【完結】紡ぎ事〜第二章〜

九時せんり

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母親たちは強い

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「善子ー携帯鳴ってるよー。」
「会社からのしかでなくて良いから。」
「しばらくみんうちにあんた綺麗になったわね。」
「どこがよ?」
「スラッとしたっていうか。肌のキメが細かーなったわね。」
橋口がお酒よりスムージーにしましょう、そういった事を思い出した。
私はポロポロと涙をこぼした。
「仕事なんて山ほどあるのよ。無理ならやめとき。」
母は私が仕事の悩みで帰ってきたと思っていた。
ふっとスマホを見ると足谷から着信履歴があった。三田さんの件かなぁと思って折り返した。

「橋口君が本条と連絡取れないって会社まで来たんだよ。泣きわめいて今まであんな橋口君見たこと無いよ。」
「私、赤ちゃん産めないんです。橋口君の家は大企業です。そんなうちに欠陥のある私は入れません。」
「本条…。」
「橋口君ならまだまだ出会いはあります。私以外から選べば良いんです。」
「怒っていい?」
「足谷先輩…。」
「橋口は本条が担当で良かったって泣いて話してた。自分みたいな尖った人間を大事に扱ってくれたって。なぁ、本条戻ってこいよ。子供は確かに重要だ。それでもどこか良い病院見つかるよ。約束する。橋口君の所に戻ってくれ。」
「でも私…。」
「もう私、でも私は無しだ。本条がいいと思えば帰ってこい。橋口君は待ってる。」
「足谷…。」
「じゃあ切るぞ。」
私は携帯を片手にさらに泣いた。あの日、橋口君と中華に行かなければ良かった。
あの日、橋口君を選ばなければ良かった。
数限りなく思い出を打ち消しては私はこんな嫌な女なのか、そう思った。
それでも優しく抱きしめてくれて眠った夜を思い出した。
私は何の約束も出来ない。それでも橋口君を選んでいいのだろうか。ぐるぐると答えの出ない私の元に友人が遊びに来た。
私は3人に今の私の話を聞いてもらった。
「良いんだよ。子供産むのが女の仕事なわけないじゃーん。」
「それより彼氏見たいー。」
「善子、玉の輿じゃーん。」
「辛いだろうけど人生プラマイゼロだからなぁ…。」
私は3人に囲まれてさらに泣いた。
「うちの親戚に産科医いるから一度行ってみない?」
「難産になるだろうけど産めるよ。きっと。」
私は3人にお礼を言って申請した残りの有給を使い切った。
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