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25人の妖精〜鏑木さんの事情〜

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君に早く会いたいなぁ、そんなことばかり言って羽純のお腹をさすっていたことを思い出す。
君が僕と会えるまであとほんの少しの時期だった。
会社までのイチョウ並木が美しく、銀杏で滑って転んだりした。
家に帰ると君とお母さんになる羽純が顔を出してくれた。たまに羽純とは喧嘩もしたけど、もうあとちょっとだね。そんな事を言ってあの日の朝は仕事に行った。

最初、君たちの話を聞いた時、何の話だろう?そう思った。だって朝はあんなに元気だったじゃないか。
「見ないほうが良いと思います。バラバラですから…。」
そう天界警察の刑事さんが言っていた。僕は現実を受け入れられなかった。
しばらくの間、どうやって生活していたのか今でも思い出せない。

仕事に行き帰っては酒を浴びるように飲んだ。僕のことを見るに見かねた上司が心療内科を紹介してくれた。

僕は久しぶりに君たちの話をした。元気だった頃の君たちを思い出しながら何度も何度も話をした。
その時、僕は君たちが死んで初めて泣いた。泣いて泣いていつまで泣くのかと思うくらい泣いた。
上司が休職扱いにしてくれて僕は更に泣いた。こんなに苦しいならいっそ死んでしまおうか、そうも思った。けれど君たちと会えないのは嫌だと思った。

そうしてある日、街角でポスターを見た。
天界警察の募集案内だった。
僕は走った。まだ自分にこんな体力が残っていたのかと思うほど走って願書を取りに行った。そして願書を持って泣きながら帰った。
ゴミだらけになった部屋をきれいに掃除して、願書を丁寧に丁寧に書いた。

そうして僕は天界警察に志願した。今までデスクワークだった僕はついていくのがやっとだった。それでもここから逃げたらもう君たちに会えない気がした。

「鏑木さん、見ませんでしたかー?」
「見てません。」
僕は天界警察の長官になった。元気な部下にも恵まれた。
「鏑木さーん、居たー!!」
「しまった!!見つかったか!!」
いつも元気で暮らしてるよ。心配しないで。いつか僕もそちらに行くから、もう少し待っててね。
「田所さん、いつもありがとうね。」
「どうかしたんですか?」
「いつもお弁当ありがとうね。」
「今日も食べたんですかー!!」
「ワーハッハッハッ。」
君たちに会えるのを楽しみにしているよ。
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