4 / 8
夢
しおりを挟む
夏休みに入ってから図書館と花火大会にしか行かなかった僕に木下から遊びの誘いが入った。
隣町にあるボウリング場にみんなで行かないか?と言う話だった。
僕はふたつ返事で了承した。
また、あの皆に会えるのだ。僕は楽しみでカレンダーにも丸をつけた。
夏休み中は母とは電話で何度か話した。
僕にも友達ができたんだ。そう言うと母は静かに泣いた。勉強ばかりを押し付けて悪かった。そう言って謝ってきた。
僕は、今なら何にでもなれるよ、そう言って母を慰めた。
その日、図書館に向かう途中、宮下に会った。
「学年トップが吹き溜まりまで落ちたか。」
そう言われて僕は傷ついた。それでもそれを表に出すことはしなかった。
宮下は僕が反応しないことで面白くないと言う顔をして去っていった。
僕は図書館に着くと参考になりそうな書籍を何冊か手にとってテーブルについた。
持ち込み学習お断りと紙が貼ってある。
何冊か本を広げて持ち込みの勉強をした。
3時間くらい勉強を続けていると木下が現れた。
「雅貴じゃないか?」
僕は木下に静かにするように言った。
お互いにこの図書館の利用率は高いがなかなか会わないなぁと言う話になった。
僕は一階の児童のテーブル席を利用しているが木下は社会人用のスペースを利用していると話した。
僕はこの頃、トントンと友達に恵まれたこと、勉強が捗っていること、父と母が僕に謝ってくれたこと。全てが嬉しかった。
学校に戻ればどうせまた一軍男子にけなされることだろう。それでも勉強をやめる気にはなれなかった。
宮下が憎い。
そんな感情も覚えた。
木下は児童書のコーナーで僕達より小さな子供達と紙芝居を読んだり絵本を読んだりしていた。その絵本の中から木下は月の王子さまを僕に差し出した。
「絵本と言うのは小説を書くより難しいと思うんだ。」
そう言って笑った。
「絵本作家にでもなるのかい?」
僕は面白半分にそう聞いた。
「何でわかるんだ?」
ビンゴだった。
僕は改めて木下を上から下までジロジロと眺めた。今日は上から下まで真っ白で、金のネックレスでもつけたらヤンキーにでも見える。そんな出で立ちだった。
「どうしてもこの境地に辿り着けないんだ。」
そう言って木下はうなだれた。
「月の王子さまは、難しいよ。いくつになってもわからないよ。」
僕は木下に寄り添うように話した。
昼になってふたりでコンビニに行った。
「おにぎりといえば鮭だな。」
「僕はツナマヨと昆布だなぁ。」
「騙されたと思って鮭にしてみろ。世界が変わるぞ。」
「世界は変わらなくて良いよ。」
そして僕達は近所の公園で、おにぎりを食べながら話した。今日の気温は何度あるのだろうか?早く食べて図書館に戻ろう、そう言って急いだ。僕はふっと思ったことを口にした。
「木下は最初に友達はいたの?」
「いなかったよ、1人も。と言うか赤子は1人だろう。」
そんなトンチンカンな答えが返ってきた。
「幼稚園の頃は1人だったかな…。」
そう言って木下は黙り込んだ。
僕は午後からも図書館で、勉強をして月の王子さまの絵本を借りて家に帰った。
隣町にあるボウリング場にみんなで行かないか?と言う話だった。
僕はふたつ返事で了承した。
また、あの皆に会えるのだ。僕は楽しみでカレンダーにも丸をつけた。
夏休み中は母とは電話で何度か話した。
僕にも友達ができたんだ。そう言うと母は静かに泣いた。勉強ばかりを押し付けて悪かった。そう言って謝ってきた。
僕は、今なら何にでもなれるよ、そう言って母を慰めた。
その日、図書館に向かう途中、宮下に会った。
「学年トップが吹き溜まりまで落ちたか。」
そう言われて僕は傷ついた。それでもそれを表に出すことはしなかった。
宮下は僕が反応しないことで面白くないと言う顔をして去っていった。
僕は図書館に着くと参考になりそうな書籍を何冊か手にとってテーブルについた。
持ち込み学習お断りと紙が貼ってある。
何冊か本を広げて持ち込みの勉強をした。
3時間くらい勉強を続けていると木下が現れた。
「雅貴じゃないか?」
僕は木下に静かにするように言った。
お互いにこの図書館の利用率は高いがなかなか会わないなぁと言う話になった。
僕は一階の児童のテーブル席を利用しているが木下は社会人用のスペースを利用していると話した。
僕はこの頃、トントンと友達に恵まれたこと、勉強が捗っていること、父と母が僕に謝ってくれたこと。全てが嬉しかった。
学校に戻ればどうせまた一軍男子にけなされることだろう。それでも勉強をやめる気にはなれなかった。
宮下が憎い。
そんな感情も覚えた。
木下は児童書のコーナーで僕達より小さな子供達と紙芝居を読んだり絵本を読んだりしていた。その絵本の中から木下は月の王子さまを僕に差し出した。
「絵本と言うのは小説を書くより難しいと思うんだ。」
そう言って笑った。
「絵本作家にでもなるのかい?」
僕は面白半分にそう聞いた。
「何でわかるんだ?」
ビンゴだった。
僕は改めて木下を上から下までジロジロと眺めた。今日は上から下まで真っ白で、金のネックレスでもつけたらヤンキーにでも見える。そんな出で立ちだった。
「どうしてもこの境地に辿り着けないんだ。」
そう言って木下はうなだれた。
「月の王子さまは、難しいよ。いくつになってもわからないよ。」
僕は木下に寄り添うように話した。
昼になってふたりでコンビニに行った。
「おにぎりといえば鮭だな。」
「僕はツナマヨと昆布だなぁ。」
「騙されたと思って鮭にしてみろ。世界が変わるぞ。」
「世界は変わらなくて良いよ。」
そして僕達は近所の公園で、おにぎりを食べながら話した。今日の気温は何度あるのだろうか?早く食べて図書館に戻ろう、そう言って急いだ。僕はふっと思ったことを口にした。
「木下は最初に友達はいたの?」
「いなかったよ、1人も。と言うか赤子は1人だろう。」
そんなトンチンカンな答えが返ってきた。
「幼稚園の頃は1人だったかな…。」
そう言って木下は黙り込んだ。
僕は午後からも図書館で、勉強をして月の王子さまの絵本を借りて家に帰った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
常夏の恋
夜色シアン
恋愛
蝉が五月蝿く鳴き続ける暑い日のこと。彼女は突然“あなた”の目の前に現れた。
「やっほ、久しぶり!」
思えばこの再開は彼女とあなたの“約束”を果たすため神が導いたものなのかもしれないーー
主人公は“読者”
体験型で紡がれる恋愛物語をとくとご覧あれ
※なお、Re:Memories of summerは主人公は読者ではなく透也というキャラとなってます。
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
ウェブ小説家見習いの第117回医師国家試験受験記録
輪島ライ
エッセイ・ノンフィクション
ウェブ小説家見習いの現役医学生が第117回医師国家試験に合格するまでの体験記です。
※このエッセイは「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。
※このエッセイの内容は一人の医師国家試験受験生の受験記録に過ぎません。今後国試を受験する医学生の参考になれば幸いですが実際に自分自身の勉強法に取り入れるかはよく考えて決めてください。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
抱きたい・・・急に意欲的になる旦那をベッドの上で指導していたのは親友だった!?裏切りには裏切りを
白崎アイド
大衆娯楽
旦那の抱き方がいまいち下手で困っていると、親友に打ち明けた。
「そのうちうまくなるよ」と、親友が親身に悩みを聞いてくれたことで、私の気持ちは軽くなった。
しかし、その後の裏切り行為に怒りがこみ上げてきた私は、裏切りで仕返しをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる