るなりそう言うが、俺の目には塵ほども大変そうには見えない。
 二人並んでソファーに座り、菜摘用に冷蔵庫にストックしてあるいちごオレを渡すと、ストローでちゅーっと一口飲んだ。

「何があったんだ? その様子からすると全然大した事なさそうだが……」
「あ~まぁ、私にとっては大した事ないですが、優希さんにとっては大したことあるかもしれませんよ? とりあえず一つ目は、友達に彼氏がいることと、エッチしたのがバレました」

 一つ目ってことはもう一つ以上あるのか。

「バレた原因はやっぱりアレか?」

 怪我しているわけでもないのにあの歩き方はやっぱり不自然だからな。同じことを経験した女子ならわかるか。

「はい、彼氏が誰なのかは言っていませんから大丈夫ですよ。他のクラスの人だとは言いましたが……言った方が良かったですか?」
「いや、それをされたら俺の平穏な学校生活が終わりを告げる」
「む~私としては学校でもいちゃいちゃしたいのですが……」

 菜摘の言うこともわかるが、普段から目立たない普通の生徒である俺が、いきなり菜摘が彼氏になったなんてことが知られたら、それだけで大変なことになるだろう。

「穂香さんも一緒に三人でいちゃいちゃすればいいじゃないですか……もちろん学校で」
「ちょっと待て。そんな事したら、多分俺は刺されるぞ」

 三人で腕を組みながら校内を歩く姿を想像してみる――むむっ、悪くない。だが、そんなことをすれば俺は一躍有名人だな。色んな意味で。
 そして、二人のファンクラブ連中がどう動くかわからないから怖いな。

「今、ちょっと悪い顔していましたよ? 優希さんもしてみたいんじゃないですか……私はいつでも大歓迎です。あ、でも、エッチなことは、優希さん以外の男性に見られるのは絶対に嫌なのでダメですよ」

 おっと、妄想が表情に出てしまっていたようだ。
 まぁ、俺も菜摘や穂香のそういう姿を他人に見せるなんてことはしたくないからな。

「興味はあるが、その後に起こることを想像すると……難しいな。ほぼ全ての男子生徒を敵にまわすことになりそうだしな。エロい事に関しては同感だ。他の奴らに見せるなんてとんでもない。ところで、もう一つは?」
「もう一つはですね……お母さんにもバレました」
「え?」
「昨日、夕食に赤飯が出てきて……何かあったのか聞いたら、逆に聞かれました。一昨日に何も言われなかったので、バレていないと思ったのですが……お父さんは何の事かも知らないままです。ただ、お母さんが優希さんに会いたがっているので、近いうちに来てください」

 なるほど、娘のことはしっかり見ているんだな。会いに行くのはいいが、緊張するな。

「それは別にいいが……」
「大丈夫です。怒ったりしているわけではなくて、むしろ歓迎してくれていますし……それに、そのまま髪を切ってもらえばいいですから」
「は? どういうことだ?」
「私のお母さん、美容院やっているのですよ。なので、その髪……そろそろ切りませんか?」
「お、おう……そうだな……でもなぁ……」

 俺はどこにでもいそうな感じで目立たないような髪型を選んで、前髪も目が隠れるくらいには長めにしてある。

「いいじゃないですか、ぼっちでいるならそういう適当な感じでもいいですが、穂香さんみたいな美人と一緒に歩いたりするなら……そんなモブキャラみたいな髪だと逆に目立ちますよ?」

 ぼっちなわけではないが、適当な髪型なのは本当だし、確かに菜摘や穂香と一緒に並んで歩くなら整っていた方が自然だな。正論過ぎて何も反論できない。しかし、モブキャラと言われてしまうとは思わなかった。

「そうか、そうだな……わかったよ。ああ、そうか……それでか……」
「ん? 何かありましたか?」
「いや、お前、昨日髪切っただろ?」

 隣に座る菜摘の髪の毛を触りながら聞いてみる。少しくすぐったそうにしていたが、俺の言ったことに驚きの表情を見せた。

「よくわかりましたね? 数ミリくらいしか変わっていないはずなのですが……」
「先週も切ったんじゃないのか?」
「……正解です。そんな細かいところに気付いていたのは驚きですが、気付いていたなら言ってくれればよかったじゃないですか……そういう事に気付いてくれるのは嬉しいのですよ」
「そうなのか? まぁ、何となくだったからな……」

 菜摘と仲良くなってから、何か違和感があると思っていた時があった。普通ならそんな細かい単位でカットするために美容院なんて行かないだろうと思っていたが、親が美容院やっているなら納得だ。

「はい、次からは言ってくださいね。あ、もちろん、穂香さんにも言ってあげてくださいね。きっと喜びます」
「ああ、わかったよ」
「ところで、優希さんの髪を切りに行く日ですが、明日にしましょう。こういうのは早い方がいいですから」
「え?また、急だな……」
「はい、ホントは今日でも良かったのですが、今日は別の用事がありますからね……」

 ペロッと舌を出しながら微笑む菜摘が可愛くて、そのまま抱き寄せようとするが、珍しく腕を伸ばして拒否してきた。

「待ってください……今日は体育で結構汗をかいたので、先にシャワー浴びたいです」
「あ、そうか。じゃあ、菜摘が先に浴びるか?」
「何言っているのですか……時間が勿体ないので、一緒に浴びましょう。ついでに私が身体を洗ってあげますから」
「よし、わかった、任せろ」

 この菜摘の申し出を断る理由など何一つない。菜摘が洗ってくれるという事は、俺も洗ってあげてもいいだろう。そして、菜摘と一緒に風呂に入って、ただ一緒にシャワーを浴びて身体を洗うだけで終わるはずもない。

「じゃあ、菜摘は先に行っていてくれ」

 俺はそう言うと、寝室へゴムを取りに向かう。

「あ、ちゃんとわかっているじゃないですか……ふふっ、楽しみです」

 俺が寝室へ向かった目的を理解した菜摘の声が背中に聞こえた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

処理中です...