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祭り

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夏休みに入ると僕は図書館にこもるようになった。心無い中傷と味方がいない事が更に僕を勉強へと追いやった。
お昼ごはんを買いに図書館の近所のコンビニに訪れた。おにぎりをふたつ掴むと後ろに木下がいた。
「あー、多感な少年!!」
そう言って木下は笑った。僕は関わりたくない一心で木下を無視した。だが次の瞬間、無視したらあいつらと変わらないと思った。
「ここで何してるの?」
「買物だけど。」
木下は当たり前じゃんとでも言うかのように話した。僕は後悔した。
木下は全身緑の出で立ちで、仕事のお昼ごはんを買っていくであろう社会人の大人たちからクスクスと笑われていた。
「何で全身緑何だよ。」
僕は声を潜めて話した。
「戦隊ものの悪役みたいだろ。」
木下は堂々としている。
「ところで多感な少年。」
「駿河だ、駿河雅貴。」
「面倒なやつだな。」
お前に言われたくない、僕はそう思いながら木下と話した。
木下は来週ある花火大会に行く人を探していた。花火大会が済んだあとでまた花火をするのだ。僕はへーそうなんだと思いながら聞いていた。
「で、集合時間なんだが。」
そこまで聞いて僕は頭数に入れられていることに気づいた。
「何で僕まで入ってるんだよ。」
「友達には友達を紹介したい。」
あっさりと木下はそう言った。
「友達?」
「違うのか?」
違うなら違うでも良いかなぁ?などと木下はゴニョゴニョと話し始めた。
「多感な少年。」
「次からそう呼んだら返事しないからな。」
僕は少し強気に出た。
木下は目を輝かせて、
「じゃあ雅貴、集合時間には花火会場に来てくれよ。」
「番号交換しよう。そうしないと絶対見つからないから。」
僕はこの時に自分がウキウキしていることに気づいていた。
図書館に戻り、フリースペースでおにぎりを食べてお茶を飲んだ。
思えば小学校の頃から周りと遊ぶより勉強するように両親からは言われていた。
僕はそれに素直に従った。
しかし、ここまで来て僕は間違っているのかもしれない。そうも思った。
それでも学者である両親は自分の好きな研究をしながらイキイキと輝いていた。
木下は見た目はまるっきりアホだが勉強は出来るし頭の回転は早い。そして粘り強い。
僕は彼と知り合って彼のことを何も知らないんだなぁと思った。
僕は木下に興味を持った。
家に帰ると冷蔵庫にある夕ご飯を取り出してレンジをかけて1人食卓についた。
いくつからこうしていただろう。
両親は夕ご飯だけは作ってくれた。
「友達、か…。」
僕はそう言って母の作ったレバニラ炒めを食べた。
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