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本気
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「石松君はギリギリまで絵を描いたことがないよね。」
ある日の朝、沖田に告げられた。
「ギリギリってなんだ?」
「この作品が完成しないならいっそ無かったことにしたい、そんな境地かな?」
いつになく饒舌な沖田を前に俺は答えに窮した。
そして携帯のアラームが鳴って俺は目を覚ました。
大学に行くといつも通り沖田の作品を日向が品定めしている。
「おはよう、石松君。」
「おはよう、沖田。」
俺は肩を鳴らしながら沖田の作品を覗き込んだ。ピンクが多用された沖田らしくない作品だった。
「やっぱり沖田君は夕暮れ時なのね…。」
そう言って日向は金勘定をしていた。
「がめついなぁ…。」
珍しく永崎がいた。
「画商っていうのはね、画家が絵を描いてご飯を食べていくのに十分な金額を稼がないといけないの。無理難題を言って値引き交渉してくる人や転売目的の人を見分ける必要があるのよ。」
そう言って日向はイキイキしている。
沖田はゆっくり笑いながら、水と鮭おにぎりを開ける。
「あの、沖田君。」
神坂だ。
沖田は昨日受け取った弁当箱を洗って持ってきて今日の分と交換する。
「どうだった?」
「いつも通り美味しかったです。」
「今日の分はしらすが入っているから嫌だったら残して。」
「大事に食べます。美味しいですよね、しらす。」
そう言って沖田はニコニコする。
「それじゃあ、また後で。」
神坂はまるで中学生のようなピュアな少女なのだな、俺はそんなイメージを持った。
「どれどれ。」
日向が卵焼きを1つつまむ。沖田がそれに続いて卵焼きを食べる。
「美味しいぃぃぃ。」
日向が頬に手を当てる。
「良いお嫁さんね。」
沖田はやはり顔を真っ赤にした。
「神坂さんは素敵な女性です。」
そう言って沖田は筆を握った。
俺は今日の朝見た夢と現実が入り混じって、沖田と話がしたい。そう思った。
それでも言葉を持たない沖田の事だ。不思議な話になるに違いない。
1限目が始まるまで何度か弁当が届いた。沖田は全てを少しずつ食べて日向が横取りしていた。
ある日の朝、沖田に告げられた。
「ギリギリってなんだ?」
「この作品が完成しないならいっそ無かったことにしたい、そんな境地かな?」
いつになく饒舌な沖田を前に俺は答えに窮した。
そして携帯のアラームが鳴って俺は目を覚ました。
大学に行くといつも通り沖田の作品を日向が品定めしている。
「おはよう、石松君。」
「おはよう、沖田。」
俺は肩を鳴らしながら沖田の作品を覗き込んだ。ピンクが多用された沖田らしくない作品だった。
「やっぱり沖田君は夕暮れ時なのね…。」
そう言って日向は金勘定をしていた。
「がめついなぁ…。」
珍しく永崎がいた。
「画商っていうのはね、画家が絵を描いてご飯を食べていくのに十分な金額を稼がないといけないの。無理難題を言って値引き交渉してくる人や転売目的の人を見分ける必要があるのよ。」
そう言って日向はイキイキしている。
沖田はゆっくり笑いながら、水と鮭おにぎりを開ける。
「あの、沖田君。」
神坂だ。
沖田は昨日受け取った弁当箱を洗って持ってきて今日の分と交換する。
「どうだった?」
「いつも通り美味しかったです。」
「今日の分はしらすが入っているから嫌だったら残して。」
「大事に食べます。美味しいですよね、しらす。」
そう言って沖田はニコニコする。
「それじゃあ、また後で。」
神坂はまるで中学生のようなピュアな少女なのだな、俺はそんなイメージを持った。
「どれどれ。」
日向が卵焼きを1つつまむ。沖田がそれに続いて卵焼きを食べる。
「美味しいぃぃぃ。」
日向が頬に手を当てる。
「良いお嫁さんね。」
沖田はやはり顔を真っ赤にした。
「神坂さんは素敵な女性です。」
そう言って沖田は筆を握った。
俺は今日の朝見た夢と現実が入り混じって、沖田と話がしたい。そう思った。
それでも言葉を持たない沖田の事だ。不思議な話になるに違いない。
1限目が始まるまで何度か弁当が届いた。沖田は全てを少しずつ食べて日向が横取りしていた。
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