17 / 17
足谷
しおりを挟む
「お帰り本条。」
仕事復帰の朝一番に足谷にあいさつされた。
そういえば最近合コンの話をしなくなったなぁと思った。
「三田さんの件は…?」
「一昨日付けで自主退職してもらったよ。」
「私、しばらく病院探すんで残業はあんまり入れなくなるんですが。」
「大丈夫だ。任せとけ。」
「足谷先輩…。」
「田辺さんにも話は通してある。業務に支障の出ない範囲で頑張れよ。橋口とは連絡したのか?」
「まだです。まだ怖いんです。」
「確かに橋口と付き合い出して、本条は弱くなったな。」
「私、自分はもっと強い人間だと思ってたんです。でもそれって背水の陣だったからなんだってようやく気づいたんです。私、弱かったんです。」
「そういうの全部含めて橋口と話せばいい。橋口は若いけど芯の強い人間だ。」
「足谷先輩…。」
「俺が最初に出会った頃の本条は今みたいに弱かったな…。それが職場に揉まれるうちに皮肉を吐いて強がって頑張って。本条、お前はいい女だよ。まあ、セクハラかもな。」
「先輩…。」
「泣くなよ本条。泣いていいのは橋口の前だけだ。さぁ仕事しようぜ。」
その時、思った。
ああ、私はこの職場が好きなんだと。
「橋口君、私…。」
昼の休憩に入って橋口に電話した。
「本条先輩…なんで僕…っつ。」
「一緒に病院探すの手伝ってくれる?」
「本条先輩…。」
「強がりだけどそういう私が好きなんでしょう?」
「全部ですよ。」
「ふふっ。」
それから私たちは休みを合わせて取り病院をまわった。15件周った所で白髪頭の優しげな先生と出会った。
「赤ちゃんが欲しいんです。子宮摘出しないで筋腫をどうにかしたいんです。」
そう言って私は泣いた。
「大丈夫ですよ。産めますよ、赤ちゃん。」
「本当ですか?!」
橋口が乗り出した。
「他のお母さんよりも頻繁に診察に来ないといけませんが産めますよ。」
医師は私を見つめて穏やかに微笑んだ。
「元気な赤ちゃん産みましょうね。」
「橋口君。」
「良かったです。これで結婚出来ますね。」
「私やっぱり今の職場辞めたくない。それでいいなら私を選んで。」
「善子…。」
「私好きなの今の職場。」
「僕はそれでも良いですよ。善子が僕を選んでくれるなら。」
「結婚してね。」
「こちらこそ。」
それからの橋口は仕事で十分な成果を出して、実家の系列会社へと移った。父親とは喧嘩ばかりしているが業績は優秀らしい。
私は橋口が全てを父親に話してそれならばと橋口ファミリーに迎えられる事となった。
そしてもう少ししたら家族が増える。
私は病院のベッドから外を眺めた。
あなたと出会えると知っていたなら私はもっと言葉を紡いだことでしょう。
今日は橋口が面会に来る日だ。
私は静かにそれを心待ちにした。
仕事復帰の朝一番に足谷にあいさつされた。
そういえば最近合コンの話をしなくなったなぁと思った。
「三田さんの件は…?」
「一昨日付けで自主退職してもらったよ。」
「私、しばらく病院探すんで残業はあんまり入れなくなるんですが。」
「大丈夫だ。任せとけ。」
「足谷先輩…。」
「田辺さんにも話は通してある。業務に支障の出ない範囲で頑張れよ。橋口とは連絡したのか?」
「まだです。まだ怖いんです。」
「確かに橋口と付き合い出して、本条は弱くなったな。」
「私、自分はもっと強い人間だと思ってたんです。でもそれって背水の陣だったからなんだってようやく気づいたんです。私、弱かったんです。」
「そういうの全部含めて橋口と話せばいい。橋口は若いけど芯の強い人間だ。」
「足谷先輩…。」
「俺が最初に出会った頃の本条は今みたいに弱かったな…。それが職場に揉まれるうちに皮肉を吐いて強がって頑張って。本条、お前はいい女だよ。まあ、セクハラかもな。」
「先輩…。」
「泣くなよ本条。泣いていいのは橋口の前だけだ。さぁ仕事しようぜ。」
その時、思った。
ああ、私はこの職場が好きなんだと。
「橋口君、私…。」
昼の休憩に入って橋口に電話した。
「本条先輩…なんで僕…っつ。」
「一緒に病院探すの手伝ってくれる?」
「本条先輩…。」
「強がりだけどそういう私が好きなんでしょう?」
「全部ですよ。」
「ふふっ。」
それから私たちは休みを合わせて取り病院をまわった。15件周った所で白髪頭の優しげな先生と出会った。
「赤ちゃんが欲しいんです。子宮摘出しないで筋腫をどうにかしたいんです。」
そう言って私は泣いた。
「大丈夫ですよ。産めますよ、赤ちゃん。」
「本当ですか?!」
橋口が乗り出した。
「他のお母さんよりも頻繁に診察に来ないといけませんが産めますよ。」
医師は私を見つめて穏やかに微笑んだ。
「元気な赤ちゃん産みましょうね。」
「橋口君。」
「良かったです。これで結婚出来ますね。」
「私やっぱり今の職場辞めたくない。それでいいなら私を選んで。」
「善子…。」
「私好きなの今の職場。」
「僕はそれでも良いですよ。善子が僕を選んでくれるなら。」
「結婚してね。」
「こちらこそ。」
それからの橋口は仕事で十分な成果を出して、実家の系列会社へと移った。父親とは喧嘩ばかりしているが業績は優秀らしい。
私は橋口が全てを父親に話してそれならばと橋口ファミリーに迎えられる事となった。
そしてもう少ししたら家族が増える。
私は病院のベッドから外を眺めた。
あなたと出会えると知っていたなら私はもっと言葉を紡いだことでしょう。
今日は橋口が面会に来る日だ。
私は静かにそれを心待ちにした。
0
お気に入りに追加
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】君から出た嘘
九時せんり
現代文学
嘘を付くのが苦手な美少女杏奈と、バンドを組んだ俺たち。特別な才能も手がかりもないまま、俺たちはプロを目指し、ひたすら目の前のことに打ち込んでいくが思うような結果は出ず。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる