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大学2年になった。
沖田と共に過ごすようになって勉強の仕方や絵の描き方、全てに良い影響を受けた。
表現力とでも言うのだろうか、沖田といることは世界を広げることだった。
それでも沖田は少ない語彙から作品について持論を述べる。
沖田は細かな作品を描く割には好きな作品はピカソのゲルニカ等だった。
見るたびに違うテーマが浮かぶんだ、そう言ってやはり天才は違うという雰囲気を醸し出していた。
「沖田ー。そろそろ始めるわよ。」
日向がノートパソコンを持ってきて実家の美術商のページを開く。
そこには沖田宗純の作品がびっしりと表示されていた。
「これから沖田宗純の歴史が始まるのよ。」
そう言って日向はパソコンの画面を更新した。入札そのものは増えなかったが閲覧者数が上がり、Xやインスタグラムで、沖田宗純の話題が上がった。
そしてその日、日向は沖田の作画風景をアップすると言ってスマートフォンと三脚を用意してきた。
「何だか恥ずかしいな。」
そう言って沖田は笑った。
俺は面白くないなぁと思いながらもその様子を野次馬していた。
音は後から当てるからいつも通りで良いよーと言った日向の言葉通り、沖田はいつもの1ミリ単位の世界を披露していった。
そのままの方が面白いんじゃあ、と俺は思ったが大学の学生の声が入る。
「日向さぁ、沖田の作品いくらにしたんだ?」
「1番大きい作品で200万円よ。」
いつもチャキチャキしている日向が、この時はピリピリしていた。
「沖田のデビュー戦であると同時に私のデビュー戦でもあるのよ。」
日向は真剣な眼差しで沖田を見ていた。
沖田は絵を描き始めると完全に自身の世界に籠る。その目には何が見えるのだろう。
神様からのプレゼントだというその才能はどこからくるものなんだろう。
超えたい。この壁を超えたい。俺はいつになくそう思った。
一段落ついた沖田はスマートフォンに向かってピースした。
「上出来だわ。」
日向はスマートフォンを取り映像を編集し始めた。これが彼女の本当の姿であると同時に作品なんだろう、俺はそう思ってふたりを見ていた。沖田は変わらずニコニコしていた。
沖田と共に過ごすようになって勉強の仕方や絵の描き方、全てに良い影響を受けた。
表現力とでも言うのだろうか、沖田といることは世界を広げることだった。
それでも沖田は少ない語彙から作品について持論を述べる。
沖田は細かな作品を描く割には好きな作品はピカソのゲルニカ等だった。
見るたびに違うテーマが浮かぶんだ、そう言ってやはり天才は違うという雰囲気を醸し出していた。
「沖田ー。そろそろ始めるわよ。」
日向がノートパソコンを持ってきて実家の美術商のページを開く。
そこには沖田宗純の作品がびっしりと表示されていた。
「これから沖田宗純の歴史が始まるのよ。」
そう言って日向はパソコンの画面を更新した。入札そのものは増えなかったが閲覧者数が上がり、Xやインスタグラムで、沖田宗純の話題が上がった。
そしてその日、日向は沖田の作画風景をアップすると言ってスマートフォンと三脚を用意してきた。
「何だか恥ずかしいな。」
そう言って沖田は笑った。
俺は面白くないなぁと思いながらもその様子を野次馬していた。
音は後から当てるからいつも通りで良いよーと言った日向の言葉通り、沖田はいつもの1ミリ単位の世界を披露していった。
そのままの方が面白いんじゃあ、と俺は思ったが大学の学生の声が入る。
「日向さぁ、沖田の作品いくらにしたんだ?」
「1番大きい作品で200万円よ。」
いつもチャキチャキしている日向が、この時はピリピリしていた。
「沖田のデビュー戦であると同時に私のデビュー戦でもあるのよ。」
日向は真剣な眼差しで沖田を見ていた。
沖田は絵を描き始めると完全に自身の世界に籠る。その目には何が見えるのだろう。
神様からのプレゼントだというその才能はどこからくるものなんだろう。
超えたい。この壁を超えたい。俺はいつになくそう思った。
一段落ついた沖田はスマートフォンに向かってピースした。
「上出来だわ。」
日向はスマートフォンを取り映像を編集し始めた。これが彼女の本当の姿であると同時に作品なんだろう、俺はそう思ってふたりを見ていた。沖田は変わらずニコニコしていた。
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