【完結】変わり身

九時せんり

文字の大きさ
上 下
15 / 16

分離

しおりを挟む
卒制と院生の試験勉強が大変になる中、俺は沢山の同級生に捕まっていた。
「沖田と神坂が結婚するって、本当ですか?」
「沖田と神坂、子供出来たってマジ?」
「沖田と…。」
「あーーー!!うるさーい!!」
俺の怒鳴り声で周囲は黙った。
「俺は沖田のアシスタントじゃないっつーの!!」
永崎も同様に周囲と揉めながらこちらに歩いてきた。
沖田はいつも通りキャンバスに向かっていた。
「沖田ー。神坂とはどうなんだよ?」
いつも自分の世界に入り込んでいる沖田がすぐさま振り向いた。
「実は…。」
沖田は語った。俺が神坂の相談を受けた翌日に告白されたこと。OKして付き合い始めたこと。婚約したこと。それから絵がスランプに陥ったこと…。
「画家は幸せになったら絵に何も籠もらなくなるのかな…?」
沖田は下を向いて肩を落とす。
「だったら、神坂を描いてみたら?」
沖田はむせた。
「そんな事…。」
「別にヌードとか言ってないぞ。」
「違っ…そういう意味じゃなくて。」
沖田はモジモジとしている。
「告白されてみてこんなに神坂さんって可愛い人だったんだなぁって気付いて恥ずかしくなったんだよ。」
俺と永崎は爆笑した。それでも卒制の事は不安だった。
「それでも神坂くらい綺麗だったら美人画になるぞ。」
俺と永崎は力強くうなづいた。
「神坂さんをずっと見るって…。」
「中学生か…?!」
俺と永崎は笑った。
思えば俺達は3人でいる必要はなかった。たまたま永崎と一緒だった俺とそこに沖田が合流したのだ。沖田は友達だ。その気持ちに変わりはない。それでも沖田は俺達と違う世界に進む人間なのだと思った。
もうこの辺で終わりにしよう。たぶん永崎も、そう思っていたのだろう。
「婚約おめでとう。これからは神坂を大事にな。」
「ああ、そうだな。神坂と仲良くな。」
俺達ふたりは出会うべくして沖田と出会ったのか、それとも人生でたまたまラッキーが当たったのか、それは分からない。
そして、この日を境に俺達は沖田と過ごす時間が減っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】盲目の騎士〜田沼奈々の記憶〜

九時せんり
現代文学
桜の精霊、田沼凛。その娘、田沼奈々が見てきた母の記憶と、自身がギャラリーアオヤナギの社長に就任するまでの話。

【完結】盲目の騎士〜過去〜

九時せんり
現代文学
病気が見つかり祖母の家で暮らし始めた青柳聖人。油絵を描くようになった彼に訪れた運命とは。

ゲス・イット

牧村燈
現代文学
うら若き未亡人VS下衆オヤジ!亡き夫との思い出の「ゲス・イット」で真剣勝負! 押しに弱い薄幸の未亡人・夏菜子を狙う夫の親類の魔の手。愛した夫との思い出のトランプゲーム「ゲス・イット」で、生前には知らなかった夫の無念を晴らすべく勝負に挑む夏菜子。勝負に負ければ下衆な伯父に身を委ねなければならないという不利な条件。超絶クールでちょっぴりセクシーなトランプギャンブル活劇をお楽しみください。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...