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8.三人でお掃除と寄り道

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 菜摘が掃除をしに来るという土曜日がやってきた。部屋の中は相変わらずの惨状だが、これに関してはもうどうしようもない。ありのままを見てもらうことにしよう。

 ピンポーン! と玄関のチャイムが鳴り、菜摘が来たことを知らせてきた。

「こんにちは、優希さん」
「こんにちは、私もお邪魔するね」

 玄関のドアを開けたら、そこには菜摘と穂香もいた。穂香には言ってなかったはずだが……菜摘が言ったのか。穂香はデニムパンツに白のTシャツと動きやすい恰好だ。髪もポニーテールにしていて、掃除するためにやってきたという感じがしないでもない。菜摘は白と赤のボーダーのシャツにホットパンツだ。普段より露出した白い太股が眩しい。

「なんで……」
「なんで穂香さんも一緒にいるかというと、私が呼んだからです。戦力は多い方がいいかと思いましたので……とりあえず、中を見せてくださ…………」
「……え?」

 穂香と菜摘が玄関から部屋の中を少し見ただけで固まった。開いた口が塞がらないというのを客観的に見るとこういうことなのだろう。二人とも、ポカンと口を開けて立ち尽くしている。なんか散らかっていてスマン。

「ちょっと! 何ですか、これは!? まさか本当にゴミ屋敷だったとは思いませんでした……」
「なっちゃんが言っていたことが本当だったなんて……これは私も想像以上だったなぁ……」
「……ちょっと急用を思い出したので、私は戦略的撤退を……」

 そう言って帰ろうとした菜摘の腕を穂香が掴んだ。

「ダメよ、なっちゃん。私の部屋の下がこの状態なのはちょっと我慢できないの。最後まで手伝ってね」
「くっ……穂香さんの為なら仕方ないです。とりあえず、私の優希さんに対する好感度が4ポイントほど下がりました」

 菜摘がジト目でこちらを見ながら言ってきた。その好感度は最大値と現在値はいくつなんだ?

「うっ、すまん……」
「まぁ、私もこれはびっくりしたかな……この状態からだとかなり頑張らないと終わらないから、さっさと始めましょ」

 そして、穂香が中心となって、俺の部屋の掃除が開始された。俺が私物の必要かどうかの判断とゴミ出し、穂香はキッチン周り、菜摘がリビングを掃除することになった。
 結論から言うと、穂香の指揮能力が凄まじく、みるみるうちに部屋が片付いていった。

「そう言えば、今気付いたけど、ここって私の部屋より間取り広い気がする」
「ああ、この階までは2LDKで上の階は1LDKって聞いたぞ」
「一人暮らしなのに、なんでそんなに広いところに住んでいるの?」
「契約したのは親だから俺には何も言えないが、たまには泊りに来るかもとか言っていたような気がする。半年間放置されているけどな」

 家賃も高くなるし、俺一人ならこんなに広くなくてもいいって言ったのだけどな。もしかしたら、散らかって物が置ききれなくなることを前提に、この広い部屋にしたとか? そうだとしたら母さんすげぇ。

「ふ~ん、ところで……予想はしていたけど、調理器具の類が全くないのだけれど……?」
「あぁ、そこの使っていない部屋にあることはある。春に母さんが揃えておいてくれたからな」

 そう言って隣の部屋から大きめの段ボールを持ってきた。半年間封印されたままだったが、ついに開ける日が来たようだ。

「あ、一通りあるのね……こんなにいい道具を半年以上眠らせておくなんてもったいないなぁ……」

 そうは言われても、使えないからな。出して埃被るくらいなら、きれいなまましまっておいた方がいいと思うのだが……まぁ、そんな事を穂香に言ったら怒られそうだけどな。

 穂香が喜々として調理器具をセッティングしている頃、リビングを掃除していた菜摘から呼ばれた。

「どうした?」
「この溜まりに溜まったゴミ袋を出してきてください」

 そう言う菜摘の横には分別されて積まれたゴミ袋の山があった。おおぅ、なんか申し訳ない気しかしない。

「おう、わかった」

 今日の俺は穂香と菜摘に使われるただの作業員だ。ここまでやってもらっている手前、何も言うことはできない。
 ゴミ捨て場と部屋を何往復かして粗方出し終えて部屋に戻ると、穂香が靴を履いて外に出ようとしていた。

「あ、ゆうくん。私、お昼作ってくるから、それまで掃除しててね。出来たらなっちゃんに連絡入れるから」
「お、マジでか? なんか色々すまん、ありがとう」
「ふふっ、いいの……ここが使えるようになったら、こっちでも料理できるようになるしね。楽しみにしててね」

 え? ってことは、そのうち穂香が俺の部屋に料理を作りに来てくれるってことか……ありがたい。
 穂香を見送ったあと、リビングに行くと菜摘の方もひと段落着いたようだった。

「あ、優希さん、掃除機はありませんか?」
「掃除機なら、寝室にあるぞ」

 言いながら寝室に向かうと、当然のように菜摘もついてきた。

「あら? へぇ……ここは一番マシですね……と言っても、ゴミゴミしていることに変わりはありませんが……」

 くっ、事実なだけに何も言い返せないのが辛い。基本的に寝るだけだから、他の部屋に比べたら相当マシなはずなのだが。

「ん~? このベッドって結構大きいですね~」
「ああ、セミダブルだからな。身体が大きくなってくるとこれくらいが丁度いいんだ」
「へぇ~そうなんですね……」

 菜摘は適当に相槌を打ちながら、ベッドの側で膝立ちになったと思ったら、そのままベッドの下を覗き込んだ。

「ん~、ん~~? う~ん……」
「おい、菜摘。どうしたんだ?」
「いや、男の人の部屋のベッドの下って定番の隠し場所って言うじゃないですか? 優希さんはどんなのを持っているのかなと思いまして……」

 あ、あれか。菜摘が探しているのはエロ本の類か。ふっ、残念ながらそんなものはない。今時紙媒体で持っている奴の方が少ないだろう。

「心配しなくても、そんなものは持っていないからいくら探しても出てこないぞ?」

 そこまで言って菜摘の姿を見ると、刺激的な光景が飛び込んできた。膝を床についてベッドの下を覗き込んでいるので、自然とお尻が突き出されている。菜摘はホットパンツをはいていることもあり、その可愛いプリプリとしたお尻が、菜摘が動くたびに合わせて動くのは刺激が強い。加えて、隙間からピンクの下着が見え隠れしていて、それが更に俺の股間を刺激してきた。

「む~、残念ですね……」

 本当に残念そうに菜摘が起き上がると同時に絶景も見えなくなり、俺も残念な気分になった。

「あっ! これは……」

 菜摘はベッドの脇に置いてあった小箱を手に取ると、興味深く箱の表や裏を見ていた。
 
「あっ、それは!」

 思わず言ってしまったが、菜摘が手に取ってしまっているので遅かった。

「これって……コンドームですよね? しかも何個か使用していますよね? 優希さん、あのゴミの山を潜り抜けて誰か連れ込んだのですか?」

 菜摘が口元をコンドームの箱で隠してニヤニヤしながら言ってきた。コンドームの箱っていうだけで、なんかエロいな。

「いや、連れ込むような相手もいないし、あの状態では誰も来ないだろ?」
「じゃあ、何で減っているのですか?」
「あ、ああ、それは……だな……」

 実際、俺は誰も連れ込んだりしていない。この部屋に入った異性は菜摘が最初なのだ。コンドームに関してはどんな感じなのか興味本位で買って装着してみただけだしな。

「まぁ、何というか……来るべき日のための練習だな。ただ、それは使えないんだ。サイズが合わなくてな……」

 実際試してみて、あまりにきつくて色々調べてみたら、俺はノーマルサイズではダメらしい。他の男と勃起した状態で見比べることもなかったから知らなかったが。

「え? これってサイズとかあるんですね……ゴムだから伸びて共通かと思ってました……で、優希さん、気になっていたのですが、何でそんな風になっているのですか?」

 菜摘は視線だけ俺の下半身に向けると、ちょっと顔を赤くして言った。俺も言われて下半身を見ると、見事にテントが張ってあるのが目に入った。先ほどの光景を見てビンビンになっていたのはわかっていたが、今日は掃除しやすいようにジャージを着ていたのを失念していた。生地の厚いデニムとかならまだしも、薄く余裕のあるジャージでは主張し放題だった。

「あ、い、いや……これは……その……」
「……先ほど、私のお尻でも見て興奮しましたか?」

 俺が言い淀んでいると、すぐに菜摘が答えを言い当ててきた。

「う……すまん! つい見てしまって……」

 こうなったら言い訳などしても無駄だ。正直に話した方が傷は少なくて済むだろう。

「……まぁ、いいです。無防備だった私も悪いですし、でも、それってすぐおさまりますか? もう少ししたら、穂香さんからご飯に呼ばれますけど、そのまま行くわけにはいきませんよね?」
「ああ、すぐには難しいな……」

 一度スイッチが入ってしまったから、萎えてもちょっとした刺激でまたビンビンになってしまうかもしれない。

「じゃあ、私が手伝いますから出しちゃってください」
「……は?」

 今のは聞き間違いだろうか? 菜摘が凄いことを言ってきたような気がした。
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