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出会い
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地元に帰省した俺は、既に就職していた友人たちにあった。
「石松は芸術家だもんな。」
その一言が俺には重い鎖のように感じられた。大学に合格して進学した頃とは言葉の響きが違って聞こえた。
両親は薄々気付いていたのか、
「無理しなくても良いんだからな。」
と、言ってくれた。
俺は親父とおふくろに沖田の話をした。天才はやっぱりいるんだと。
親父は遠縁の中に挿絵作家がいるという話をしてきた。
「お前は油絵に憧れがあって進学したが水彩画だったら随分と良いものを描く。それでどうか、うちの子があとを継げないかと話してきた。」
「俺に描けると思うか?親父。」
「じゃあお前に残るものは何だ?」
俺は言葉に詰まった。
沖田が楽しそうに絵を描いている姿がぼんやり浮かんだ。
俺も確かにあそこにいたんだ。そう思った。
「考えてみるよ。いつまでに答えを出せば良い?」
「卒業までには返事をくれと。」
「親父、ごめんな。ありがとうございます。」
そう言って俺は深々と親父に頭を下げた。
アパートに戻った俺は久しぶりにスケッチブックを出して鳥の絵を描いた。
何時間そうしていただろうか。
辺は暗くなっていた。いつものように沖田が帰ってきた。
俺は沖田が部屋に入る前に沖田を捕まえて話した。
「挿絵作家…?」
「俺に務まると思うか?」
俺は良いと言ってもらえる、そう思った。
「石松君には正確に鳥を描く事は難しいと思う。石松君の描く鳥は石松君の鳥だから。」
俺は力が抜けた。そうか、沖田にフィルターがあるように俺にもフィルターがあるのだ。
そう思って笑った。
「可能性がないわけではないと思う。でも、僕は石松君は筆を折る気がする。」
そこまで聞いて俺は十分だと思った。
「沖田、ありがとうな。」
「ごめん。背中を押してあげられなくて。」
俺は部屋に戻って鳥の絵を描き続けた。
「石松は芸術家だもんな。」
その一言が俺には重い鎖のように感じられた。大学に合格して進学した頃とは言葉の響きが違って聞こえた。
両親は薄々気付いていたのか、
「無理しなくても良いんだからな。」
と、言ってくれた。
俺は親父とおふくろに沖田の話をした。天才はやっぱりいるんだと。
親父は遠縁の中に挿絵作家がいるという話をしてきた。
「お前は油絵に憧れがあって進学したが水彩画だったら随分と良いものを描く。それでどうか、うちの子があとを継げないかと話してきた。」
「俺に描けると思うか?親父。」
「じゃあお前に残るものは何だ?」
俺は言葉に詰まった。
沖田が楽しそうに絵を描いている姿がぼんやり浮かんだ。
俺も確かにあそこにいたんだ。そう思った。
「考えてみるよ。いつまでに答えを出せば良い?」
「卒業までには返事をくれと。」
「親父、ごめんな。ありがとうございます。」
そう言って俺は深々と親父に頭を下げた。
アパートに戻った俺は久しぶりにスケッチブックを出して鳥の絵を描いた。
何時間そうしていただろうか。
辺は暗くなっていた。いつものように沖田が帰ってきた。
俺は沖田が部屋に入る前に沖田を捕まえて話した。
「挿絵作家…?」
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「石松君には正確に鳥を描く事は難しいと思う。石松君の描く鳥は石松君の鳥だから。」
俺は力が抜けた。そうか、沖田にフィルターがあるように俺にもフィルターがあるのだ。
そう思って笑った。
「可能性がないわけではないと思う。でも、僕は石松君は筆を折る気がする。」
そこまで聞いて俺は十分だと思った。
「沖田、ありがとうな。」
「ごめん。背中を押してあげられなくて。」
俺は部屋に戻って鳥の絵を描き続けた。
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